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もはや日本の「がん」…ウソだらけのストーリーをでっちあげ、威圧的に認めさせる「特捜部の杜撰な捜査」の全容

2024-07-25 | コラム
もはや日本の「がん」…ウソだらけのストーリーをでっちあげ、威圧的に認めさせる「特捜部の杜撰な捜査」の全容
7/25(木) 7:05配信 現代ビジネス 撮影:森清

日本の刑事司法の最大の闇といわれる「人質司法」。東京五輪をめぐる贈収賄事件で逮捕・起訴され、226日間にわたり勾留された、KADOKAWAの元会長・角川歴彦氏を始め、その犠牲者は後を絶たない。国民が唖然とする冤罪事件の犠牲となった村木厚子さんもその一人だ。

厚生労働省の局長(当時)だった村木さんは、大阪地検特捜部の杜撰な捜査によって逮捕され、約5ヵ月間も勾留される苦難を体験した。

村木さんの無実判決を勝ち取った「検察がもっとも恐れる男」弘中惇一郎弁護士が、特捜検察が冤罪事件を作り出した戦慄の手口20を明らかにしている。その中から手口1を特別に公開する。

【*本記事は弘中惇一郎『特捜検察の正体』(2023年7月20日発売)から抜粋・編集したものです。】

「特捜」は事件を「作る」

特捜事件が通常の刑事事件と違うのは、「事件を作る」という点だと思う。

通常の刑事事件は、殺人や放火などが実際に起こったから捜査をするわけだが、特捜事件では、事件を作るために捜査をするというケースが多々見られる。

事件のストーリーは検察官が考える。よく言えば「筋読み」だが、悪く言えば、妄想的に「ない事件」を考えてしまう。そこで重視されるのは供述調書である。

もともと特捜事件では証拠として供述調書の比重が高く、検察官は自分たちが描いたストーリー通りにうまく供述調書を作ろうと熱心に努力する。事件を作るには供述調書をどう書けばいいか、という発想なのだろう。被疑者や関係者への事情聴取も、単に話を聞くというのではなく、自分たちが作ったストーリーを高圧的に押し付けることが中心になりがちだ。

その典型が村木厚子事件だ。この事件が冤罪だったことは周知のとおりで、大阪地検特捜部の前田恒彦主任検事による証拠改竄があったことも広く知られている。

本記事では、村木事件をケーススタディにして、冤罪を生み出す検察官ストーリー強要捜査の手口について述べる。

ウソだらけの検察側冒頭陳述

大阪地検特捜部が裁判で主張した村木事件の概要は、以下のようなものであった。

──2004(平成16)年、厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課長だった村木は、「凛の会」が偽の障害者団体であると知りながら、石井一衆院議員の依頼により、障害者団体として認定する内容虚偽の証明書を部下に命じて作らせ、自らの公印を押して発行し、障害者用郵便料金の割引を受けられるよう便宜を図った──。

これに対して、村木さんは、一貫して起訴事実を否認していた。

検察側冒頭陳述では、村木さんが「犯行」に至った経緯として、図1~19の面談や電話での会話が挙げられた。

これら1~19には、それぞれ、内容を裏付ける関係者の供述調書が多数あった。

ところが、関係者は証人尋問で、供述調書の内容のほとんどを否定した。1~19のすべてが、検察に意図的に捏造されたものかどうかは定かではないが、19件中18件は、現実には存在しない架空の面談や会話だったのである。

この事件では、判決後に、上村氏が作成した偽証明書の文書データの日付を前田検事が改竄したことばかりクローズアップされたが、むしろ、それ以上に問題があるのは供述調書の作り方だった。文書データの改竄だけなら前田検事の個人的な暴走で片付けることもできるが、何人もの検事が作った各供述調書の内容と法廷での証言内容がことごとく食い違ったのだから、「組織あげての事件の捏造」だったと言うしかない。

手口1:ストーリーを作り都合のいい証拠のみ集める
現在の刑事訴訟制度においては、弁護人はかなりの量の供述調書を見ることができる。

検察が裁判所で証拠申請を予定している調書のほかに、それに関係する調書(たとえば、証拠申請予定者のすべての供述調書や証拠申請予定者の信用性を検討するのに必要な調書など)や、弁護側が裁判で予定している主張に関係する調書も、弁護側が開示請求すれば、検察側は原則としてすべて開示しなければならない。このようにして開示される供述調書の数は、事件によっては1000通ほどになることもある。村木事件の場合、私は200通ほどの供述調書を読んだ。

それらは、じつによくできた「作文」で、ストーリーとしては完成していた。村木事件に限らず、特捜事件の供述調書は、「破綻のない、見事に一貫したストーリー」だ。初めから、そうなるように作られているのである。

主任検事の指揮のもと、各検事は担当する被疑者や参考人を割り当てられ、それにしたがって取り調べをし、調書を作る。初めからミッションがあり、そのミッションに沿って、この相手からはどういう内容の調書を作ってサインさせるかを決めてある。

そして、相手の話のなかから筋書きに合致するものを材料にして調書を作る。材料の提供が不足すれば誘導したり、説得したりして、予定していた調書を作り上げる。筋書きに合わない話、つまり検察にとって都合の悪い話は排除されるので、事実と異なる調書が作られてしまう。

村木事件の証人尋問では、こうした特捜検察の取り調べのやり方を赤裸々に語った証人もいた。以下に、その証言の一部を紹介しよう。

ストーリーのでっちあげ
村木事件は、「凛の会」の倉沢会長と幹部の木村氏とが、石井議員のところに請託に行ったことが端緒とされた(前記表)。これについて、木村氏は、法廷で次のように証言した(以下、証言中の〔 〕内は筆者による補足)。

「石井一の前に倉沢さんが座って、それの左隣だか右隣に私が座って、──中略──倉沢さんがこういう会を今度作ったんで、一つお力添えいただきたいみたいなことを申し上げて、私からもよろしくお願いしますというようなことを言ったというふうに〔私の調書にもう既成の事実として〕書いてあった」

「〔そのときに私は〕それは検事さんの作文でしょう、私、そんなこと、申し上げてませんよということを、はっきり申し上げました。ところが、それは認められなかった」

要するに、検察官は、相手方に質問をして事実を聞き出して、それを取りまとめて調書にするのではなく、取り調べを始める前に、一方的に作りたい調書を作文しておき、そのストーリーを認めてサインするようにと、押しつけてくるのである。初めて取り調べを受けたら、もう供述調書ができていたのだから、木村氏はさぞかし驚いたことだろう。

威圧的取り調べ
前述した木村氏の証言のなかに出てくる「検事さん」とは、國井弘樹検事である。

木村氏は、國井検事の取り調べについて、「御自分がおっしゃった内容に対して、私が否定すれば、そうじゃないだろうから始まって、まあそれが尋常じゃないですね」「立ち上がられたり、机をたたかれたり」「うそをつくな、これが事実なんだという格好で、押さえ付けられる」というものであり、「検事の方がそういう態度で接するとは思ってなかったもんですから、相当な圧力は感じました」と証言した。

また、國井検事が作成した供述調書に署名押印をする前後の状況について、「これは飽くまでも検事さんの作文ですね、私、こういうことは申し上げてませんよ」と、「かなりきつい言い方で」抗議したものの、「いいんだ、いいんだよ、ともかくサインすれば」と國井検事に言われ、「もう夜の8時まで、ずうっと問答をやり取りやってましたし、相当なこっちも圧力感じてましたので、これはもう署名するしかないな」と諦め、「その場は署名して引き下がってきた」と証言した。

「凛の会」の河野氏も、國井検事らから威圧的な取り調べを受け、河野氏の弁護人は大阪地検特捜部に抗議の申入書を送っている。

特捜事件に限るとは言えないが、取り調べ時に検察官が威圧的態度によって無理やり調書にサインさせることは、珍しくないのである。

検察官ストーリーに合致しない話は調書にしない
國井検事は、上村氏の取り調べも担当した。

「凛の会」に要請されて偽の証明書を発行したのは上村氏であり、のちに執行猶予付きの有罪判決を受けている。上村氏は逮捕直後から、偽証明書の作成は自身の単独犯であり、村木さんは関係ないと言い続けたが、そのような供述はいっさい調書にされなかった。

証人尋問で、上村氏は、國井検事について、

「具合が悪かったら言ってねとか、眠れるとか、食事取れてるとか、すごい気遣ってくれているのに、肝心の僕の話は聞いてくれない」

「ちゃんと説明してるんだけど、聞き流してる、うなずいているんだけど、いざ調書のときになると、何もそのことについては書かれていない」

などとして、いくら真相を説明しても、すべて無視され続けたことを明らかにした。

また、前出の木村氏も、倉沢氏と一緒に石井議員に会ったとする検察官ストーリーについて、「幾ら私がお話ししても、いや、そうじゃないんだと。これが事実なんだと。──中略──おまえは間違いなく会ってるんだという格好での取調べ」だったと証言し、検察官ストーリーに合致しない話はいっさい受け付けてくれない状況を述べている。

なぜ、このようなことをするのかというと、自分たちのストーリーに反する供述調書を作ってしまうと、それが証拠開示の対象となり、供述の矛盾として追及される危険があるからだ。そのため、検察官ストーリーに沿った内容の調書のみが残るようにする。

また、一つの調書を作り上げると、その調書を参考にして、それに符合するように他の調書を作ることもある。複数の被疑者や多数の関係者から調書を取っても、事件全体のストーリーとして整合性が取れているのは、そのためである。

次回記事<「客観的事実」や「科学的知見」も彼らの前には敵わない…無実でも「有罪」にできる「特捜検察」の凄すぎる手口>もぜひご覧ください。

*本記事抜粋元の弘中惇一郎『特捜検察の正体』では、検察がもっとも恐れる無罪請負人が、「特捜検察の危険な手口20」を詳細に解説している。弘中 惇一郎(弁護士・法律事務所ヒロナカ代表)

#もはや日本の「がん」…ウソだらけのストーリーをでっちあげ、威圧的に認めさせる「特捜部の杜撰な捜査」の全容


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