12月に入って最初の土曜日、GRFさんのお宅を訪問してきました。訪問は、2021年の1月以来ですから、約2年ぶりです。当時はコロナ禍に入って1年経過した頃でした。崎陽軒の弁当を別々の部屋で食べたことが、随分と昔のことのように感じられます。以降、ブログや共通の知人を通じてシステムの進化の様子を伺っていましたが、漸く、実聴する機会をいただけました。オーディオは実際に聴かないと始まらないと分かりません。最寄り駅に向かう地下鉄で、GRFさんからショートメッセージが入りました。まずご近所の蕎麦屋さんで腹ごしらえすることとなりました。
蕎麦の前に、おつまみ、小料理を日本酒と共にいただきました。聴く前に飲むと音が分からなくなる・・・といった心配を脇に置きました。土曜日の昼からお酒を飲む緩い時間を、近況、オーケストラ、サッカーW杯の話題と共に楽しみました。GRFさんご馳走様でした。
いつものように和室のユニコーンの部屋から始まりました。和室のシステムの写真を撮っていなかったのですが、最近のGRFさんのブログ記事からも判るようにパワーアンプ位置を調整されています。前回訪問時はラックの上にありましたが、今回は畳の上のフローティングボードに載っていました。クラシックの空間表現を追求されている広い部屋と、和室の音を敢えて変えている、とのことでした。もっとも、この日は和室のみならず、広い部屋でも、多くのカジュアルな音楽を聴かせていただきました。
和室の構成は上からSONY/MS-1→Mitner/ma 1dac→MolaMolaのプリ→是枝さんのパワーアンプ でした。オーディオファンが持っていそうな音の良い盤をいくつか聴かせていただきましたが。当たり前のように音が良いので、特段の驚きはありませんでした。SACDは全てCD層での再生です。
ここからが本番です?六角精児と鳥羽一朗は、前回、広い部屋で聴かせていただきました。 聴感上のノイズの少なさは、相変わらずです。声が素直に入ってきます。なるほど歌詞が入りやすくなるのも頷けました。六角精児の2曲目「愛のさざなみ」は江利チエミの『チエミ・艶歌を唄う』でもかかりました。68年の島倉千代子のオリジナルだったのですね。水原弘も江利チエミも私からするとテリトリー外です。この辺りから、2018年の昭和歌謡オフの様相を呈してきました。歌謡曲で盛り上がれるゲストは少ないとのこと。いくらでもお付き合いします!
この日の個人的な収穫です。コロンビアのシングル盤を集めた『恋すれど廃盤 女性ポップス編』です。GRFさん曰く、「EP盤の音がする」CDです。私も邦楽のコンピレーションアルバムをいくつか持っていますが、流石に60年代後半から70年代前半の楽曲は抜けが多いです。知っているのは半分くらいでしょうか?知っている曲でも、和室の部屋で聴くとこれまで聴いた印象と異なるので新鮮でした。このシリーズは1~3まであります。私も訪問後1週間のうちに、ヤフオクやアマゾンを介して調達してしまいました。
GRFさんと当方の世代ギャップは1回りでは収まらず、2回りでは余りが出ます。この辺りが双方が歩みよった中間地点になります。アン・ルイスのベスト盤はオリジナルとカバーの2枚構成です。「六本木心中」「リンダ」をかけていただきました。テレサテンのCDは香港盤のようで、マニア垂涎の盤のようです。
広い部屋に移動して後半戦となりました。前回の訪問は、コロナで世間が騒がしかったこともあり、短時間かつ広い部屋のみでした。従って前回との比較はこちらになります。前回の再生ではヴォーカル再生の生々しさが印象に残っています。この2年間、コロナで時間が浮いた分、オーディオに向き合う時間がとれたと伺いました。コロナは働き方に大きく作用しましたが、趣味においても同様と言えます。そういった機会をGRFさんが逃すわけもなく、さらなる高みを追求された2年間だったようです。
パワーアンプ2系統(是枝さんのアンプ、SD05)の直下にフローティングボードが敷かれています。GRFさんのブログをご覧になっている方であれば、ご存じかと思います。磁気浮上による床と機器の遮断、水平出し、頑健な内部構造等を追求されたボードです。パワーアンプの振動対策をどうするかは、私自身も関心を持っている事項の一つです。振動対策と言えば、アナログ機器の上流(プレイヤー、DAC、プリアンプ)をイメージしますが、結局はパワーアンプも、という流れになるようです。
アナログプレイヤーへの光カートリッジの導入が、機器面での大きな変化点です。空間表現においてはデジタルに軍配が上がっていたのですが、光カートリッジの導入で、レコードからも空間表現を引き出せたとのことです。光であることは本質ではなく、針先の大きさに依るものと伺いました。加えてリニアトラッキングのアーム、光カートリッジに合わせたフォノイコライザー導入と、積極的にアナログシステムを更新されたことになります。音の良いレコードを多数お持ちのGRFさんならではの取り組みです。
広い部屋では、クラシックと邦楽をデジタル、アナログそれぞれでかけていただきました。フローティングボードの効果か、オルガンの低音の沈みが一段と深まったように感じました。カンターテドミノもそうですが、お馴染みのダラス響のサン・サーンス第3番オルガン付きでは、地を這うような低音に驚きました。低音の安定は、再生音の立体感の表現にもつながっているようです。ヴォーカルの生々しさは前回と同様です。スタジオ録音であれ、ライブであれ目の前でご本人が歌っている感覚となりました。
アナログでも邦楽のライブ盤、スタジオ録音盤を多くかけていただきました。クラシックでは、カラヤンの第9のリハーサル、マーラーの歌曲集(オリジナル盤だそうです)等。森進一、陽水/玉置浩二のライブ盤は勿論、良かったですが、谷村新司のオリジナルアルバム(夜香さん推薦、タイトル失念)の音が凄まじかったです。邦楽ライブ盤、クラシックいずれも、デジタルと同じような音場再生、立体表現が再現されていました。デジタルを聴いているのか、アナログを聴いているのか、忘れてしまうような感覚がありました。
GRFさん、長時間にわたり、2つのお部屋で聴かせていただき、ありがとうございました。2年間、間が空いてしまいましたが、まだまだ登られている様子を拝見することができました。また、1965年~72、73年の頃の歌謡曲の魅力に気づくきっかけともなりました。訪問の成果をオーディオで活かせるかは疑問ですが、音源探しでは大いに活用することになりそうです。これからもよろしくお願いします。