⑤ 明治時代(維新)の神道の描き方のちがい
ⅰ 基礎知識
<ウィキペデア:国家神道>より
・「国家神道(こっかしんとう)とは、大日本帝国の国教、あるいは祭祀の形態の歴史学的呼称である。」
・「「国家神道」は広義には神道的な実践を国民統合の支柱とするもの、狭義には「宗教」とされた「教派神道」に対して内務省神社局によって統制されたものをいう。国家神道の定義によっては、内務省が神社を管掌する以前の神祇官、教部省による神社行政も含まれる。
大日本帝国憲法では文面上は信教の自由が明記されていた。しかし、政府は「神道は宗教ではない」(神社非宗教論)という公権法解釈に立脚し、神道・神社を他宗派の上位に置く事は憲法の信教の自由とは矛盾しないとの公式見解を示し、また自由権も一元的外在制約論で「法律及び臣民の義務に背かぬ限り」という留保がされていた。」
・「第二次世界大戦後、GHQにより「神道指令」が出され、国家神道は解体へ向かったが、国家と神道を巡る政教関係については論争が続いている(日本国憲法第20条、信教の自由、政教分離原則、津地鎮祭訴訟、靖国神社問題参照)。」
・神社合祀政策
「江戸時代、会津藩や岡山藩、水戸藩、長州藩、津和野藩では、批判論が出るなどの議論が続く中で、小祠や淫祠の廃止・統合がおこなわれていた。このうち、水戸藩の神社合祀政策を特に「八幡改め」と称した。これは旧支配者佐竹氏が尊崇した八幡神社を破壊し、みずから崇拝する鹿島神宮に置き換える運動である。
明治になると、神祇官は神社の調査が済むまで神社の整理をおこなわない方針をとった。
1876年以降、教部省はこの方針を変更して無格社や仏堂の整理を開始した。
1906年(明治39年)12月、一町村一社を原則に統廃合をおこなうとする「神社合祀令」が出された。同年以来、内務省は数年間かけて神社の整理事業をおこなった。
神社整理というと一般にはこの頃の事業を指す。合祀が著しかったのが三重県と和歌山県で、三重県の6500社の神社が7分の一以下に、和歌山県の3700社の神社が6分の1以下に合祀された。最初の3年間で全国の4万社が取り壊された。1913年頃に事業はほぼ完了し、社数は19万社から12万社に激減した。
事業の目的は荒廃した小祠や淫祠を廃止・統合して国家の祭祀として神社の尊厳を高めることにあった。また、地方行政の合理化という側面もあった。
一方で、地域の氏神信仰に大きな打撃を与えるなどの理由で反対意見も多く出された。民俗学者・博物学者の南方熊楠は『日本及日本人』などで10年間にわたって反対運動をおこなった。」
<ウィキペデア:神仏分離>より
・「神仏分離(しんぶつぶんり)は、神仏習合の慣習を禁止し、神道と仏教、神と仏、神社と寺院とをはっきり区別させること。
その動きは早くは中世から見られるが、一般には江戸時代中期後期以後の儒教や国学や復古神道に伴うものを指し、狭義には明治新政府により出された神仏判然令(神仏分離令。慶応4年3月13日(1868年4月5日)から明治元年10月18日(1868年12月1日)までに出された太政官布告、神祇官事務局達、太政官達など一連の通達の総称)に基づき全国的に公的に行われたものを指す。」
・「神道国教化のため神仏習合を禁止する必要があるとしたのは、平田派国学者の影響であった。
政府は、神仏分離令により、神社と寺院を分離してそれぞれ独立させ、神社に奉仕していた僧侶には還俗を命じたほか、神道の神に仏具を供えることや、「御神体」を仏像とすることも禁じた。
神仏分離令は「仏教排斥」を意図したものではなかったが、これをきっかけに全国各地で廃仏毀釈運動がおこり、各地の寺院や仏具の破壊が行なわれた。地方の神官や国学者が扇動し、寺請制度のもとで寺院に反感を持った民衆がこれに加わった。 これにより、歴史的・文化的に価値のある多くの文物が失われた。」
・「新政府は神道国教化の下準備として神仏分離政策を行なったが、明治5年3月14日(1872年4月21日)の神祇省廃止・教部省設置で頓挫した。これは特に平田派の国学者が主張する復古的な祭政一致の政体の実行が現実的には困難であったからである。」
・「明治8年には大教院を閉鎖、明治10年には教部省も廃止し、内務省社寺局に縮小され、神道国教化の政策は放棄された。代わって神道は宗教ではないという見解が採用された。
神仏分離政策は、「文明化」への当時の国民の精神生活の再編の施策の一環として行われたものであり、修験道・陰陽道の廃止を始め、日常の伝統的習俗の禁止と連動するもので、仏教界のみならず、修験者・陰陽師・世襲神職等、伝統的宗教者が打撃を受けた。」
~次回、実物コピー~
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