【例題】Aが死亡した。Aには、妻Y、子C、子D、子Eがいる。Aの遺産分割をめぐり、CとDの間で係争状態が生じている。Eは遺産取得を望んでおらず、係争に巻き込まれたくないと考えている。
[実体法上の「相続分の譲渡」の意義]
・相続分とは、「積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分」をいう(最二判平成26年2月14日民集68巻2号113頁)。共同相続人間での譲渡に . . . 本文を読む
【例題】Aが死亡した。Aの親族には、妻X、AとXの間の子Y、Aと前妻との間の子Zがある。XがAの残した関係書類を整理していると、N生命保険会社の保険証券を見つけた。
[保険事故による生命保険の分類]
・死亡保険:被保険者の死亡(※)を保険事故として(保険法2条8号)、保険金受取人に死亡保険金を支払うもの。日常で「生命保険」と呼ぶものが該当する。主として遺族の生活保障のために利用 . . . 本文を読む
【例題】2023年9月1日、弁護士Bは、被相続人Aの相続財産清算人に選任された。
[根拠規定:実体法]
・「相続人の不存在」に関する実体法上の規定は、民法951条から959条まで。
・個別規定を欠くものとして、相続財産清算人の職務・権限・報酬については「不在者財産管理人の規定の一部」が準用され(民法953条)、相続財産清算人による弁済については「限定承認の規定の大半」が準用さ . . . 本文を読む
【例題】資産家Aが死亡した。Aには妻W、子C、子D、子Eがいるが、Dは長らく音信不通である。
[失踪宣告の要件]
・普通失踪の実質的要件は「不在者の生死が七年間明らかでないとき」である(民法30条1項)。不在者について何の消息もなく、生存の証明も死亡の証明も立たない状態を指す。□河上611
・認容の審判と対応させるため、申立書では「●年●月●日以来、7年(以上)生死が分からな . . . 本文を読む
【例題】高齢の資産家Xには、同居する妻Y、別世帯の長男C、別世帯の二男Dがいる。Xは、自分の遺産をYに確実に承継させるため、Yとの間で死因贈与契約を締結しようと考えている。
[双務契約としての死因贈与]
・死因贈与は「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与」と定義される(民法554条)。贈与であるため「諾成・不要式」の契約である(民法549条)。□潮見73
・なお、遺贈と対比し . . . 本文を読む
旧記事の再訂版。
【例題】Xが死亡した。Xには、配偶者Y、子Z、子Wがいる。YZWの間では、次の内容の遺産分割協議が成立した。各人の納付すべき相続税額はいくらになるか。
Yの取得した財産:預貯金2億円、有価証券0円、生命保険金2000万円、借入金▲1000万円、葬式費用▲500万円、
Zの取得した財産:預貯金0円、有価証券5000万円、生命保険金1000万円、借入金▲0万円、葬式費用▲0円
. . . 本文を読む
【例題】2018年5月1日にAが死亡した。その相続人の存否が不明なため、2018年10月1日、弁護士Lが相続財産管理人に選任された。亡Aの相続財産には土地甲と建物乙がある。
(1)Lが調査したところ、土地甲と建物乙はBに賃借されており、BからAに2018年1月分から2018年4月分の賃料が支払われていたことが判明した。
(2)Lが調査したところ、土地甲と建物乙にかかる2018年度分固定資産税が . . . 本文を読む
【例題】Xが遺言を残して死亡した。Xには、妻A、子B、子Cがいるほか、生前懇意にしていた知人Mがいる。
(1-1)遺言に「Aに自宅を相続させる」と記載されていた場合。
(1-2)遺言に「Aにすべての遺産を相続させる」と記載されていた場合。
(2-1)遺言に「Mに自宅を譲る」と記載されていた場合。
(2-2)遺言に「Mにすべての遺産を譲る」と記載されていた場合。
[「特定の . . . 本文を読む
2019-06-04;根拠条文(推測)を追記した。
【例題】亡Aの相続人不存在のため、弁護士Lがその相続財産管理人に選任された。亡Aの相続財産のうちには、売却困難な登録済み自動車甲がある。
[権限外行為許可の必要]
・相続財産管理人の権限は、(1)不在者財産管理人と同様の管理行為(民法953条→28条→103条)、(2)清算権限(民法957 . . . 本文を読む
【例題】GがSに対する金銭債権α(額面100万円)を有していたところ、Gが死亡した。現在、Gの相続人の一人X1が、Sに対しαの履行を求めている。ところが、他の相続人X2も、αが自己に帰属する旨を主張している。Sはどうすべきか。
[前提:金銭債権は当然分割されるか]
・現在の最高裁は、αが普通預金債権等である場合、相続開始によって当然分割されることなく、遺産分割の対象となる旨理解するに至っ . . . 本文を読む
2018-08-15追記、2020-04-17追記、2024-01-15追記。
【例題】Aが死亡した。Aには、妻X、子Y、子Z(未成年者)、祖母M、弟L、亡妹の子Sがいる。Aの遺産は消極財産が積極財産を上回っている。
[基本的な手続]※名古屋家裁における取扱いはこちら
(1)被相続人の死亡によって相続が開始する。
(2)申述
・相続放棄を望む相続人は、熟慮期間(3か月)内 . . . 本文を読む
2020-10-02:新記事へ。
引用頁は税務大学校『税大講本 相続税法(基礎編)平成28年度版』の該当箇所。
[1:各人の課税価格(実際取得額)]pp13-30
・財産を取得した人(相続人・受遺者)ごとに、次のプラスマイナスをおこなって「各人毎の課税価格」を出す。
[+]本来の相続財産(非課税財産に注意)※1
[+]みなし相続財産(非課税財産に注意)※2 . . . 本文を読む
2021-11-16全訂。
【例題】祖父A、父B、子Cがいる。Bが死亡し、Cはその相続放棄をした。その後にAが死亡したが、CはAの代襲相続人となるか。
・民法887条2項の文言からは、Kが代襲するための要件は「①Bが既に死亡している、②CはBの子である、③CはAの孫である」のみ。素朴にこの文理にしたがえば、かつて「Xの相続放棄をした」としても、新たな代襲相続は認められる(はず) . . . 本文を読む
推定相続人が欠格事由(民法891条)に該当する行為を行うと,当然に相続資格を失う。被相続人等を殺害した者,詐欺・脅迫によって自分に有利な遺言をさせた者などが列挙され,常識的にも首肯できる。ところが,同条1号を注意深く読むと,「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」とある。つまり,民法は,被相続人や他の推定相続人を . . . 本文を読む
民法には、失踪宣告による不在者の死亡擬制という制度がある(30~32条)。住所を離れてすぐ帰る見込みのない者(=不在者)が7年間にわたって生死不明のとき、家庭裁判所がその者の失踪を宣告すると、その不在者は死亡したものとみなされる。この制度については「短答式試験に出るかも」くらいの認識しかなかったが、最近、次のような質問をされたため、恥ずかしながら大慌てで調べた。〔質問〕:甲が死亡して、相続人はA・ . . . 本文を読む