私の思いと技術的覚え書き

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MTのこと 2017-01-15記事再録

2018-01-15 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 最近は2ペダルのクルマが増加し、オートマ(AT)限定免許で乗る方も多く、3ペダルのマニュアルトランスミッション(MT)なんか乗ったことないという方も増えているだろう。それでも、MTに乗りたいと憧れ、あえてAT限定解除し、MTに乗るなんていう方も身近に知るのだ。しかし、MTが少なくなったこともあり、MTの動作原理を知らないドライバーどころか整備屋もいるから、ここではMTのことを中心に記してみたい。

 まず、写真1が30年ほど前のトヨタのW50という5MTの断面図だ。現在のMTでも、基本構成としては大きな変わりはなく、しいて違いを上げれば、シンクロ(同期)機構が、この時代はシングルコーンだったのが、よりシンクロを強力にするため、テーパーコーンをダブルとかトリプルに増やしている程度だろう。図で判る様にリバースを除くすべてのギヤは、カウンターギヤと常時噛み合っているが、ニュートラルではメインシャフト上の各ギヤは、フリーで空廻りしている。そこで、シフト操作を行うことにより、シフトレバーの動きは、シフトフォークに伝えられ、シンクロナイザーハブを前進させ、シンクロナイザーリングをギヤ側のコーン部に押し付けられ、回転同期されることによりハブはさらに前進し、選択ギヤをシャフトにロックさせることで変速動作が完了する訳だ。

 なお、図を見てもらって判るように各ギヤはリバースを除きヘリカル(斜歯)ギヤだ。これはギヤの噛み合いを滑らかにし、騒音の発生を抑える目的から採用されている、なお、ヘリカルギヤの場合、駆動、非駆動において側圧を生じるので、適切なクリアランスを管理しないと、ギヤ抜けなどのトラブルが生じる。また、リバースだけは平(スパー)ギヤが使用されるが、図では表示されないが、噛み合っていない平行2軸ギヤ間にアイドラギヤをスライドさせて噛み合わせることにより、回転方向の逆転を行う。このスライド噛み合いのために、あえてスパーギヤを利用する訳である。MTを運転してみれば判ることだが、リバースである程度速度を上げるとヒューンという駆動音が出るが、これがスパーギヤ特有の騒音で、通常の前進ギヤのヘリカルギヤでは、駆動音はほとんど聞き取れないレベルに抑えられている。

 ついでにNETで拾った、レーシング用チューニングキットの写真2、3を載せて見る、すべてのギヤがスパーギヤで構成されているのが判るだろう。こういうMTで走ると、各ギヤでヒューン、ヒューンと周波数は異なるが、それなりの騒音は生じるだろうが、レーシング目的から問題ないということなのだろう。ついでにもう一つ、レーシング使用では、素早いシフトを目的として、あえてシンクロ機構を除外し、常時噛み合いギヤのロックをドグクラッチという単純な機構で行う。このドグクラッチは、シンクロ付きのスリーブとシンクロナイザーリング、ギヤ間の噛み合いロックと原理としては同様なのだが、シンクロナイザーリングが廃され、ギヤロックのための噛み合いが4枚とか極少ない単純な凹凸のもの(写真4)になっている。つまり、ある程度の非同期状態でも、半ばムリやり噛み合ってしまうというものなのである。それでも、回転差が大きい3速全開から2速ハーフスロットルでのコーナー進入時など、大きな回転差がある場合は、ダブルクラッチによりある程度回転差を合わせてやる必要がある。

追記
 通常のMTは2軸だが、これを3軸にし、奇数段と偶数段に分け、2つのクラッチを持ち、例えば1速で走行中は、既に2速にシフト済みで、単に2つのクラッチの内の1方を切り離し、もう1方を接続すると云うのがDCT(ディアルクラッチトランスミッション)だ。当然2組のクラッチ操作を手動で行うのは困難で、AMT(オートマチック)で2ペダルとなる。しかし、伝え聞くポルシェ991では、このDCT(ポルシェではPDKと呼ぶ)を3ペダルのMTに使用すると聞く。当然、クラッチは1組であり、変速操作は2本のシフトフォークを動かし、適当なシフトパターンを実現するためには、複雑な変換リンクが必要になるだろう。これ思うに、DSGの3軸を使う意味はシフトフィーリングや性能上の意味はまったくなく、MT本体のギヤセットを流用できるというコストメリットだけではないかと思える。日本車なら、やりそうなことだが、あのポルシェがそういうことをやる時代なのかと思うと、非常に残念に感じるのだ。

追記2
 通常のシンクロ付きのMTミッションは、シンクロナイザーリングの摩擦による増速もしくは減速からほぼ同一速度になった場合に、スリーブの前進とギヤロックが完了できる。シフトアップにおいては、それほど回転差が生じにくいが、減速時のシフトダウンにおいては、大きな回転差を生じることから、強いシフトレバーの操作を繰り返すと、2nd辺りのシンクロナイザーリングが摩耗して、シフトダウンがし難いという状態になる。また、現実に見てきたことだが、ドリフト系ビデオなどの見過ぎから素早いシフトを練習して、びっくりする様な素早いシフトをして見せる若者がいる。その時、いざというテクとしては良いが、常時行うのはメカに負担を掛け過ぎると忠告した次第だ。すなわち、シンクロナイザリングの早期摩耗、シフトワイヤー系への負担大からワイヤーの切断やエンドジョイントの摩耗や外れ、シフトフォークとスリーブの摩耗によりギヤロックが浅くなりギヤ抜けなどとなろう。




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