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偏頗行為否認の実務

2024-06-26 19:45:02 | 債権管理・倒産・執行

【例題】個人事業を営んでいるSは、資金繰りに窮し、複数の貸金業者や親戚から借入れを行っているが、既に複数の債務について返済が滞っている。この度、Sは、債権者Gから頻回な督促を受けたため、Gに対して100万円を支払った。その後、Sは自己破産を申し立て、弁護士Bが破産管財人に就任した。

 

[要件(1):偏頗行為該当性]

・偏頗行為に該当しうるのは、「既存の債務についてされた債務の消滅」「既存の債務についてされた担保の供与」である(破産法162条1項柱書)。典型的には、弁済、抵当権設定などである。□一弁実務538

・「弁済原資目的の約定で第三者から新規融資を受けて、直ちに、当該資金を原資として既存債権者に弁済する」という場合がある。後者のみを見れば偏頗行為に該当しうるようにも思われるものの、全体を見れば「第三者が既存債権者から有償で債権譲渡を受けた」という利益状況と変わらないので、否認権の対象外だと解されている(最二判平成5年1月25日民集第47巻1号344頁参照)。□一弁実務538

 

[要件(2):危機時期]

・偏頗行為が否認権の対象となるのは、「破産者が支払不能になった後」「破産手続開始の申立てがあった後」になされた行為である(破産法162条1項1号)。□一弁実務541

・「支払停止」があれば、支払不能であったことが推定される(破産法162条3項)(※)。典型的には、受任通知発送後の弁済は、偏頗行為否認の対象となりうる。□手引44-5

※なお、「支払停止」から「申立て」までの間に1年超を要した場合、この推定は働かない(破産法162条3項)。この点に関連して、申立てより1年以上前の偏頗行為を否認する場合は、「受益者による支払不能(×支払停止)の認識」を要する(破産法166条)。□一弁541、手引227-8

 

[要件(3):受益者の悪意]

・偏頗行為否認が求められるためには、当時の受益者(債権者)が「支払不能or支払停止を知っていた」「申立てがあったことを知っていた」ことを要する(破産法162条1項1号イロ)。□一弁実務

・受益者がインサイダーの場合(破産法人の役員等、破産法人の支払株主、破産自然人の親族や同居者)、悪意は推定される(破産法162条2項1号)。

 

[非義務偏頗行為の要件緩和]

・期限前弁済や、義務なく追加担保を提供することは、否認権行使の要件が緩和されている。

[1]危機時期が前倒しされて、「支払不能になる30日前以降+受益者が他の債権者を害することの悪意」の行為も捕捉される(破産法162条1項2号)。□一弁実務542

[2]インサイダー以外の者にも、支払不能等の悪意が推定される(破産法162条2項2号)。□一弁実務541-2

 

[偏頗行為否認の効果]

・債務消滅行為が否認の対象となる。否認権が行使されると破産財団を原状に復させるので(破産法167条1項)、受益者に移転した金額相当の金銭支払請求権が発生する。破産管財人は、受益者に対して「元本+金銭受領日を起算日とする遅延損害金」の支払を請求できる。□一弁実務559-60

・受益者が「破産者から受けた給付」を破産財団に返還した場合は、原債権は破産債権として復活する(破産法169条)。□一弁実務564

 

[行使の実際]

・通常は、厳密な意味での「否認権行使」に先立ち、破産管財人から受益者に対して連絡し、否認対象行為を指摘して受益の返還を請求する。□手引228

・否認の請求:

・否認の訴え:

 

[破産者の責任]

・免責との関係:「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法時期が債務者の義務に属しないものをした」ことは、免責不許可事由となる(破産法252条1項3号)。□全倒ネット103

・刑罰との関係:「破産手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法時期が債務者の義務に属しないものをする」ことは、破産犯罪になる(破産法266条)。□全倒ネット103

・賠償責任の有無

 

[代理人の責任]

・破産者による偏頗弁済につき、申立代理人が賠償責任を負う余地がある。□全倒ネット106-7

 

中山孝雄・金澤秀樹編『破産管財の手引〔第2版〕』[2015]

全国倒産処理弁護士ネットワーク編『破産申立代理人の地位と責任』[2017]

第一東京弁護士会総合法律研究所倒産法研究部会編『破産管財の実務〔第3版〕』[2019]

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