ジュリアン・デュヴィヴィエと言えば、『望郷』(1937年)。
フランス領アルジェリアの首都アルジェ。
その一画の、イスラム教徒らが集まり人種のるつぼとなっているカスバ。
このカスバに、犯罪者で、パリ警視庁から逮捕状が出ているフランス人ペペ・ル・モコがいる。
ペペは若い子分のピエロや強欲なカルロスらに守られ、住民からも畏敬されている。
だから、アルジェの警察当局が何度カスバを襲ってみても、どうしても彼を捕えることができない。
しかしペペにしても、このカスバから一歩でも外に踏み出せば、即逮捕されることはわかっている。
今回もパリの警視庁は、腕利きの刑事を送ってカスバをガサ入れした。
丁度そのとき、ここに見物に来ていたフランス女性のギャビーが、騒ぎの中で連れの者とはぐれてしまった。
ギャビーはアルジェ警察の刑事スリマンに助けられ、原住民の家へ避難する。
と、そこに、警察から逃れ、腕に負傷したぺぺが入ってきて・・・
ペペとギャビーの出会い。ジャン・ギャバンとミレーユ・バラン。
それに刑事スリマンが絡んで、その後の成り行きを暗示させる場面、それが何とも印象深い。
閉塞されたカスバでの生活にうんざりしているぺぺと、連れの酒商に飽きあきしているギャビー。
ギャビーによって、パリへの郷愁を甦えさせるぺぺ。
行き着く果ては、ペペにとって何物にも代えがたいギャビーへの想い。
それをチャンスと策略するスリマン。
ギャビーに会おうとペペがカスバから出て行くのを追う、情婦イネス。
ストーリーは一見単純そうでも、画面、画面の的確さとテンポの良さもからんで、単なるメロドラマには終わらせない魅力。
ラスト、ギャビーはペペを想い、船の甲板に出て陸のカスバを見る。
手錠のペペは叫ぶ「ギャビー!」
汽笛で消されるペペの叫び。
何度観ても、凄いと思う。
遠い昔に観て、自然と眼に焼き付いて忘れられない場面、このような作品が本当の名画ではないかと思う。
鉄扉に崩れるペペと、駆け寄るイネスの表情が忘れられない。
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