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安息香酸とは何か?

化学物質を毛嫌いしているわけではありません。人間の体も化学物質で作られているのだから。人間の体は、それぞれの化学物質がその量や働きを微妙に変えながら複雑な仕組みで創られています。
異質な化学物質がその微妙な関連性に影響を与えることがないかどうか用心しないといけないと考えているだけです。
単独の化学物質について調査して、その働きについてのデータの蓄積はかなりできているけど、工業的に複数の化学物質を組み合わせて製品化した化学物質が「ある化学物質」に反応して思いもかけない化学物質に変化することがあるが、そのあたりの研究はまだできていない。いや、最初から予測して新しい化学物質を作ることは不可能かもしれない。
ある食品添加物が添加された製品に別の目的で違う化学物質を添加して販売することは日常的に当たり前に行われている。それぞれの添加物は基準値以下で安全とされているが。

国際化学物質簡潔評価文書として安息香酸および安息香酸ナトリウムについて詳細なデータが出されている。世界保健機関が1980年から国際化学物質安全性計画(IPCS)という活動を行っている。この報告は、日本の国立医薬品食品衛生研究所安全情報部 が2007年に翻訳して公表している。 これを読んでみた。

〇化学的な安息香酸の仕組みを見てみる。
安息香酸(CAS No. 65-85-0)は、白色の固体でわずかに水に溶ける。安息香酸ナトリウム (CAS No.532-32-1)の水に対する溶解度は、安息香酸の約 200 倍である。安息香酸は、フェノール(世界生産量の 50%以上)やカプロラクタムをはじめとする各種化合物の合成中間体として用いられる。他の最終産物には、安息香酸ナトリウムや他の安息香酸塩ベンゾイルクロリド、ならびにエチレングリコールジベンゾアートジプロピレングリコールジ ベンゾアートといった可塑剤などがある。

〇何にどのくらい使われるのか?報告書から抜粋する。
主に保存剤防錆剤。安息香酸および安息香酸ナトリウムは食品保存料としても用いられる。もっとも適した用途は天然の酸性食品・果汁・清涼飲料など
安息香酸は、多くの植物や動物中に天然に存在する。従って、乳製品をはじめとする多くの食品の天然成分である。数種類の食物に天然に含まれる安息香酸の濃度は、平均で食品1 kg中40mgを越えることはない
しかし、安息香酸の世界生産量は年間 600000トンと推計される。安息香酸ナトリウムの1997 年の世界生産量は約55000~60000トンと推計される。安息香酸および安息香酸ナトリウムの、主として水域や土壌といった環境中への人為的放出は、保存料としての使用によるものである。 保存料の目的で食品に加えられる安息香酸や安息香酸ナトリウムの最大濃度は、食品1 kgあたり2000mg(2g)の範囲と報告されている

〇体の中に入るとどうなるか?
安息香酸および安息香酸ナトリウムは速やかに胃腸管から吸収され、肝臓でグリシン抱合を受け代謝され馬尿酸となり、速やかに尿中排泄される。
あくまで高濃度投与の場合ですが、
ラットに高濃度(≧1800 mg/kg 体重)で 5~10 日間給餌した短期試験では、中枢神経系の 異常(安息香酸、安息香酸ナトリウム)や脳の病理組織学的変化(安息香酸)が認められた。そ の他に、体重増加量の抑制、臓器重量の変化、血清値の変化、肝臓の病理組織学的変化などもみられた。発がん性は見つかっていない。

〇安息香酸および安息香酸ナトリウムは、摂取量が基準以下なら安全みたいです。これらを含む食品を大量に飲食をする場合は別ですが・・・。
しかし、じんま疹や喘息を頻回に起こす患者では症状やその悪化が観察されている。また、皮膚への軽度の刺激性と眼刺激性を有する。 健康な人にはほぼ影響がない。
としています。

〇環境への影響はどうなのか?
物理的・化学的性質から、安息香酸および安息香酸ナトリウムが水中および土壌中から 大気中に蒸発する、あるいは底質や土壌粒子に吸着することはないとされる。では廃棄されたりしたこの物質はどこに行くのか?
幾つかの 分離微生物(細菌、真菌)が、嫌気性あるいは好気性の条件下で、安息香酸を利用することが知られている。その生物濃縮に関する実験データから、低度から中程度の生物蓄積性が考えられる


〇日本の使用基準は?公益財団法人 日本食品化学研究振興財団の資料を見た。
使用できる食品
・キャビア・・・2.5g(2500mg)/kg  ・マーガリン・・・1.0g(1000mg)/kg  
・清涼飲料水,シロップ,しょう油・・・0.60g(600mg)/kg 
安息香酸ナトリウムの場合のみとして
菓子の製造に用いる果実ペースト (果実をすり潰し、又は裏ごしして ペースト状にしたもの) 菓子製造に用いる果汁(濃縮果汁 を含む)・・・1.0g(1000mg)/kg 
使用制限として
マーガリンにあっては、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム又 はこれらのいずれかを含む製剤を併用する場合は、安息香酸としての使用量およ びソルビン酸としての使用量の合計が 1.0g(1000mg)/kg以下 
としている。

別の理由で危惧される問題が生じています。
平成18年7月28日、厚生労働省医薬食品局食品安全部課長が出した文書があります。
「」内抜粋。
「本年春以降、英国等諸外国*で、清涼飲料水中の安息香酸(保存料)とアスコルビン酸(酸味料、酸化防止剤)が、ある条件下で反応しベンゼンが生成すること、市販製品中にベンゼンが低濃度検出されること等が公表され、英国等ではベンゼン10ppbを超える製品の自主回収が要請された。
 
この時、日本国内では、安息香酸とアスコルビン酸の両者が添加されているものが31品目あったが、日本にベンゼンに対する規制基準値がないため、「WHO飲料水ガイドライン(第3版)」 と我が国の水道法を参考に10ppbを超えてベンゼンが検出された商品1品目について自主回収を要請しています(製品名アロエベラ )。 

ベンゼンとは?(上記文書中の説明)
「ベンゼンは、染料、合成ゴム、合成洗剤等の製造時に使用される化学物質で、常温では無色の液体です。また、環境中に広く存在しており、自動車の排気、石炭や石油の燃焼で空気中に排泄されており、呼吸によって摂取されています。また、喫煙による摂取についても指摘されています。
 ベンゼンの健康影響に関しては、本物質は、IARC(国際がん研究所)が、「ヒトに対して発がん性がある」(グループ1)として分類しています 。」

アスコルビン酸とは?
アスコルビン酸(ビタミンC)は、果実などに含まれる必須栄養素の一つで、栄養強化や酸化防止を目的とした食品添加物としても使用されています。我が国では1957年に「L-アスコルビン酸」として指定されています。

参考:工業的製法
化学式 C6H5COOH 。安息香 (天然樹脂の1つ) 中に存在する。融点 122℃。無色針状または小葉状の結晶。無臭かベンズアルデヒド様の臭いがする。工業的な製法。
トルエンを塩素化し,ベンゾトリクロリドとし,次いで加水分解するか,無水フタル酸を水蒸気とともに熱した触媒の上に通して得られる。
トルエンの空気酸化によっても製造。トルエンを硝酸または二クロム酸カリウムで酸化して得られる。

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