思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

香港雑記⑦ 香港の街並み、香港人の良識編

2006-03-06 18:30:28 | 自分の旅話(非日常)

2006年2月17日、街の至るところに設置されている、上部に円形の灰皿が付いたゴミ箱。特に繁華街では50~100mおきに設置されていて、路上にちょっとしたゴミがポイ捨てされている様子はあまり見かけなかった。


●環境美化の意識、街なかのゴミ箱

香港市街の歩道を歩くと、あちこちでゴミ箱を見かける。繁華街の表通りでは5分歩くごとに1、2個は必ず見かけるくらい、ホントに多い。また、それとともにそんな人通りの多い歩道の路面をよく見ると、日本の道路のようにタバコの吸い殻のような細かいゴミがあまり落ちていないことにも気付く。街のゴミ処理のマナーが徹底されていて、環境美化の意識もそれなりにあるということか。
過去に中国を旅した人の旅行記をいくつか読むと、例えば広大な中国本土で鉄道に乗車したさいには、車内で食べた弁当の空容器などは窓から投げ捨てるのが一般的なマナー、というような日本では考えられない行為がふつうに行なわれているという記述もあったため、香港もそんな感じなのかと想像していたのだが、実際は意外と清潔であった。これはやはり中国よりはそれに返還される前のイギリス統治下の頃の名残なのだろうか。僕はまだ訪れたことはないが、欧州のほうが地球環境への意識は比較的高い傾向にあることは媒体でよく見聞きしているため、その影響で香港ではゴミ処理が意外と適切に行なわれているのかな、とそこそこ感心した。香港特別行政区は世界的にも比較的狭い土地面積のなかで急速に発展してきているから、ある程度の秩序が成り立っていないと約700万人もの住民がこの一か所で一緒に暮らしにくくなるから、ゴミ処理や環境美化政策も比較的進んでいるからなのだろうけど。
また、街歩きのなかでいくつかの公園や香港島にある動植物園にも立ち寄ってみたが、それらの場所でも日本の公園でよくあるベンチ前にタバコの吸い殻が残されているような様子を見かけることはなく、清潔な状態が保たれていた。その公園内の清掃や植物・植え込みの手入れをする人も日本の公園に比べると多かった。環境美化に相当の時間とお金をかけているな、ということはゴミがほとんど落ちていない様子を見ればわかる。
ただ、人通りが少ない裏道ではゴミもよく捨てられていてそこそこは汚れていることもあり、日本も香港も含めたこの世に生きる人間は全員が全員善い人ばかりとは限らない、という世界共通の残念なことも改めて感じた。

●犬は家族の一員?

犬については、九龍のネイザン・ロードや香港島のトラム沿いの繁華街では見かけなかったが、香港島の標高100~200mあたりの高台に林立している高層高級マンション周辺や、ヴィクトリア・ピーク周辺の高級住宅地のあたりで散歩中の飼い犬はよく見かけた。
やはり、比較的お金も時間も土地もあるような富裕層の人たちの娯楽という感じで犬も飼われていることが多いようだ。しかも散歩のためにリードでつながれている犬を見ると大型のものが多く、日本で近年よく見られる胴長短足で猫とほぼ同じ体格の小型犬は見かけなかった。僕は犬には疎いので犬種の判別はできないが、とにかく人間の6、7歳くらいの子どもよりは明らかに体重がありそうな大型犬ばかりだった。
でもよく考えると、日本ではそんな大型犬はマンションのような集合住宅では飼えず、比較的広い面積の一軒家で飼われているが、基本的にマンション暮らしの人が多い香港人は普段犬をどう飼っているのだろうか? やはり室内に入れて人間の家族同然の感覚で一緒に暮らしているのだろうか。そうなると、日本の一軒家のように屋外で番犬感覚で飼うことはできないから、香港では「(マンションで)犬を飼うということは、当然家族の一員として迎え入れる」という前提条件があるのか、と僕は勝手に推測する。
それと、ヴィクトリア・ピーク周辺の犬の散歩コースになっているような歩道では、犬の糞専用のゴミ箱もあった。その“糞箱”は大きな家にある郵便受けくらいの大きさの縦型で、なぜかオレンジ色の目立つものだった。日本ではスーパーマーケットのレジ袋や透明のポリ袋に糞を入れて処理していることが多いが、香港も同様の片付け方なのだろうかと(あまり見たくはないが)試しに上蓋を空けて確認してみると、新聞紙やチラシに糞を包んで捨ててあった。さすがに糞を裸のまま丸ごと捨てているわけではなく、人間の出すゴミと似たような捨て方であった。
ちなみに、犬以外の哺乳類では猫も何回かは見かけたが、犬のように誰かに飼われている感じではなくほぼ野良猫のようだった。

●タバコの扱い方、比較的目立つ女性の喫煙

公共交通機関のなかでの喫煙は罰金を設定して厳しく禁じているが(下記の「違反行為とその罰金」参照)、通常の街地では老若男女問わず、タバコを吸っている人が多い。
喫煙者を見て思ったのは、日本に比べると若者、特に20~30代くらいの若い女性の喫煙率が高いことだ。街角の露店やセブン‐イレブンなどでも漏れなく販売していて買いやすいということもあるのだろうが(新聞とタバコのセット販売もやっていた。3ドル)、屋外ではホントに喫煙者をよく見かけた。4、5人に1人は吸っていたかな。
吸い終わったタバコは路上にポイ捨てはせずに街のそこらじゅうにあるゴミ箱の上に設置されている円形の吸い殻入れに入れているのはよいのだが、通行人の多い繁華街であっても歩きタバコをしている人が多い。しかも、ふつうは対向してくる人がいる場合はそれを気遣って先端の火が点いている部分を対向者から遠ざけるものだが、香港人はそういう素振りをすることがほとんどなく、だからどうした、(歩きタバコをしていないふつうの)非喫煙者のほうが火を避けるもんだろ、近付くと火傷するぜ、というようなカタチで通行が成り立っていた。
ちなみに、僕は普段日本でもこういう無意味に偉そうで理不尽な行為が断じて許せないタチで、日本に限らず世界共通の愚行というか犯罪だと思っている。だからほぼ毎回、火の点いたタバコを持ちながら対向してくる喫煙者のほうにあえて向かって歩いて、タバコの火を向けてくる“先制攻撃”を僕のほうも拳や肘や片手デコピンで“迎撃”して、歩きタバコという愚行の撲滅に努めている。外国のような他所の土地では基本的には郷に入ったら郷に従うべきなのだろうが、世界じゅうの誰が見ても納得はいかないであろう歩きタバコのような愚行は地元に遠慮せずに対抗していくべきだろう、と香港でも思ったため、この街でも日本同様にそれをやってもかなりの効果はあった。でも僕がそんなささいな抵抗を加えても、香港の歩きタバコ人口は日本よりも断然多いな。
しかも、若い女性も歩きタバコを躊躇なく当たり前のようにやっていて、火の点いたタバコを持った腕をブンブン振りながら歩道を闊歩する様子をよく見かけた。もちろん男性のそれを見ても残念に思うのだが、日本女性の約3倍の香港女性が歩きタバコをしていたのを滞在中毎日見ると余計ショックだった。最近、アメリカのハリウッド映画にも進出して活躍している映画俳優のチャン・ツィイーのような、アジア出身の若い女性、通称“アジアン・ビューティー”が世界的に、特に映画やファッション業界でよく持ち上げられているが、それは黒髪や小顔や細身の体型のような外見のみならず、普段の東洋人独特の仕草の奥ゆかしさというかしなやかさも含めた神秘的な印象が高く評価されているように思う。だが、歩きタバコはどう考えてもそれには含めることは到底できない、美しい仕草とは言えないよな。せっかく欧米で評価されているのに、そこから訪れている観光客がそれを見ることによって香港女性は無駄に評価を落としている気がして、もったいない、と残念に思う。

●違反行為とその罰金

香港の交通機関を利用すると、禁止事項の注意を促すシールがよく貼られていた。例えば地下鉄の車内で飲食をすると罰金が最高で2000ドル(約3万4000円)、地下鉄やトラムの車内で喫煙をすると同5000ドル(約8万5000円)と書かれていた。
また、公園内で鳩などの野鳥に餌をやると1500ドル(約2万5500円)の罰金、というポスターも掲示されていた。これは感染症の予防のために設定しているとのことで、やはりここ数年世界各地(特に欧州)で流行っている鳥インフルエンザの影響だろう。これらの欧州的な罰金刑を設定しているからこそ、香港は意外と秩序が保たれているのだな、ということを垣間見ることができた。
でも、違反者を実際に取り締まっているのだろうか? と少し気になる。日本の各自治体でも最近は都市部の駅前や繁華街の歩きタバコとポイ捨ては禁止、違反者は罰金を徴収するからな、と条例で制定したとよく謳ってはいるが、実際に違反者を取り締まっているところを僕が見たことはなく、有名無実化していることが多い。そんな中途半端な決め方・取り締り方では歩きタバコなどの愚行を繰り返す輩は一向に減ることはない。
香港のように、取り締まりをさらに強化し、ゴミ箱もある程度は設置して街の美化に努めるべきである。罰金も甘いな。少なくとも香港以上の金額、例えば10万円以上に設定して、もっと法的拘束力を強めるべきだ。
ただ、そうやってゴミ箱を設置すると、そこに爆弾や薬物を置き去りにしていく無差別テロ行為を助長させるため、最近は鉄道駅でも街でもコンビニエンスストアでもゴミ箱を撤去する方向に進んでいるが、あまりになさすぎるというのも街の汚れがひどくなるように思う。ゴミ箱の数もそこそこは必要なのかな、とも考えてしまう。
JR東日本の東京都管内によくある透明ゴミ箱のようなものもある程度は必要だな。理想としては一人一人がゴミを家まで持ち帰るようになることなのだが、生ものの包装のような水分を含んだゴミなんかをいちいち運ぶのは抵抗があるから、そう簡単には物事は運ばないよね。
でもまあ国・地域を問わず、違法行為への罰金を設定するだけでも犯罪というか秩序の乱れを抑止することにはつながるだろうけどね。そのような街地での取り締りが最も厳しいとよく聞くシンガポールにも一度行って確認しておきたいなあ。

●日本人旅行者の愚行

香港に行ったということであれば、ふつうは香港人のことがおおいに気になるべきところなのだが、外国を旅すると実は地元の人以上に僕と同じ日本人の旅行者の動向のほうが悪い意味で気になることが多く、今回もその傾向にあり、しかも僕と同年代かそれよりも若い年頃の旅行者の愚行が目立った。その事例を以下に3点挙げておく。

まず、椅子やベンチなどにではなく地べたに座る、いわゆる“ジベタリアン”について。香港島のセントラルやヴィクトリア・ピークの展望台付近で見かけた。香港市街を歩くと観光客向けというわけではないのだろうが意外とベンチのような座るところが公園以外にも結構あり、地元の人も他所からの旅行者もよく利用している。僕もよく利用していた。しかし、そうではないそこそこ人通りのある場所のそばでも若い男子が平気であぐらをかいて座っていることがあった。で、なぜそれが日本人とわかるかというと、喋っている言葉が日本語だったり、座りながら見入っているガイドブックを素通りしながらチラッと見ると日本製だから。観光スポットの所在確認などはべつに座らなくてもできるだろ、と思うのだが、そのほうがラクなのかね。羞恥心よりも先に自己満足の意識のほうが先に働くのか。
まあアジアでももう少し西のインドやネパールのような比較的時間の流れが穏やかな国に行けば道路脇や鉄道駅などで(特にやることもなく)地べたに座る人もいるのだろうが、香港の中心地は日本で言うところの東京都中央区や港区のような大都市で、そういう行為はふさわしくない場所であることにふつうは気付くもんだと思うけどね。地元の人や日本以外の他国からの旅行者で地べたに座る人なんか一度も見かけなかったので、他人事ながら同じ日本人として恥ずかしかった。

次に、トラム(路面電車)の車内で大声を出していた人。僕が香港島北部を横断する2階建てトラムにハマッたことは以前書いたが、そのなかで一度、2階最前列の最も見晴らしの良い座席に陣取っていた日本人男子グループが比較的大きな声で喋っていたことがあった。もちろん地元の人たちもふつうに喋ることはあるが、それよりも一、二段大きな声で喋っていた、というか騒いでいた。日本にはない乗り物とそこからの風景なので少々興奮することはわかるし、僕もこの乗り物は初体験だったので彼らと同様に興奮したが、それでも基本的には乗客の大半は地元の人たちであるその車内の雰囲気が大声を出すのにふさわしくない場であることはすぐに察することができる。だが、彼らはそんな素振りもなく延々と大声で陣取っていた。
ただ、これがヴィクトリア・ピークの山麓と山頂駅を登下降するケーブルカーのような「ピークトラム」であれば、これは利用客の大半は他所からの旅行者で、異国での印象・感想述べ合い合戦がつい弾んでしまうのも無理はない。だが、地元の人が主の公共の空間で騒がしくするのはいかがなものか。これは自分たちの殻に閉じこもって周囲の様子に気付く力が足りなくなる、複数人で行動することの典型的な悪い例だ。
そのときは2階後方の座席に地元の人に混じってこぢんまりと座っていたひとり身の僕としては、彼らがうるさくしていて申し訳ない、と地元の人たちに心のなかで謝りながらのこれまた恥ずかしい気分であった。僕が彼らと同じ日本人であることを悟られないように、地元の人たちが降車するまではほとんど顔を伏せたままだった。だって彼らがワッとかギャッとか一瞬特に大きな声を出すと、地元の人が「なんだ? アイツら」という感じで度々振り向き直すくらいだったから、地元の人たちにとっては相当物珍しい(そしてはた迷惑な)ヤツらとして映っただろうな。

そして、ヴィクトリア・ピーク展望台での写真撮影のこと。ピークトラムの山頂駅から徒歩約1分のところに、香港島北部の街並みを見下ろせる観光客向けの展望台があり、各国の人々がひっきりなしに訪れていた。僕はここで昼・夜両方の景色を合計1時間ほど楽しんでいたのだが、そのさいにカメラ片手にここを訪れる人たちを観察すると、全体の約1~1.5割が日本人だった。
そのなかで、これまた日本人男子なのだが、街並みを背景に写真撮影をするさいに、谷側の被写体(友人)をできるだけ良い写り方にしようと苦慮した結果なのか、山側の床よりも1mほど高いところにある手すり部分に登って撮影していたヤツがいたのだ。その気持ちはわからなくはないが、それはほかに撮影している集団が終わってから登らずに撮影すればよいだろう、と思う。日本の自然のなかでもできるだけ良い構図で撮影したいがために登山道や木道から外れて高山植物などを狙うことに躍起になるアマチュアカメラマンのように自己満足が先行して見境がなくなる、言い換えると日本人は物欲が激しいがために自己中心的な行動に陥るという傾向があるのだろうか。他国の人から日本人すべてがこんなことをやるのか、と思われるのはイヤだな。

もちろん、他国からの旅行者は先客と同じ位置で撮影したい場合はそんな愚行はやらずに紳士的にその人たちの撮影が終わるまで待っていた。これがこういう場所の基本的な振る舞い方なのだが、日本人の場合は時間的にあまり自由な行動ができないパックツアーで訪れている人が多く、
「時間がないので、次に行きますよー」
という添乗員の指示がすぐに飛んでくるため、その短い観光時間のなかでできるだけ良い写真を撮りたいがためにそういう行動をしてしまうのだろうか、と少しは同情もするが、でもやはり客観的に考えると手すりに登るという行為は紳士的ではないよね。

上記の3点に共通することは、いずれもやっていたのが僕と同年代かやや若めのおそらく20代のフリーターもしくは大学生の卒業旅行風の男子だったことだ。これらはホントに欧米からの旅行者は誰もやっておらず、若い日本人独特の行動であった。日本人旅行者の立ち居振る舞いというか良識が年々廃れていることの表れなのだろうか。これらの行為によって日本人の評価が無駄に落ちているであろうから、非常に残念に思う。今度、日本人はそういったふざけたヤツらばかりではなく、ふつうにまともに旅しているヤツもちゃんといるんですよ、と誤解を解くというか弁明するために世界各国の主要観光地を行脚したほうがよいのかな? とさえ思ってしまうよ。そのくらい同じ日本人としてつい目を逸らしたくなる愚行が香港でも目立った。ホントはいずれの行為も一言注意したほうがよかったのだろうが、彼らの彼らなりに楽しんでいる旅の時間をぶち壊すことになるし(僕も他人からそれをされたくない)、僕が日本語で注意すると僕も日本人であることがわかり、結局は地元の人から僕も彼らと同類に見られるのがイヤだったため、つい二の足を踏んでしまった。
香港以外でもこういう行ないが繰り広げられていることを想像すると、彼らとほぼ同世代の、もっときちんと旅したい僕としては重ね重ね残念に思う。世界のどの国・地域でも、ふつうに考えると控えるべき行動であることがわかりそうなもんだと思うけどなあ。


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