Natural Mystic ~ナチュラルミスティック~

There's a natural mystic blowing through the air

雨中行軍 雁坂峠(1,950m)

2005-10-22 23:59:30 | 登山・アウトドア
食後、テレビのBS放送を見ていると天気予報が始まった。北陸・富山地方は午前中雨。最悪である。

15年程前、上京して初めての一泊山行に出かけた。当時、バブル期とはいえ、今程の登山ブームではなく、登山用品はまだまだ学生には手の届きにくい程の高額で綿パン・Tシャツ・トレーナー、合羽に至っては最高級の第2世代ゴアテックスなどは手もでるはずもなく、蒸れるハイパロン樹脂製が一般的だった。

その山行は日本3大峠の一つである雁坂峠(標高2,080m・登山口である川又は標高約600m)を越えるものだった。今では雁坂トンネル(一般国道に敷設されたトンネルでは日本一長い)開通に伴う橋の敷設で歩く時間が大幅に短縮されたが、当時は秩父側から雁坂小屋までを延々6時間以上歩かなければならなかった。

当日、川又でタクシーをおりてまもなく雨が降り出した。引き返すことも出来ずひたすら歩く。結局、山小屋に着くまで延々と雨だった。雨の日は多分に注意を払わなくてはならず、大きなストレスとなる。翌日は晴れ上がったが、前の晩雨にあたったテントは重くまた、塩山側は急斜面で滑りやすく大変な思いをした。4人のメンバーはその経験を後に『雨中行軍』と呼ぶようになり、これがもとで雨の登山を疎んじるようになった。その後このときの4人で尾瀬に行った際、戸倉口まで行って雨が降り出し、向こう3日間雨と予報が変わったことを確認したため引き返したことさえある。

現在でも雨中の山岳移動というものはやはり苦痛である。景色は見えないし、道具の性能が上がったとはいえ現在のゴアテックスでも合羽を着ると当然のように汗蒸れ等の違和感がつきまとう。泥跳ねで汚れるし、ザックカバーのせいで荷物の取り出しが億劫になる。休憩時座る場所を選ばなくてはならず、滑りやすくなり霧で視界も制限されてくる等々問題ずくめである。雨が降ると私にとって山行は一気に修行の場所となる。そういった理由から、私は雨が降る確立が高いときは山には入らない。

【雁坂峠の様相】

しかし、雨上がりの眺望が魅力的であることもまた事実である。雁坂で散々雨で大変な思いをしたが、一時的に雨雲が割れた夕刻、山小屋の幕営地から霧に浮かび上がった奥深い秩父の山々の光景の素晴らしさは今でも忘れられない。また屋久島・宮之浦岳に初めて登った際は途中の黒味岳まではずぶ濡れになるも投石平から一気に晴れだし、頂上から眺めた雲の向こうに広がる海と空の青は圧巻だった。飯豊連邦を縦走した際は尾根の両側に広がる雲海の眺めが凄く、下に雷を聞くという貴重な体験もした。

明日の予報は雨。しかも小屋の外は豪雨である。気さくな山小屋の女将の話だと、朝の10:22に欅平から宇奈月行きの専用トロッコ電車が出る。登山者はそれを逃すと16:00の専用電車まで乗れなくなる可能性があるという。特に土日祝日は宇奈月から登ってくる団体・一般観光客が往復で便を押さえて来るため空きがないらしく、登山客の乗車は難しいとの事だった。しかしこの専用電車に乗るためには5:00には小屋を出発しなければならない。雨と夜明けの暗がりでは危険なだけである。仲間内では、このまま停滞し予備日としていた明後日に下山するという意見も出たが、その明後日も天気が良くないらしい。相談の結果、一応天気次第で5:00発。最悪16:00の便で下山することになった。

あまり考えると憂鬱になるため、その晩は皆考えるのをやめて明日の予報が変わることを祈って、仲間との山の経験の話に花を咲かせた。