和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

テキストと装丁。

2022-02-06 | 本棚並べ
「 装丁 田村義也 」が印象に残っていた
「安岡章太郎対談集」全3巻(読売新聞社・1988年)。

はい。だいぶ以前に購入してあった本です。
もちろん、読んでなんかおりませんでした。
たまたま、安岡章太郎著『流離譚』を読み、
それから、興味をもち購入してあったもの。

はい。この3巻本の対談集は、
安岡・司馬遼太郎対談以外は未読でした。
ということから話をはじめます。

装丁が田村義也。表紙カバーと、
めくって、とびらの装丁が、カバーの前後を
別々に小さくしたデザインとなっております。
うん。表紙カバーもそうなんですが、
ひらいて、とびらページを見ると、
なんだか、息をのむようなハッとした感じになる。
はい。この装丁が好みで買ったようなものでした。
そう、今になってみると、思えてくる不思議。


ここから、連想がひろがりました。

本体と、それを包みこむものと、
神社のことが、思い浮かびます。

ここには、チェンバレンとヒュー・コータッツイ卿の
二人に登場していただきます。
まずは、チェンバレンから。

「明治時代の38年間日本に滞在していた英国人
 バジル・ホール・チェンバレンが、『日本事物誌』(1890年)
 のなかで、以下のように記しています。

  神道の社殿は、原始的な日本の小屋を少し精巧にした形である。
  神社は茅葺の屋根で、作りも単純で、内部は空っぽである。

 伊勢神宮についても、こう述べます。

  観光客がわざわざこの神道の宮を訪ねて得るものがあるかといえば、
  大いに疑わしい。檜の白木、茅葺きの屋根、彫刻もなく、絵もなく、
  神像もない。あるのはとてつもない古さだけだ。  」(p89~90)
   ( 錦正社「神道とは何か」の牧野陽子さんの文のはじまり )


つぎは、佐伯彰一著「神道のこころ」にある「日本人を支えるもの」
から引用します。

「わが国の数多い神社のローカル、いわば自然環境とその簡潔な結構は、
やはり宗教的傑作の一つではないだろうか。おのずと美的秩序があり、
浄らかな奥床しさ、厳かさが伝わってくる。
しかも事々しい押しつけがましさ、勿体ぶった威圧感がまるでない。

イギリスのヒュー・コータッツイ卿は、先ごろまで駐日大使をつとめた方で、
日本に関する幾冊かの著書もある知日家文化人だが、初めて日本に来たのは、
戦後間もない1946年だったという。占領英軍の一員として来日した時、
神道については『非常に嫌疑的』で『日本人の起源伝説や皇室の存在が
自明のこととされていることに軽蔑の念すら抱いた』。

神道は、あまりに素朴、原始的で、
『農耕生活に裏打ちされた精霊信仰の時代錯誤のもの』
としか思われなかった。ところが、たまたま最初の駐在地が、
岩国の空軍基地だったせいで、宮島を訪れ、
厳島神社にふれる機会が生じて、一気に考えが変わった。

『神道の美的要素』について『眼開かれた』思いを味わい、
『社とその環境の美と調和は、私に強烈で不変な印象をもたらした』。
それから、翌年、日本海の米子に『移動』して、出雲神社を訪れる
ことになり、いよいよこうした思いを強めたと書いている。」
(p57~58・文庫本はp61~62)


はい。神道と、それを包みこむ社と森と。
それが、私の本と装丁からの連想でした。


持っている、安岡章太郎氏の対談集は、
本棚にある間に背文字が変色してきて、
その分、お気楽に頁をめくれるような、
そんな気がしてきました。読み頃です。



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4 コメント

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Unknown (びこ)
2022-02-06 15:53:49
私などが読み得ない素晴らしい本の内容をご紹介くださり、ありがとうございました。
返信する
こちらこそ。 (和田浦海岸)
2022-02-06 16:07:12
こんにちは。びこさん。

こちらこそ、読んでくださることが、そのまま、
励みとなります。ありがとうございます。
返信する
こんばんは(^^♪ (のり)
2022-02-06 17:26:42
「息をのむようなハッとした感じになる」ような装丁!!??から、本体とそれを包み込むようなものへの連想・・・さすが豊かな学識に裏付けられた知性・・・と驚いております・・・
神道とは・・・いよいよ始まりましたね・・・
返信する
ご勘弁ください。 (和田浦海岸)
2022-02-06 22:19:55
こんばんは。のりさん。

コメントありがとうございます。
この対談集の田村義也氏の装丁は、
ひらくたびに、ハッとさせられ、
今回も新鮮でした。
表紙をめくって、黒い色紙のような
見返し(遊び)をさらにめくると、
とびらに、そのデザインがありました。
うん。はじめて、ひらいた時と同じです。
まあ、そんな感じがありました。

さてっと、のりさんからちょくちょく
コメントをいただいているので、
こちらも、気さくに語らせていただきます。

「褒め過ぎたるは、貶し過ぎたるが如し」
詩を読んでいる門前の小僧に、
過分な誉め言葉は禁物です。
せいぜいが、門前の叩き売りの口上に
過ぎませんので、
どうか、ほめ言葉はご勘弁ください。

ということで、これからも
よろしくお願いします。
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