和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

黒川の春告げ笛

2021-05-22 | 本棚並べ
ちょっと、『能』についての古本が目につくと
その都度買っております。
「黒川能の世界」(平凡社・1985年)も、そんな一冊。
写真入りの本です。はじまりに『春告げ笛の頃』という文が
ありますので、紹介がてら引用。

「・・庄内平野・・日本海から吹きつける吹雪が、
横なぐりにこの平野を吹き抜け、月山にぶつかって吹き溜る。
その麓に位置するのが黒川である。鶴岡から南へ8キロほど
入った東田川郡櫛引町の村落である。・・」

はい。この本の最後には、黒川能役者名鑑として、
学校のアルバムのように、一人一人が免許書の写真サイズに
紹介されています(白黒写真)。
黒川能をささえる役者衆152名の氏名・生年月日・役どころ
が写真下に紹介されておりました。

最初の文にもどります。そのおわりの方にこうあります。

「毎年4月のはじめ・・・黒川の門笛は獅子を連れて
一軒一軒ていねいに村を巡ってゆく。

村境にいたるとその土地への挨拶の一曲、
・・墓原の縁に佇んで一曲。・・
路傍の祠の前、村の字々の小社の前、
千年の松といわれている巨木の前、
馬頭観音の前でまた一曲。
それに合せて獅子頭もぱくぱくと風を噛む。

« 流し »と呼ばれるその曲は、りょうりょうとして若やかで
・・・・
この笛が通っていったあとには、まるで農事をうながすように、
やさしく田打風も吹きはじめる・・・
笛は塗りの美しい黒漆の竜笛であった。・・

家々では門笛がやって来ると、盆にいっぱいの米を用意し、
連れている獅子に頼んでいろいろと邪気払いに噛んでもらう。
目を閉じて坐るお年寄り、逃げ腰の幼子まで、
病気をせぬよう、幸せが来るようひとしく祈るのである。」
(p25~27)


はい。この本が1985年に出版ですから、
今の黒川能はどのようになっているのでしょう。
役者名鑑の人たちは、どうしているのでしょう。

この本は、どうも紹介本のようで、ほかに、
重要な黒川能へと導きの本があるようです。





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2 コメント

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Unknown (kaminaribiko2)
2021-05-22 11:49:06
歌人の馬場あき子さんの著書に黒川能のことを詳しく書いたものがあったように記憶します。
返信する
この本 (和田浦海岸)
2021-05-22 12:10:05
こんにちは。カミナリビコ2さん。

この本の表紙には
馬場あき子・増田正造・大谷准
と3名の名前がありました。

目次の署名をみると
「黒川の祭りと四季」は
馬場あき子・梅津英世・春山進と
連名です。
つぎの「黒川の能と狂言」が増田正造。
あとの「黒川の人びと」が大谷准。

となっておりました。最初の章は、
馬場あき子さんが、いろいろと
聞き書きしたものを文章にまとめた
というような感じなのでしょうか?
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