のり巻き のりのり

飾り巻き寿司や料理、己書、読書など日々のあれこれを書いています



風が呼んだから

2016年06月08日 | お気に入り
爽やかな一日。こんな日は風に身を任せたい。

木が好き、森が好き、川が好き。

車で10分、私のお気に入りの場所。ただし人が少ない時間のみ。



遊歩道を進むと、エノキ、センダン、カワヤナギ、ニッケイ、オニグルミなどの自生木の森に行く。

昔はもっともっと森だった。今は森というより林になった。

鶯の声が響き、姿は見えないが数種類の鳥の声と重なって聞こえる。

もう少しするとカッコウの大音声がこの森を制するだろう。



木々の間を抜ける初夏の風が何とも心地よい。

ベンチに腰掛けて本を読もう。



このテーブルは日曜日ともなれば家族連れや若いグルーがバーベキューを楽しむところだ。

今はだれもいない。

集中して読んでいたら、風が語りかけた。ページを繰る手を離し、目を上げると、白い光の中にいた。

透明な風がぱらぱらとページを巻き上げていく。


ちょっと重い内容の本を読んでいたけれど、(「深重の海」津本陽)風が少し気持ちを軽くしてくれたような気がした。

明治の激流に呑まれ、滅びゆく運命をたどる海人たち。苦闘の中で生きた捕鯨の村、大地町のことを想う。

わずかな時間ではあったが、風が、木々が、水のきらめきが、私を本の世界へ連れて行ってくれた。





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