やおよろずの神々の棲む国でⅡ

〝世界に貢献する誇りある日本″の実現を願いつつ、生きること、ことば、子育て、政治・経済などについて考えつづけます。

【中学歴史教科書8社を比べる】631  29 日米関係 -195- 《戦後》 Ⅺ 占領期(1945-52)-29- ■まとめと考察 ⑵GHQの占領政策 ④憲法制定 4/n:経緯:考察と評価1/2

2018年12月07日 | 中学歴史教科書8社を比べる(h28-令和2年度使用)

29 日米関係 -195- 《戦後》Ⅺ 占領期(1945-52)-29-

■まとめと考察 ⑵GHQの占領政策

④憲法制定 4/n ~経緯:考察と評価 1/2 ※まとめ表1未完


 

1 最初の「日本政府の(自主的)改正案」についての描き方

●日本政府の考えをきちんと書いている。 → 〇 育鵬社、自由社。

●GHQの評価しか書いていない。 →  5社:東京書籍、帝国書院、教育出版、清水書院、学び舎。

 日本国民のための歴史教科書なのだから、当然、第1に、《当時の日本政府の立場や考え方》を知らせ(教え)なければいけない。その後に占領者のことを知らせるべき。

●最初の改正案の存在を書いていない。 →  日本文教。

※1「日本国憲法」は、現在・戦後日本の状況を作っている要因のなかで最大のものだろう。したがって、内容だけでなく、憲法制定のおおまかな経緯についても、日本国民は知っておかなくてはいけない。

※2 検証・・・政治的なことがらについては特に、”嘘”をつく人々が多いので、検証にはウィキペディアだけを使う。

<ウィキペディア:「日本国憲法」より>

・「1946年(昭和21年)1月9日の第10回調査会(小委員会)に、松本委員長は「憲法改正私案」を提出した。この「私案」は、前年12月8日の衆議院予算委員会で、松本委員長が示した「憲法改正四原則」をその内容としており、委員会の立案の基礎とされた。「憲法改正四原則」の概要は次の通り。

1 天皇が統治権を総攬するという大日本帝国憲法の基本原則は変更しないこと。
 天皇ガ統治権ヲ総攬セラルルト云フ大原則ハ、是ハ何等変更スル必要モナイシ、又変更スル考ヘモナイト云フコト


2 議会の権限を拡大し、その反射として天皇大権に関わる事項をある程度制限すること。
 議会ノ協賛トカ、或ハ承諾ト云フヤウナ、議会ノ決議ヲ必要トスル事項ハ、之ヲ拡充スルコトガ必要デアラウ、即チ言葉ヲ換ヘテ申セバ、従来ノ所謂大権事項ナルモノハ、其ノ結果トシテ或ル程度ニ於テ制限セラルルコトガ至当


3 国務大臣の責任を国政全般に及ぼし、国務大臣は議会に対して責任を負うこと。
 国務大臣ノ責任ガ国政全般ニ亙リマシテ、而シテ国務大臣ハ帝国議会ニ対シ、即チ言葉ヲ換ヘテ申セバ、間接ニハ国民ニ対シテ責任ヲ負フト云フコト

4 人民の自由および権利の保護を拡大し、十分な救済の方法を講じること。
 民権ト申シマスカ、人民ノ自由、権利ト云フヤウナモノニ対スル保護、確保ヲ強化スルコトガ必要デアラウ

 委員会は、この「憲法改正四原則」に基づいて憲法を逐条的に検討した。宮沢委員が「私案」を要綱化して松本がこれに手を加え、「憲法改正要綱」とした。1月26日の第15回調査会では、この「憲法改正要綱」(甲案)と「憲法改正案」(乙案)を議論した。内閣は1月30日から2月4日にかけて連日臨時閣議を開催して、「私案」「甲案」「乙案」を審議。2月7日、松本は「憲法改正要綱」(松本試案)を天皇に奏上し、翌8日に説明資料とともに総司令部へ提出した。この「憲法改正要綱」は内閣の正式決定を経たものではなく、まず総司令部に提示して意見を聞いた上で、正式な憲法草案の作成に着手する予定であった。

 

2 「GHQの改正案作成」についての描き方

 ・「GHQの改正案」は、①「マッカーサーの三原則」を基本として、②「日本の民間憲法草案(特に憲法研究会の「憲法草案要綱」)や、世界各国の憲法」を参考にして、2月4日から10(12)日までの約一週間で作られた。

・上記「憲法研究会」の中心人物だった鈴木安蔵は、マルクス主義者だった。

 <ウィキペディア:「鈴木安蔵」より> 戦前期は左翼学生運動での検挙、著書の発禁など不遇の時期を過ごしていたが、明治文化研究会に参加し、在野の研究者としてマルクス主義者の立場から大日本帝国憲法をはじめとする憲法史・政治史を研究し、特に大日本帝国憲法の成立過程の実証研究をおこなった。
 
第二次世界大戦後は憲法研究会の発足に参加し、自らの憲法史研究をベースとして会による憲法私案「憲法草案要綱」をまとめた。

 

●「民間団体の案」を参考にしたことだけ書いて、より重要な「マッカーサーの三原則」を書いていない。 →  東京書籍、帝国書院、教育出版、学び舎。

 ※1 重要な事実①を書かず、別の事実②だけ(一部だけ)書くことは、「偏向」や「印象操作」と言い、の一種。上記は、はなはだしい、ひどい嘘。

 ※2 他の4社はどちらも書いてないが、それは編集の裁量の問題だろう。書くのなら、「マッカーサーの三原則」だけ書くか、両方書くのが公正で学問的な編集だろう。

 

 

●GHQが、改正案改正案の取り換えを指示・命令したときに、日本政府を「恫喝」したことについて、言及している。 → 〇 育鵬社、自由社。

 

●上記について、無視している。 →  6社 東京書籍、帝国書院、教育出版、日本文教、清水書院、学び舎。

 

 ※上記は、”ささいなこと”ではない。占領時に、占領者(国)が、被占領国に「新憲法」の制定を強制することは「国際法違反」の行為なのだから(※「日本の場合は違反ではない」という異論もあるようだが、学者の大勢は「違反」と認識しているようだ)。

 

※検証 <ウィキペディア:「日本国憲法」より> (※重要部分の色字化は松永による。)

・「毎日新聞によるスクープ報道の波紋  同2月1日、毎日新聞が「松本委員会案」なるスクープ記事を掲載したが、この記事に載った「松本委員会案」とは、宮沢委員が提出した「宮澤甲案」であった。この「宮澤甲案」の内容は、松本委員会に提出された草案の中では比較的リベラルなもので、内閣の審議に供された「乙案」に近かった。政府は直ちに、このスクープ記事の「松本委員会案」は実際の松本委員会案とは全く無関係であるとの談話を発表した。
 
しかし、この記事を分析したホイットニー民政局長は、それが真の松本委員長私案であると判断し、また、この案について「極めて保守的な性格のもの」と批判し、世論の支持を得ていないとも分析した。

総司令部による意思決定  そこで総司令部は、このまま日本政府に任せておいては、極東委員会の国際世論(特にソ連、オーストラリア)から天皇制の廃止を要求されるおそれがあると判断し、自ら草案を作成することを決定した。その際、日本政府が総司令部の「受け容れ難い案」を提出された後に、その作り直しを「強制する」より、その提出を受ける前に総司令部から「指針を与える」方が、戦略的に優れているとも分析した。 

 

 2月3日、マッカーサーは、総司令部が憲法草案を起草するに際して守るべき三原則を、憲法草案起草の責任者とされたホイットニー民政局長に示した(「マッカーサー・ノート」)。三原則の内容は以下の通り。

天皇は国家の元首の地位にある。皇位は世襲される。天皇の職務および権能は、憲法に基づき行使され、憲法に表明された国民の基本的意思に応えるものとする。

Emperor is at the head of the state. His succession is dynastic. His duties and powers will be exercised in accordance with the Constitution and responsive to the basic will of the people as provided therein.

 

国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持するための手段としての戦争をも、放棄する。日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。日本が陸海空軍を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない。

War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security. It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense and its protection. No Japanese Army, Navy, or Air Force will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.

 

・日本の封建制度は廃止される。貴族の権利は、皇族を除き、現在生存する者一代以上には及ばない。華族の地位は、今後どのような国民的または市民的な政治権力を伴うものではない。予算の型は、イギリスの制度に倣うこと。

 

The feudal system of Japan will cease. No rights of peerage except those of the Imperial family will extend beyond the lives of those now existent. No patent of nobility will from this time forth embody within itself any National or Civic power of government.Pattern budget after British system.

 この三原則を受けて、総司令部民政局には、憲法草案作成のため、立法権、行政権などの分野ごとに、条文の起草を担当する八つの委員会と全体の監督と調整を担当する運営委員会が設置された。2月4日の会議で、ホイットニーは、全ての仕事に優先して極秘裏に起草作業を進めるよう民政局員に指示した。以下はその会議における議事録である。 (途中省略)

 ホイットニー准将は憲法起草チーム全員に対して「天皇とその権限を維持する唯一の可能性はGHQ草案の受諾以外にない」という恫喝を用いる権限、恫喝のみでなく実際に強制力を行使する権限がマッカーサー元帥から付与されていることを伝えた

 起草にあたったホイットニー局長以下25人のうち、ホイットニーを含む4人には弁護士経験があった。しかし、憲法学を専攻した者は一人もいなかったため、日本の民間憲法草案(特に憲法研究会の「憲法草案要綱」)や、世界各国の憲法が参考にされた。民政局での昼夜を徹した作業により、各委員会の試案は、2月7日以降、次々と出来上がった。これらの試案をもとに、運営委員会との協議に付された上で原案が作成され、さらに修正の手が加えられた。2月10日、最終的に全92条の草案にまとめられ、マッカーサーに提出された。マッカーサーは、一部修正を指示した上でこの草案を了承し、最終的な調整作業を経た上で、2月12日に草案は完成した。マッカーサーの承認を経て、2月13日、いわゆる「マッカーサー草案」(GHQ原案)が日本政府に提示された。 2月4日に憲法起草チームの前で説明された恫喝は実際に2月13日のGHQ憲法草案提示時に実行された

 

~2/2につづく

全リンク⇒1へ <29 日米関係  Ⅺ 占領期 ■まとめと考察⑵②経済619620621622623624・③言論625626627・④憲法628629630631632633634635636・⑤教育

者:松永正紀  教育評論家 /h22年度 唐津市・玄海町:小中学校校長会長》

※記事の不備等に関するお願い…《ブログ「やおよろずの神々の棲む国で」の記事》が原典。3つのサイトで同時連載中。不備等の後日修正は原典のみで実施中ですが、事情により原典ブログではコメント機能を止めています。ブログの内容に疑問がある場合は、2つの<同時掲載のブログ>へのコメントで教えてください。