ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

ジャン・ルノワール・14~『ランジュ氏の犯罪』

2019年02月21日 | 戦前・戦中映画(外国)
『ランジュ氏の犯罪』(ジャン・ルノワール監督、1936年)を観た。

“国境のカフェ・ホテル”に、逃げている様子の男と女が宿泊を求めてやって来た。
男は、手配中のランジュ。
眠りについたランジュを部屋に残し、たまり場に出てきた連れのヴァランティーヌは、皆に、なぜランジュが殺人に至ったかを語る。

夢見がちなランジュは、夜な夜な、冒険小説“アリゾナ・ジム”を書き続けている。
勤め先の出版社社長バタラは、経営難であるのに何かにつけ調子だけはいい。
だが、債権者ムニエから訴訟を起こされることになったバタラは、夜逃げ同然で逃げ出してしまい・・・

と話は、いろいろな人間関係を絡めテンポよく進む。
もう少し話すと、バタラはヴェルヌイユ近郊で列車事故にあってしまう。

元々このバタラは、本当に女に目がないというか、だらしがないというか、やたらと関係を持ってしまう。
まず、秘書のエディット。
それ以前には、ヴァランティーヌ。
このヴァランティーヌは洗濯店の店長をしているが、バタラはそこで働いている若くうぶなエステルもうまくテゴメにする。
それでもこんなバタラが、なぜか憎めない感じのところが、至って何とも憎たらしい。
というのも、このエステルには相思相愛の曲芸師のシャルルがいるのに、バタラは妊娠させたりする。

本来、不器用なランジュだが、モーションをかけてくるヴァランティーヌと愛し合いだす。

従業員たちは、社長バタラがいなくなったために協同組合を結成して経営に乗りだす。
そして、ランジュの“アリゾナ・ジム”も売れに売れ、出版社は持ち直す。
そんな時期の酒宴の夜、何と、亡霊のごとくバタラが現わて、となる。

だから、再度経営に復帰しようと企むバタラを、思いあまってランジュは射殺してしまう。
そのため、ムニエの息子の助けも借りて、この国境の宿に到着したというのがヴァランティーヌの話す真相。

ヴァランティーヌは、皆が警察に通報するなら宿で捕まるだけのこと、と言う。
この話を聞いた人たちの取った行動は?

ラスト。海辺の波打ち際で、元気に“さようなら”と手を振る二人の姿が映し出される。
その、強く吹き付けている風の中を進んで行く後ろ姿が、何とも印象深い。
このラスト・シーンを見ることができただけでも、いい作品を観れて儲けものだなと、うれしくなった。

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