民事裁判における人証の採否

2024-09-04 20:16:59 | 民事証拠法
【例題】甲地方裁判所には、XのYに対する損害賠償請求訴訟が係属している。XがAの証人尋問を申出をしたところ、Yはこれに反対をした。   [人証申出] ・弁論主義の元では、当事者は、争いのある事実を証明するために、証拠の申出をする必要がある。□コンメ(4)74 ・証拠申出には、取り調べてほしい証拠方法を特定した上で、「証明すべき事実(立証趣旨、立証事項)」「立証趣旨と証拠の関係」を . . . 本文を読む
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法令用語としての「押印」とその周辺

2024-06-12 21:55:44 | 民事証拠法
[押印=捺印] ・現在の法制実務では、文書の作成者が印を押すことを「押印」と呼ぶ。口語体以前の法令は「捺印」と呼んでいた。つまり、巷に溢れる俗説にかかわらず、法文上は「押印=捺印」である。□辞典26-7、有斐閣用語78、有斐閣小辞典62 ・e-Govの全文検索で各用語の登場数を調べると、次のとおりヒットする(2024年6月12日時点)。 「押印」・・・436件 民法第520条の10:指図証 . . . 本文を読む
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「弁論の全趣旨」による事実認定

2023-07-10 19:36:37 | 民事証拠法
【例題】Xは、Yに対する貸金返還請求を提起した。 (case1)Xが提出した借用書にはYの署名押印があるが、Yはこれを「知らない」とのみ陳述している。 (case2)Yは、当初は「金銭を受け取っていない」と主張していたが、途中から「金銭は受け取ったが贈与だった」と主張を変えた。 (case3)Yは、第一審で敗訴した後、控訴審になって初めて「領収書」を提出した。 (case4)YからX名義口 . . . 本文を読む
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契約書の成立と契約の成立

2023-06-28 23:39:41 | 民事証拠法
【例題】Xは、Yに対し、100万円の貸金返還訴訟を提起した。金銭消費貸借契約書と題する文書が存在し、貸主をX、借主をYとする記名押印がある。 (case1)Yは「この印影は自分の印章によるものではない」と主張している。 (case2)Yは「Xの自宅で白紙に押印をしたことはあるが、金銭消費貸借契約書に押印したことはない」と主張している。 (case3)Yは「Xから『100万円を貸し借りした形に . . . 本文を読む
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印鑑等の証明

2023-06-09 22:10:37 | 民事証拠法
【例題】 (case1)Aが死亡し、その相続人X、Y、Zは、遺産分割協議書を作成しようとしている。 (case2)P社(代表者W)は、所有する普通自動車甲を廃車しようとしている。 (case3)弁護士Lは、破産管財人として管財物件である不動産を売却しようとしている。   [個人:市町村長による印鑑証明] ・各市町村はいわゆる印鑑条例(岡崎市の例)を定めており、同条例に基づいて . . . 本文を読む
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民事訴訟の本証と反証

2023-01-25 00:51:15 | 民事証拠法
【例題】Xは、Yに対する100万円の貸金返還請求訴訟を提起した。Yは、金銭の交付を否認するほか、贈与だとも主張している。   [立証責任を負う者の「本証」] ・通説である「修正された法律要件分類説」は、実体法規の規定ぶりを第一としつつ、証拠との距離・立証の難易・事実の存否の蓋然性といったファクターも加味して主要事実の立証責任の分配を決める(この一つが司法研修所説=要件事実論)。□瀬 . . . 本文を読む
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民事実務証拠法:書証編

2022-01-12 23:56:04 | 民事証拠法
[書証の生理プロセス] ・(step1)期日前での「文書の写し」の提出(民訴規則137条1項本文):これは「文書の写しの事前提出(=書証の準備行為)」にすぎず、仮に「文書の原本」を郵送しても書証申出とはならない。特に、次回期日に相手方の欠席が予想される場合は、民訴法161条3項の要件を満たすために事前提出(送達)を完了しておくことが非常に重要(→《原告欠席の実務》)。□講義案127-8 . . . 本文を読む
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民事訴訟と刑事訴訟における「文書の写し」

2019-12-02 23:31:44 | 民事証拠法
【例題】「領収証 甲野太郎様 金10万円 ただし慰謝料として 上記正に領収しました。平成28年9月28日 乙川次郎(印)」と題する文書が訴訟に提出されようとしている。   [<民事訴訟編>書証申出と「写し」の意義] ・文書を提出する方法によって書証の申出をする当事者は、当該申出をする時までに、裁判所と相手方のそれぞれに「証拠説明書1通+その文書の写し1通」を提出(直送)する(民訴規 . . . 本文を読む
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認印

2008-09-17 02:59:55 | 民事証拠法
民訴法でおなじみのものに、文書の(形式的)証拠力に関する二段の推定という話がある。「Aさんは・・・という内容の考えを持っている」という事実を証明するために、〔・・・・ A〕 と書かれた文書を用いるとしよう。この場合、文書の内容の価値(証拠価値・実質的証拠力)を云々する前に、その文書が、名義人Aさんの意思に基づいて作成されたものだと認められなければならない。 この立証は厳密に考えるとなかなか困難で . . . 本文を読む
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