『平安 名家家集切 平安 戌辰切和漢朗詠集』より「藤」紀貫之 含 日本名跡業刊
山種美術館蔵
藤
悵(ちょう うら-む)
四字熟語 悲歌悵飲 (ひかちょういん)
悵望(名)心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。
「七夕の深き契によりて驪山の雲に-すること勿れ/今鏡 すべらぎ中」
『平安 名家家集切 平安 戌辰切和漢朗詠集』より「藤」紀貫之 含 日本名跡業刊
山種美術館蔵
藤
悵(ちょう うら-む)
四字熟語 悲歌悵飲 (ひかちょういん)
悵望(名)心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。
「七夕の深き契によりて驪山の雲に-すること勿れ/今鏡 すべらぎ中」
絵入 好色一代男 八前之内 巻一 井原西鶴
天和二壬戌年陽月中旬
大阪思案橋 孫兵衞可心板
『絵入 好色一代男』【一帖 読了】
八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【5】二十一丁ウ 井原西鶴
申へきや、ひとつとして、いきうつし、殊更(ことさら)風の
はけしき朝、「いかゞ暮する」とて、白ぬめの、着物(きるもの)語り
、又 西陣(にしちん)に、母を一人持(もち)候を、不憫(ふびん)とて、米味噌(こめみそ)
薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、かしこくも、あそばし
ける、貴様も、よろつに、気(き)のつきそうなる、おかた
さまと見えて、一しほ お尤愛(いと)しう、おもふおもふ」なとゝ、
はや、其年に通ふまゝの事共、其相手(あいて)を見て、
是ぞ、都の人たらしぞかし
申すべきや、ひとつとして、生き写し、殊更(ことさら)風の
激しき朝、「いかが暮する」とて、白ぬめの、着る物語り
、又 西陣に、母を一人持ち候を、不憫とて、米味噌(こめみそ)
薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、賢くも、あそばし
ける、貴様も、よろづに、気の付来そうなる、お方
様と見えて、一塩 お尤愛(いと)しう、思う」などと、
はや、其年に通ふままの事共、其の相手を見て、
是ぞ、都の人たらしぞかし
一巻 七 別れハ当座のはらひ
【1】十九丁ウ
別れハ当座のはらひ
茶宇嶋のきれにて、お物師がぬうてくれし、前巾着(まへきんちやく)に
、こまかなる露を、盗(ぬす)みためて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの
若き者をまねき、同し心の水のみなかみ、清水八坂に
さし懸(かゝ)り、此あたりの事でハないか、日外(いつそや)ものがたりせし、
歌よくうたふて、酒飲(のん)て、然も憎(にく)からぬ女ハ、菊屋か
三河屋 蔦(つた)屋かと探(さが)して、細道(ほそ道)の萩垣(はぎかき)を、奥に入れば
梅(むめ)に鶯(うくいす)の屏風床(ひやうぶとこ)にハ誰(た)が引捨し、かしの木のさほに、一筋(すぢ)
切れて、むすぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たはこぼん)に、炭団(たどん)の
埋(うつみ)火絶(たへ)ず、畳ハなにとなく、うちしめりて、心地(こゝち)よからず、
おもひながら、れいのとさん出て、祇園細工(きをんさいく)、あしつきに
別れは当座の払い
茶宇嶋のきれにて、お物師が縫うてくれし、前巾着(まへきんちゃく)に
、細かなる露を、盗(ぬす)み貯めて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの
若き者を招き、同じ心の水の水神(みなかみ)、清水八坂に
さしかかり、此あたりの事ではないか、日外(いつぞや)物語せし、
歌よく歌うて、酒飲(のん)で、然も憎(にく)からぬ女は、菊屋か
三河屋 蔦屋かと探して、細道(ほそ道)の萩垣、奥に入れば
梅に鶯の屏風床(びょうぶどこ)には、誰(た)が引き捨てし、樫(かし)の木の竿に、一筋
切れて、結ぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たばこぼん)に、炭団(たどん)の
埋(うづみ)火絶(たえ)ず、畳は 何となく、うち湿りて、心地(ここち)良からず、
思いながら、例のとさん出て、祇園細工、足つぎに
【2】二十丁オ
杉板(すぎいた)につけて、焼きたるとゝ、おお定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の
薑(はじかみ)に、塗竹箸を取そえ、おりふし春ふく、藤色(ふじいろ)の
りきん嶋(しま)に、わけしりだてなる、茶(ちや)じゆすの幅広(はゞひろ)、
はさみ結(むす)びにして、朝鮮(てうせん)さやの二の物を、ほのかに
、のべ紙(かみ)に、数(かず)歯枝(ようじ)をみせ懸(かけ)髪ハ四つ折(おり)に、しどけ
なくつかねて、左(ひだり)の御手に、朱葢のつるを引提(ひつかけ)、たち
出るより「淋(さひ)しさうなる事かな、少 さゝなど、是より
給(たべ)まして」といふもいやらしく、屢(しば)しハ、実(み)のなき垣(かや)を
荒らして、ありしが、無下(むげ)に捨(すて)難(かたく)、いたゞけば、濱焼(はまやき)の
中程(ほと)を、ふつゝかにはさみて、抑えますかといふ、はしめの
程ハ、たまわり兼(かね)、さらに又、所(ところ)を替(かえ)てとおもふ内に、せハしく
杉板(すぎいた)に付けて、焼きたると と、大定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の
薑(はじかみ)に、塗竹箸を取(とり)添え、折節 春ぶく、藤色(ふじいろ)の
りきん嶋(じま)に、訳 知りだてなる、茶(ちゃ)繻子(しゅす)の幅広(はばひろ)、
挟み結びにして、朝鮮(ちょうせん)鞘の二の物を、ほのかに
、のべ紙に、数(かず)楊枝(ようじ)を見せ懸(かけ)髪は 四つ折に、しどけ
なく つかねて、左の御手に、朱葢のつるを引っ掛け、立ち
給(たべ)まして」と言うもいやらしく、屢(しば)しは、実の無き垣(かや)を
荒らしてありしがが、無下(むげ)に捨て難く、頂けば、濱焼(はまやき)の
中程を、不束(ふつつか)に挟みて、「抑えまする」と言う、初めの
程は、たまわりかね、さらに又、所を替と思う内に、忙しく(せわしく)
出るより「淋しそうなる事かな、少 ささなど、是より
【3】二十丁ウ
銚子(てうし)かえる事あり、興(ふと)腰(こし)つきに え もいはれぬ所ありて
似卜(にぼく)が、やりくり合点(かてん)か、二つ折(おり)の絵(え)むしろに、木枕(まくら)の
音も又おかしく、最前(さいせん)の りきん嶋(しま)うそよごれたる
浅葱(あさき)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人まつけしき
今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、おとなはつかしく
、はづるとハなくに、かくしば楽の事も、一世ながら
くハん様の、お引合(ひきあハせ)、末/″\馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、
やうすが、出来(でき)たらば、近所(きんじよ)にさいはい、子安(こやす)の、お地蔵(ぢざう)ハ
御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とゝ)がするぞ、
機遣(きつかい)をなしに、帯(おび)とけと、ひとつも、口をあかせず
、わるごう有(ある)程(ほど)つくして、物しける、うちときて
銚子(ちょうし)かえる事あり、興(ふと)腰付きに え も言われぬ所ありて
似卜(にぼく)が、やりくり合点(がてん)か、二つ折(おり)の絵むしろに、木枕の
音も又おかしく、最前の りきん嶋、うすよごれたる
浅葱(あさぎ)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人待つ景色
今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、大人 はづかしく
、はづるとはなくに、かく暫くの事も、一世ながら
くはん様の、お引合(ひきあわせ)、末々馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、
様子が、出来たらば、近所に幸い、子安(こやす)の、お地蔵は
御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とと)がするぞ、
機遣(気遣い)をなしに、帯(おび)解けと、ひとつも、口をあかせず
、悪ごう有(ある)程 尽くして、物しける、うちときて
【4】二十一丁オ
後、此女さしうつむいて、物をもいらず、泪(なみた)くみてあり
しを、こゝろもとなく尋(たつね)をれば、二 三度ハ、いはさしが
しめやらなる物こしして、「われ今こそあれ、此跡(あと)も
出替(いでかわり)りまでは、さる宮様(みやさま)かたにありしが、不慮(ふりょ)に
おこゝろを、かけさせられ、すへがすへのわがすむもとに
、しのび入替結ひ、むつましう、語(かた)わし 其歌は
忘(わす)れもやらず、雪(ゆき)のあさ/\と降(ふり)そめし、十一月
三日、かたじけなくも、御手づ から、一かたまりを、「わか
はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた
今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ
其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを
後、此女さし俯いて、物をもいらず、泪ぐみてあり
しを、心許なく 尋ねおれば、二 三度は、言わさしが
しめやらなる物腰して、「われ今こそあれ、此跡(あと)も
出で替わりまでは、さる宮様方に在りしが、不慮に
お心を、かけさせられ、末が末の我が住むもとに
、忍び入れ替え結び、むつましう、語(かた)わし 其歌は
忘れもやらず、雪の あさ/\と降りそめし、十一月
三日、かたじけなくも、御手水 から、一かたまりを、「わか
はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた
今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ
其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを
【5】二十一丁ウ
申へきや、ひとつとして、いきうつし、殊更(ことさら)風の
はけしき朝、「いかゞ暮する」とて、白ぬめの、着物(きるもの)語り
、又 西陣(にしちん)に、母を一人持(もち)候を、不憫(ふびん)とて、米味噌(こめみそ)
薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、かしこくも、あそばし
ける、貴様も、よろつに、気(き)のつきそうなる、おかた
さまと見えて、一しほ お尤愛(いと)しう、おもふおもふ」なとゝ、
はや、其年に通ふまゝの事共、其相手(あいて)を見て、
是ぞ、都の人たらしぞかし
申すべきや、ひとつとして、生き写し、殊更(ことさら)風の
激しき朝、「いかが暮する」とて、白ぬめの、着る物語り
、又 西陣に、母を一人持ち候を、不憫とて、米味噌(こめみそ)
薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、賢くも、あそばし
ける、貴様も、よろづに、気の付来そうなる、お方
様と見えて、一塩 お尤愛(いと)しう、思う」などと、
はや、其年に通ふままの事共、其の相手を見て、
是ぞ、都の人たらしぞかし