池袋演芸場を出ると、三月の雪が降っていた。
3月9日。
オリエント博物館と東京大学の博物館を楽しんだ後、銀座に向かう。
歌舞伎座昼の部(二度目)を楽しむ、外に出ると空は時雨れていた。
銀座から夕刻の浅草に向かう予定だったが、風をひくのはいやだというあんちょこな理由で、予定変更。
池袋に戻り演芸場へ。茶楽さんと夢丸さんの落語を聞くことにした。
夕食は歌舞伎座で簡単に済ましておいた。
急いで演舞場内に入ると、若い女性の落語?或は講談?
机は無かったので、多分落語だと思う。
演舞場内のお客さんは全員が目をつむっておられた。
お客さんの中には7日にみかけたお顔の方も多い。
常連さんが多いんだと知る。
本来!笑うべき(笑わせるべき?)ところになっても みんな目をつむっっておられる。
常連さんの中に興味深い方がいらっしゃった。
目はつむったまま、笑いの箇所になると、静かに毎回三度手をたたかれる。
その姿が優雅で、演じ手に思いやりがある。
この男性は落語を楽しむ名人ではないかと感心した。
茶楽さんと夢丸さんの手はこの日も前回(3月7日)と同様で、優雅な動きと身のこなし方だった。
わたしは落語をほとんど知らないので、演目は全くわからない。
帰りに茶楽さんのお題を尋ねると、『芝浜』(?)と教えて下さった。
常連さんが演芸場出口で、
「茶楽さんの『芝浜』は値打ちものですよ。聞けて良かったですね。」
と話かけて下さった。
そういうと7日、演芸場を出る時にも、
「『文七元結』、いいのを聞けた。いいのを聞けた。」
と、男性も女性もにこやかに声をかけて下さったんだった。
わたしが知らないだけで、三笑亭茶楽さんは有名な噺家さんだったようだ。
演芸場を出ると雪が舞っていた。
三月の雪。東京では珍しいことだろう...。
雪は時雨、雨に変わる。ことのほか寒い。
雨でぬれた交差点は町の池のように見え、ネオンを反射させる。
人々は身をちぢめ、傘でさす。
信号を待つ律儀な時間。
透明なビニール傘をさしたカップル。
あけすけに見えた姿も男女にとっては二人の世界。
池袋にはグリーン通りあり。
歩道の真ん中の木、木、木。
どこか異国の香りがする。
俺様にだって、言い分があるんだ!
...と、言わんばかりの、顔。
雨はまた雪に変わり、寒さを増す。
ビル脇には優れた段ボールの寝屋。
安部公房がカメラを持って街を歩いた姿を...
ワープロに打ち込んだあの作品を思い浮かべる。
結局三泊だけの東京で池袋演芸場には二度行った。
茶楽さんの落語をもう一度聞きたいと思う気持ちは大きい。
今もあの優がな話し振りの余韻は消えない。
とりとめもない記録を最後までお読み下さいまして、感謝申し上げます。
ありがとうございました。
歌舞伎8日の、朝・昼・夜の部と9日昼の部の感想は、後日まとめて記録する予定です。
よろしくお願い申し上げます。