ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

ルネ・クレール・8〜『幕間』

2017年11月06日 | サイレント映画(外国)
ルネ・クレール、第2作目の『幕間』(1924年)について。

飛び跳ねてきた二人“山高帽のエリック・サティ”と“フランシス・ピカビア”が大砲を撃つ。
テラスで“マルセル・デュシャン”と“マン・レイ”がチェスをしている。
スカートの下から見るダンサーの踊る足。
らくだが引いていた霊柩車の暴走。それを必死に追う人たち・・・

ざっと言うと、いろいろこのような映像が次々と出てきて、実際は、ストーリーもシナリオもないアバンギャルドな作品。
が、あれよあれよと一気に見てしまう20分間である。
そして、先に名を挙げたダダイズムの面々が映っている貴重な記録映像でもある。


マルセル・デュシャン(左)とマン・レイ

この映画は、当時、エリック・サティがスウェーデン・バレエ団のために作曲した『本日休演』の第1幕と第2幕の幕あいに上映するための作品。
だから、映画もエリック・サティの曲となっている。
面白いことに、肝心の公演されたバレエそのもののストーリーなどもダンサーの即興に依ったという。

映画史においても有名なこの作品が、YouTubeにUPされていたので載せておこうと思う。
非常に貴重な映画が、このような形で観れることにつくづく有り難く感じる。

幕間(ルネ・クレール.1924)

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ルネ・クレール・7〜『眠るパリ』

2017年11月03日 | サイレント映画(外国)
『眠るパリ』(ルネ・クレール監督、1923年)を借りてきた。

エッフェル塔の高い室内で仕事をするアルバートが、朝、目を覚ますと街のあらゆるものが停止していた。

マルセイユから飛行機でパリへやってきた男性4人女性1人のグループは、街中が森閑としている状態を目の当りにする。
5人とアルバートが出会い、その夜、一行はエッフェル塔の高い部屋で泊まる。
そして翌朝、食料を求めて静止しているレストランへ行き、その後は世界を制覇した気分で、自由気ままにエッフェル塔でのんびりとする・・・

この作品は、ルネ・クレール監督のデビュー作。当然、サイレントである。

まず、着想が面白い。
アルバートがエッフェル塔から降りて、通りを行くと、人も停止状態のままだったりする。
マルセイユから来た人物の中には、くせのある者もいたりする。
そんな連中が、開放感いっぱいで楽しんだりする。
遥か下の方の風景を見せながら、エッフェル塔の鉄骨でのんびりする彼らの、その画面作りに目を瞠らされる。

肝心の、なぜパリの街が停止しているかということ。
実は、ある科学者が特殊な光線を使って街の動きを止めてしまっていたのである。
その時、この6人は光線の届かない位置にいたので。

このような話でもってパリのあちこちを見せ、内容は非常にテンポがよく、だからサイレントと言っても飽きが来ない。
反って、興味が尽きないほど楽しい。

なるほど、シュールな設定がアヴァンギャルド映画的である、と言われる意味が十分に納得できる作品。
ルネ・クレールを知るうえで、実に興味深い。

この作品と『幕間』(1924年)が一巻になったビデオが県図書館にあったので借りてきた。
だから、『幕間』については次回に。
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マルセル・カルネ・7〜『愛人ジュリエット』

2017年11月01日 | 1950年代映画(外国)
『愛人ジュリエット』(マルセル・カルネ監督、1951年)を観た。

収監されているミシェルは、いっときもジュリエットのことが頭から離れない。
そんな夜、ミシェルは夢を見る。

監獄から出たミシェルは、山あいの村を目指し、ジュリエットを求めながら尋ね歩く。
しかし、誰もジュリエットを知らないし、そればかりか、この村の名も自分の名前さえ知らない。
実は、ここの住人たちは、すべてに対して記憶を無くしている人々だった・・・

ジュリエットは、自分を探している人がいると知って心ときめく。
が、陛下と名乗る裕福な男が、それを知って、ジュリエットに目をつける。

それでもとうとう、ミシェルは森でジュリエットと出会う。

ミシェルは、二人が恋人同士あることを語り、ジュリエットもそれは認識している。
だが、ジュリエットは過去を知らない。
だから自分のこと、二人のことを知ろうと夢中になる。
そんなジュリエットが、ミシェルにとって痛々しくってたまらない。

ジュリエットを探し求める、ミシェルのジェラール・フィリップがとってもいい。
そして、ジュリエットのシュザンヌ・クルーティエも、白いドレスで清純な感じがとても素敵である。
まさしく、似合いのカップルそのものという感じである。

ミシェルとジュリエットが、ほんのわずか離れているすきに、陛下が現れ、ジュリエットを誘って連れ去る。
ジュリエットには、もう、先程のミシェルとのことは記憶にない。

ミシェルの見ている夢物語は、終いには、無残に砕け散る。

現実社会のミシェルは、ジュリエットと海岸へ行きたかったために店の金を盗んでいたが、店主の計らいで、告訴取り下げとなり釈放される。
だが、この現実世界でもミシェルは希望を失うことになり、「立ち入り禁止」の夢の扉を開けて、また忘却の村へと歩む。

話の作りのうまさは、さすがマルセル・カルネだなと感心する。
これが本当にセットなのかと目を瞠る森のシーンと共に、物語の人たちとは逆で、いつまでも記憶に残り続ける作品となっている。
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