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ふそう大型バス・腐食リコール

2019-01-29 | 技術系情報
 この作業は関わるバス(ふそう観光系9m)で、公示されたリコール作業を行った記録として記してみます。

 該当のリコールは、ふそう中・大型バスの前輪独立懸架車において、フロントロワーアームを支持するサスペンションビボット部位が取り付く、センターメンバー(閉断面鋼板製 t7mm)が内部空間に水溜まりを生じるなどして腐食減肉し、当該ビボット部位の支持が喪失することで、ステアリング操舵が不可能になる恐れがあるという深刻なものです。

 このセンターメンバーは、バスの車体骨格の重要部位として、溶接組み立て構造の一部分として一体化されています。対象車両は1993年から2017年までのエアロミディ、エアロバス、エアロクィーン、エアロアースど合計14,600台余です。リコール開始してから1年を超えますが、未だ未実施車があり、KC-以降は、まだまだ実使用している場合もあるでしょう。そして、以下に述べる様に寒冷地での使用車は、要注意だろうと思います。

 この主に車体の下部の腐食ですが、現在ではバス、トラック含めて、生鋼板状態から最初の下塗り塗装工程(電位差を与えて塗料を吸着されるカチオンED)でボデー全体を水溶性塗料プールに浸漬して行われます。このカチオンEDのバストラでの採用は、乗用車より20年は遅れて実施されたと想像していますが、バストラで2000年前後が境目だろうと想像しています。なお、乗用車では、80年代以降はカチオンEDにより大幅に防錆力を向上させましたが、車両下部の防錆実態においては、降雪地(寒冷地)と無降雪地では。大きな格差を生じているのが実態です。乗用中古車でも、降雪地で使用した車では、信じかねる発錆で、場合によってはまともに修復困難という事例を見ることもあるのです。

 さて、リコール作業の実際は、左右フロントサスペンションおよびステアリングリンケージ廻りを外し、取替となるセンターメンバー(ロワアームの取付支点となる部位)を酸素で粗切りします。粗切りは上部のフレームとの連続溶接とギリのところで行い、この後残部をサンダーで削り落として平滑にして(川重の新幹線台車のごとく母材を削らないように注意しつつ)新部品を位置決め合わせして、欠陥のない連続溶接を行うという寸法ですが、結構大変な作業となります。

 位置決めについては、メーカーから支給されたジグ(ロワアーム取付部2点とアッパーアーム取付部2点を位置決めする左右一対のジグ)を利用する様ですが、それだけでは不安で、各部位の実測寸法をメモして行われていることが伺えます。それは、もっともなところで、今回のセンターメンバーはロワアームの取付部位となるから、その寸法誤差は直ちに左右アライメントに影響してきますから、念には念を入れてのことでしょう。

 センターメンバーの板厚は7mmといったところの様で、水溜まりし易いセンターメンバー内部底面の腐食減肉もそれ程には生じていない様でした。何れにしても、寸法精度を確実に取って、熟練者が極力欠陥のない確実な連続溶接を行う必要があるのでしょう。なお、溶接には、その姿勢により下向き、横向き、立ち向き、上向きとあるが、この順番で難易度が上がるそうです。動かせるものなら、溶接部位を下向きにできる様にして行う訳ですが、今回の様に動かせない場合は、難易度が上がっても対応しなければなりません。今回の場合は、ほぼ横向きに近い部位が多いが、一部(前後端部など)は上向きに近い状態になると思えます。

 それにしても、片側サスAssyだけで、優に200kgは超えるでしょう。モノも巨大だし、改めて大型系特有の大変さを感じるところです。




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