日本国憲法の「三大原理」の出自

2024-04-24 18:17:31 | 国制・現代政治学
【例題】2005年の参議院憲法調査会「日本国憲法に関する調査報告書」では、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を三大基本原則とした上で、この原則は「戦後半世紀以上の年月を経て、我が国に定着しており、これを今後も維持すべきであるとするのが本憲法調査会における共通の認識となっている」とする。以上につき、(比較憲法史的視点ではなく)日本憲法史的視点に立った見方であるとの評価がある(大石眞『日本憲 . . . 本文を読む
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日本国憲法施行以前の立法権小史

2024-03-01 22:55:55 | 国制・現代政治学
[その1:太政官制度] ・1868年6月11日(天保暦=慶応4年閏4月21日)(※)、副島種臣の起草した「政体書(政体)」に基づき、新しい官制が発足した(第一期太政官制)。この「政体書」は初の憲法的文書であり、公議思想と権力分立思想が現れている。翌1869年(明治2年)7月8日には、官制が一新された(第二期太政官制)。□伊藤孝105,107-8、大石憲法史48-50 ※当時は太陰太陽暦の一つで . . . 本文を読む
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国民主権の多義性

2022-07-18 16:57:31 | 国制・現代政治学
[「主権」概念と日本国憲法] ・ジャン・ボダン(1529/30-96)は、「主権(souverainete)=国家の絶対的かつ恒久的な権力」を定義した。国家に帰属する主権を行使する君主は、国内ではあらゆる勢力に超越しており、対外的にはローマ教皇などから自由であって干渉を受けない。主権の外延の第一は立法権であり、ほかには外交権・人事権・最終裁判権・恩赦権・貨幣鋳造権・度量衡統一権・課税権などであっ . . . 本文を読む
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日本国憲法の制定過程

2022-05-03 23:40:18 | 国制・現代政治学
本文全体につき、国立国会図書館(高見勝利監修)「日本国憲法の誕生」を参照。→関連記事《占領体制下の国制》   [1945年10月:前期ー内大臣府による改憲作業と内閣の追随] ・10月4日夕方、東久邇宮稔彦内閣の無任所大臣(副総理格)であった近衛文麿は、連合国軍最高司令官総司令部(General Headquarters, the Supreme Commander for . . . 本文を読む
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日米軍事同盟の実情

2022-03-16 01:31:54 | 国制・現代政治学
[安保と再軍備小史(1)] 陸自:(総理府)警察予備隊→(保安庁)保安隊→(防衛庁・防衛省)陸上自衛隊 海自:(海上保安庁)海上警備隊→(保安庁)警備隊→(防衛庁・防衛省)海上自衛隊 空自:(防衛庁・防衛省)航空自衛隊 ・1948年5月、海上保安体制強化のために海上保安庁が設置された。再軍備を警戒するGHQは厳しい制約を課し、海上保安庁法25条として . . . 本文を読む
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現代国際法の「戦争」と「武力行使」

2022-03-06 20:49:29 | 国制・現代政治学
ウクライナへの違法な武力行使が止むことを祈る。   [第二次世界大戦前の「戦争」] ・かつての国際法では「戦争(war)/戦争に至らない武力行使(use of force short of war)」が概念上区別されていた。学説の多くは、宣戦布告に代表される「戦争意思」の有無で両者を区別していた。□和仁264-8、大沼532 [具体例1]第一次大戦における中独関係は、武力行使を伴 . . . 本文を読む
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占領体制下の国制

2020-03-20 10:31:55 | 国制・現代政治学
[敗戦と降伏の憲法史的意味] ・日本政府は、1945(昭和20)年8月14日にポツダム宣言を受諾し、9月2日に降伏文書(Instrument of Surrender)に調印した。→《ポツダム宣言の受諾》 〔降伏文書〕 下名は(We)ここに、日本帝国大本営並びに何れの位置にあるを問わず一切の日本国軍隊及び日本国の支配下にある一切の軍隊の連合国に対する無条件降伏を布告す。 下名はこ . . . 本文を読む
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中央省庁における「委員会」と「庁」

2019-08-18 16:28:09 | 国制・現代政治学
2022-6-6追記。   [府省の外局(1):委員会] ・内閣府と各省には、外局として「委員会(行政委員会)」と「庁」を置くことができる(内閣法設置法49条1項、国家行政組織法3条3項)。 ・委員会の定義規定は存在しないものの、歴史的経緯からは次の要素が抽出できる。□塩野73-4 [1]3条機関の一つ。省と同様に国家意思を決定して外部に表示する機関である。 [2]内閣からの . . . 本文を読む
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内閣とその周辺

2019-08-15 13:34:02 | 国制・現代政治学
2022-6-6追記:大石眞『憲法講義1〔第3版〕』[2014]を最新の『概論1』に差し替えた。四人組を追加した。   [内閣の歴史的意義] ・内閣とは、国務大臣が国務を議するために組織する合議制の機関をいう。イギリス憲政史において、1660年代に国王顧問官達の内部集団として現れ、ジョージ3世が即位する1760年までには、国王に対する内閣の組織としての独立性が確立した。□大石290 . . . 本文を読む
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君主・元首・天皇

2019-05-01 09:42:36 | 国制・現代政治学
2024-04-14追記   [君主の意義] ・アリストテレスは、国家の統治形態を「君主制/貴族制/民主制」と三分した。マキャベリ以降は、「君主制(monarchy)/共和制(republic)」と二分するのが通常である。□清宮140、大石立憲22 ・もともと、「君主制/共和制」の区分は、国家主権のあり方に関わる組織原理類型を意味していた。しかし、大臣責任制の進展に伴って君主の実 . . . 本文を読む
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法令における「政府」の意義

2019-04-01 20:09:41 | 国制・現代政治学
2020-02-26追記。   [多義的な「政府」] ・e-Govで「政府」との用語を含む法令を検索すると2131件もヒットする(2020-02-26時点)。この現状からは、渋谷論じ方6「現在、法令用語として、「政府」はほとんど使われていない…」との記述はよくわからない。 ・法令上の「政府」なるタームは3通りの用法が存在するため、法令の趣旨や文脈からその意味を確認す . . . 本文を読む
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憲法と憲法典

2017-10-22 20:55:35 | 国制・現代政治学
2017-10-26追記:小嶋和司「憲法と憲法典について」『憲法学講話』[1982]に触れて動揺しているが、以下では反映できていない。 2024-04-02追記:ついに『憲法学講話』をODで入手した。   [国家の根本法=実質的意味の憲法] ・われわれは、ある個人(機関organ)の行為を国家の行為だと解釈する。この解釈の拠り所となるようなルール(国家の根本秩序の規律)を「実質的 . . . 本文を読む
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衆議院の解散

2017-09-18 13:03:42 | 国制・現代政治学
2017-09-30追記;9月28日の解散を受けて。 2020-06-22追記。 2023-01-09追記。 日本国憲法 7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。3号;衆議院を解散すること。 69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。 &nbs . . . 本文を読む
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デモクラシーと集約ルール

2017-07-03 19:21:14 | 国制・現代政治学
2015-09-26記事(2015-11-07追記、2015-11-13再改題追記)を改訂。   [古代のデモクラシー:市民による直接民主主義]■久米ほかpp361-4〔川出〕、待鳥pp17-21、川崎杉田編pp137-43〔杉田〕 ○民主政は、古代ギリシャのアテナイで初めて本格的に実施された。(1)市民権を持つ成人男子全員が政治参加の権利を平等に持つ。(2)平時月に4回開催される . . . 本文を読む
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国会議員はその発言に法的責任を負うか

2017-05-24 05:20:17 | 国制・現代政治学
有名医師T氏が、衆議院議員O氏(民進党)による厚生労働委員会での発言によって名誉(医院の?)を毀損されたとして、O議員やその所属政党(民進党)代表に対して損害賠償請求訴訟を提起したそうだ。   [発言免責特権] この手の話題では、直ちに発言免責特権の適否が想起されよう。この特権の歴史は古く、すでに1689年の権利章典Bill of Rightsが「国会における言論の自由(の行使)並 . . . 本文を読む
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