弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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長時間労働を抑制するための立法論として,どのようなものが考えられますか。

2014-07-13 | 日記

長時間労働を抑制するための立法論として,どのようなものが考えられますか。

 平成22年4月1日施行の改正労基法では,一定時間以上の法定時間外労働に対する残業代 (割増賃金)の割増率を上げることで使用者の負担を大きくし,長時間労働の抑制を図ろうとしているようですが,割増率を上げたのでは労働者が残業するモチベーションを高めることになってしまいますから,長時間労働の抑制にはならないのではないでしょうか。所定労働時間に働いて稼ぐよりも,残業で稼いだ方が,効率がいいことになってしまいます。
 他方,使用者は,残業代支払の負担が増えた場合,賞与額をその分減額したり,基本給・手当の額・昇給幅を抑制する賃金体系を採用したりして,トータルの人件費が増えないよう工夫することでしょう。その結果,残業しないと生活できない労働者が増大することになりかねません。
 長時間労働による過労死等を防止しようとするのであれば,退社時刻から一定の休息時間を経過してからでないと翌日は仕事させてはならないといったような形で,休息時間の確保を義務づけるようにしなければいけないと思います。


ダラダラ残業の一番の問題点は何だと思いますか。

2014-07-13 | 日記

ダラダラ残業の一番の問題点は何だと思いますか。

 ダラダラ残業については,残業代 (割増賃金)請求の場面で問題となることが多いことから,残業代(割増賃金)請求の問題を中心にコメントしてきましたが,個人的には,残業代(割増賃金)の問題よりも,長時間労働による過労死等の問題の方が重要な問題と考えています。残業代(割増賃金)は所詮,お金の問題に過ぎませんが,過労死等はお金では取り返しがつかない問題です。くれぐれも,社員の健康を損ねないよう,十分な配慮をするようにして下さい。
 長時間,元気に働いている経営者の方々もたくさんいらっしゃることと思いますが,自分ができることだからといって,他の人もできると考えるべきではありません。精神的に弱い方,体力のない方も多く,元気な方と同じように働いたのでは,鬱病になったり,身体を壊したりしてしまいます。本人の同意があったとしても,月80時間を超えるような時間外労働を恒常的にさせるのはお勧めできません。


残業時間が長いのは仕事熱心だからだとは思いませんか。

2014-07-13 | 日記

残業時間が長いのは仕事熱心だからだとは思いませんか。

 優秀な社員には重要な仕事が集中する傾向にありますから,トップクラスの成果を上げている優秀な社員の残業時間が長い場合には,仕事熱心だから残業時間が長くなっていると評価できるのかもしれません。優秀な社員には多くの重要な仕事を任せたいという要請がある一方,長時間残業を放置するわけにも行きませんから,優秀な社員をサポートする部下を増やすなどして,本人の負担軽減に努めて下さい。
 他方,残業時間ばかりが長くて勤務成績がいつまでたっても良くならない社員が,仕事熱心だと考えることはできません。本当の意味で仕事熱心な社員であれば,成果をあげるようになるのは時間の問題のはずです。


終業時刻を過ぎても退社しないままダラダラと会社に残っている社員がいる

2014-07-13 | 日記

終業時刻を過ぎても退社しないままダラダラと会社に残っている社員がいる場合,会社としてはどのような対応をすべきですか?

 残業するように指示していないのに,社員が終業時刻を過ぎても退社しないまま会社に残っているのが常態となっていて,それを上司が知っていながら放置していた場合に,当該社員から,黙示の残業命令があり,使用者の指揮命令下に置かれていたなどと退職後に主張されて,終業時刻後の在社時間について残業代 (割増賃金)の請求を受けることがあります。使用者としては,その時に帰りたいと言ってくれればすぐに退社させていた,今になって残業代の請求をしてくるのは不当だ,などと言いたくもなるかもしれませんが,残業してまでやらなくてもいいような仕事(所定労働時間内でやれば足りるような仕事)であったとしても,現実に仕事らしきものをダラダラとしていたような事案で労働時間性を否定するのは,なかなか難しいものがあり,生産性の低い在社時間が労働時間と評価されて残業代の請求が認められることも珍しくありません。
 また,在社時間が長い社員から,うつ病になったのは長時間労働のせいだなどと主張され,損害賠償請求を受けることも珍しくありません。使用者としては,終業時刻後も不必要に会社に残っている社員に対しては,速やかに仕事を切り上げて帰るよう指示すべきでしょう。
 仕事を切り上げて帰るよう指示しても帰ろうとしない社員に対しては,単に口頭で帰るよう伝えただけでは足りず,現実に仕事を止めさせ,会社建物(仕事をする部屋)の外に出すのが望ましい対応です。口では仕事を切り上げて帰れと言っていたとしても,会社(特に,仕事をする部屋)に残っているのを知りつつ放置していたのでは,無用のリスクが残ることになってしまいます。懇親等の目的で,仕事が終わった後も社内に残っているのを容認する場合は,最低限,タイムカードの打刻をさせるなどして,労働時間が終了していることを明確にしておく必要があります。
 ただ,訴訟になると,「労働時間の終了前にタイムカードに打刻するよう強要されて(上司が勝手にタイムカードを押して),残業させられた。」などといった主張をする社員もいますので,やはり,仕事と関係のないことは,仕事をする部屋の外(できるだけ会社建物の外)で行わせるようにするのが望ましいところです。