久しぶりに夫婦で出かけ メシ食って帰ろうやと飲食店に寄った。
注文したラーメンを運んできた姉ちゃんが
「お待たせしました」 とテーブルに置くやいなや 熱々の汁に
指を突っこんだ夫が 「こりゃ~まだいかん」 と言ったそうです。
お運びの姉ちゃんはたまげて飛び逃げ どう見ても尋常じゃない
客の蛮行を 他の従業員とともに 暖簾の奥からうかがっている。
完食した夫は店の外に出たとたん こじゃんと妻に叱られました。
「お父さん よそではせんと言うたがを 忘れたかねっ」
さかのぼることひと月ほどまえ 総入れ歯が完成し 歯を入れて
初めてご飯を食べた夫が あつつつ~ と悲鳴をあげたそうです。
口に入れたとき そう熱くもなかったみそ汁が 飲みこんだとき
のどを焼け通り あわてて水をがぶ飲みした。
部分入れ歯のときとは まるでちがう温度の感じ方におじ込んで
以来 湯気が上がるものには まず指をつっこむ妙なクセがつき
人差し指が 温度計になったらしい 。
(※おじる・おじ込む とは怖れるという意味の土佐弁です)
汁物に指を突っ込んでも 特に犯罪ではないにしても 外食したときは
周りが一瞬引いたあと 店を出るまで 常に人様の視線を背中に感じる。
「ま 色々あるろうけんど 通報されはせんろうき すんぐに慣れる」
指温度計男の妻の嘆きに すんぐに慣れるはまずかった ごめんなさい。