2024-07-12追記
【例題】福岡県に居住するAは、氏名不詳者の指示にしたがって、特殊詐欺の「受け子」として東京都内に行き、被害者Vからキャッシュカードを受け取ろうとしたところ、待機していた警視庁の警察官によって現行犯逮捕された(甲事件)。取調べの中で、Aは、直近に大阪府内(乙事件)と愛知県内(丙事件)でも同種の犯行に及んでいることが判明した。
[捜査権限の管轄区域:警察] . . . 本文を読む
【例題】被告人Aは、V女(当時10歳)に強いてわいせつな行為をしたとの公訴事実で訴追された。現在、Aは事件性を争っている。検察官は、次のものを証拠請求したいと考えている。
(1)Aが被疑者段階の際に捜査官から取調べを受けている様子を録音録画した媒体(DVD)。ここには、Aが「私(A)はVの性器をむりやり触りました」などと供述する様子が記録されている。
(2)Vが児童相談所職員と面談している様子 . . . 本文を読む
[証拠決定の基準]
・証拠調べの請求に対する証拠採否の基準は、[1]証拠調べ請求の手続上の適法性、[2]証拠能力の有無(要証事実が厳格な証明の対象である場合)、[3]証拠調べの必要性、の3点である。実務上重要なのは、証拠能力([2])と取調べの必要性([3])である。□石井106、プロ71
[証拠全般に対する「関連性なし(異議)」]
・証拠法の不文の準則として、証拠能力(証拠 . . . 本文を読む
2023-03-04追記。
2024-01-29追記。
【例題】Aは、平成30年7月1日に万引きの疑いで現行犯逮捕され、7月13日に起訴された。公判廷でAは自認し、検察官請求証拠のすべてが取り調べられて結審した。Aには、次の前科がある。
(case1)平成28年10月1日に確定した「懲役1年、執行猶予3年」の執行猶予判決がある場合。
(case2)平成25年10月1日に確定した「懲役1年、 . . . 本文を読む
【例題】Aがある被告事件で起訴された。検察官Pが「参考人Sによる検察官面前調書」の証拠取調べを請求したところ、弁護人Bが不同意の証拠意見を述べた。この原供述者Sは、上記調書の作成後に国外退去している。
[伝聞例外としての2号前段該当性]
・(被告人以外の)検察官面前調書に弁護人が刑訴法326条の同意を与えない場合、検察官は、当該原供述者の証人申請をするのが通常である。
・とこ . . . 本文を読む
[対象となる「特定犯罪」:刑訴法350条の2第2項]
(1)執行妨害関係(刑法96〜96条の6)、文書(有価証券)偽造関係(刑法155〜163条の5)、贈収賄関係(刑法197〜198条)、偽造公文書行使等(刑法158条)、詐欺・背任・恐喝・横領(刑法246〜250条、252〜254条)
(2)組織的な前記1の罪(組織的犯罪処罰法3条1〜4号、13〜14号)、犯罪収益等隠匿(組織的犯罪処罰法10 . . . 本文を読む
2023-03-17追記。
【例題】勾留中の被告人Aは、平成25年5月17日、第一審において「懲役1年、未決勾留日数20日算入」との判決を宣告された。Aは控訴しない考えである。
[自然確定と刑の始期]
・上訴の提起期間は14日である(刑訴法373条、414条→373条)。上訴の提起期間は判決の宣告を受けた時点から進行するところ(刑訴法358条)、日・月・年で計算する . . . 本文を読む
2023-02-21追記。統計を最新に改めるなどした。
刑法[抄]
(仮釈放)
第二十八条 懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
(仮釈放の取消し等)
第二十九条 次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。一 仮釈放中に更に罪を犯し、罰 . . . 本文を読む
【例題】日本に居住する外国籍Aは、この度、●●の罪で検挙された。
(ポイント1)在留資格はあるか? 在留資格は何か? →関連記事《日本人とフィリピン人の日本国内での婚姻・離婚》
(ポイント2)犯罪は特別法違反か? 一般の刑法犯(窃盗、傷害など)か?
(ポイント3)起訴猶予か? 訴追されて有罪刑が確定したか? 実刑か?
[起訴猶予の場合]
・特定の犯罪:不法就労活 . . . 本文を読む
[割れ窓理論とは]
・いわゆる「割れ窓理論」の元ネタは、フィリップ・ジンバルドーが1969年に発表した論文。高級住宅地と貧困地域に自動車を1週間放置した。貧困地域では車上狙いに遭うなどしたが、高級住宅地では何も起こらなかった。ついで、自動車の窓ガラスを一部割るなどして再び高級住宅地に放置したところ、パーツ盗みが頻発した。この実験から、「その場所が誰からもケアされていないと認知されると、逸脱行動を . . . 本文を読む
2023-03-05追記。
【例題】窃盗被告事件において被告人Aは犯人性を争っていたところ、出廷した公判期日において「懲役1年6月」との有罪判決を宣告された。
[身柄の扱い]
・勾留中の場合:実刑判決が宣告された後、勾留中の被告人は公判廷から勾留場所へ帰る。
・在宅の場合:在宅の被告人も判決確定までは刑の執行を受けない(刑訴法471条)。したがって、有罪判決を宣告された当日 . . . 本文を読む
新潮新書の新刊・廣末登『ヤクザになる理由』[2016]読了。勉強になる。筆者の特異な(?)経歴も必見。
[暴力団員になる社会的要因]
(1)機能不全家庭による社会化。単親家庭、擬似単親家庭、葛藤家庭、放置家庭、意思疎通上の機能不全。非行化の始点となる。
(2)教師が評価する「学校文化」における否定的評価。負のレッテルを貼られることで慣習的社会への不満を強くする。
(3)生徒 . . . 本文を読む
2023-10-13改題&全訂。
【例題】Vは、知人Aに殴打されて全治1か月の傷害を負った。
[捜査段階(1):告訴]
・告訴権者:[1]「犯罪により害を被った者」(刑訴法230条)。[2]被害者の法定代理人(刑訴法231条1項)。[3]被害者が死亡した場合の配偶者、直系親族、兄弟姉妹(刑訴法231条2項本文)。
・終局処分の結果は被害者へ通知される(刑訴法260条 . . . 本文を読む
2017-04-15追記。
[刑事責任能力の意義:混合的方法]
・刑法39条にいう「心神喪失」「心神耗弱」は、次のとおり決定される(大判昭和6年12月3日刑集10巻682頁)。
[1]生物学的要素:まずは、被疑者被告人が、何らかの精神疾患(精神障害)に罹患していたか否か。例として、統合失調症、躁うつ病など。
[2]心理学的要素:次に、その精神疾患により、事物の善悪を弁識する . . . 本文を読む
保釈請求のハードルといえば刑訴法89条4号(罪証隠滅)・同5号(お礼参り)が定番だが、例えば覚せい剤事案の場合、3号の「常習性要件」で却下されることがある。素朴に考えれば「再犯防止のために常習者の保釈を禁じた」とも言えそうだけど、その説明はNG(「再犯防止を目的として勾留状発付が許されない」との大前提と抵触)。そこで現在の裁判実務家・検察実務家は口を揃えて、その実質的根拠を「逃亡のおそれ」に求め、 . . . 本文を読む