和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

竹中郁の詩と『 地上の星 』

2024-04-12 | 詩歌
NHK新プロジェクトX。録画して初回を観ました。

あたまライト・尾っぽライト。
じゃなかった、中島みゆきのヘッドライトテールライト。
その歌詞は『 語り継ぐ人もなく 』とはじまってます。

『語り草』も60~70年をめどに、曖昧となり忘れらてゆくそうです。
ということで、関東大震災も、百年過ぎました。
新関東大震災の方が、やけに身近に感じられる。

ここでは中島みゆき『地上の星』と、
竹中郁『詩集 そのほか』との比較。

竹中郁は、戦後の月刊児童詩誌『きりん』を刊行しつづけておりました。
足立巻一は、それを指摘してこう書いております。

「 子どもの詩を読むことが自分の詩を作るよりも
  しあわせだったといわれます。戦後30数年間・・・・

  先生は第8詩集を『そのほか』と題されました。
  子どもの詩を読むことが第一で、自作の詩は余分の
  ことだという考えから名づけられたのです。・・・  」

     ( p163 竹中郁少年詩集『子ども闘牛士』理論社 )

この『詩集 そのほか』(1968年)を今回とりあげます。
その詩集のなかに、『地上の星』と題する詩があります。

この詩集のはじまりは、詩『考える石』でした。
その詩の最後の数行を引用してからはじめます。

「  點(つ)きにくいマッチをすって
   きみに近ずける
   きみの石英質は 長石は 雲母は
   かがやいた まばたいた そしてもの云いたそうだった 」

二番目の詩は「見えない顔」。戦後のラジオの
『尋ね人』の時間をとりあげた詩でした。その最後の2行。

「 ラジオの『 尋ね人 』の時間のなかの
  あの 見えない顔 顔 見えない顔   」

この詩集の三番目の詩はというと
『 三いろの星  組詩のこころみ 』となっており、
はじめが『 押入れのなかの星 』
二番目が『 地上の星 』
さいごが『 夜の星 』でした。

うん。竹中郁の詩『地上の星』を引用したいのですが、
それは最後引用するとして、その前に詩集のなかにある詩『別世界』。
ここには、『つばめ』が出てくるのでした。
ここには、断片的に引用しておきます。

  ゆきずりの郵便局の窓口で
  はがきを求める

  ・・・・・
  さて どこといって差出す目当もない
  それなのに はがきに書く
  佇ったまま 手当たり次第の台にもたれて

  『 つばめになれ 鳩になれ 』と
  ・・・・・
  ただ なんとなしに書く

  俗事にかまけたおれの躰から
  俗事一ぱいのおれの脳みそから 
  ・・・・・・

  ポトリと落しこんだ投函口の奥は暗いが
  そこは果しのない大宇宙
  そこには行ってみたい星もある


はい。最後になりましたが竹中郁の詩『 地上の星 』の全文。

     地上の星    竹中郁

  こちらで振る
  踏切番の白いランプ
  あちらで答える
  もう一つの小さな白いランプ
  どしゃぶりの雨のなか
  話しあっているようだ
  うなずきあっているようだ
  やがて来る夜更けの電車を
  夜更けて帰りの人人のいのちを
  いのっているようだ

  ね ここに一人のぼくがいるよ
  雨とくらやみとにまぎれて
  それとなく見つめているぼくだよ
  ぼくも振っているんだよ
  ランプの話しあいに加っているんだよ
  ランプのいのりに加っているんだよ
  黒い蝙蝠傘を
  大きく大きく打ち振っているんだよ
コメント (2)
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