乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

くるわぶんしょう さかたとうじゅうろう 近松門左衛門作

2007年05月31日 | 歌舞伎

(写真は 木)   

    くるわぶんしょう 

 

 5月21日、○HKホールにて、さかたとうじゅうろうさんによる、4年ぶりの近松座公演。

 まずは『くるわぶんしょう』の感想から…

 

 

      くるわぶんしょう   近松門左衛門作

 

 

 吉田屋 藤屋伊左衛門   さかたとうじゅうろう

 喜左衛門          坂東たけさぶろう

 女房おきさ         中村がんのすけ

 扇屋夕霧          中村かいしゅん  他

 

 

 カブキの『くるわぶんしょう』は和事といわれる芝居の一つ。

 伊左衛門は編笠をかぶり、この芝居も先日少し書いていた、紙衣着用(とはいえ、芝居で実際に来ておあられるのは、紙衣ではありませんでした)。

 筋書きは省かせていただきますが、芝居の内容は最後はハッピーエンド。とても簡単で明快。万人にわかりやすいお芝居の一つだと思います。

 途中の伊左衛門の心の葛藤や男のすね具合、かわいさ、愛らしさ、いじらしさ、嫉妬、甘えや色々な思いを、仕草や表情、声色や台詞などで微妙にたくみに演じわけ、見せ場を作る必要があるむずかしいお芝居。

 とうじゅうろうさんはこういった和事の芝居が特異とされていて、とても面白く、笑わせていただき、また、とうじゅうろうさんの素晴らしい演技を、うっとりと楽しませていただきました。

 この『くるわぶんしょう』も何度見ても見飽き内演目の一つ…

 

 

 

 N○Kホールにおける、近松座公演全体の感想

 

 一 N○Kアナウンサーとのトーク 30分

 休憩 20分

 二 かがみじし  

 休憩 10分 

 三 さかたとうじゅうろうさんによる ひとり口上

 休憩 20分

 四 くるわぶんしょう 

 

 

  実際には『かがみじし』と『くるわぶんしょう』だけだったのに、NH○アナウンサーとのトークや休憩が長く、終わった頃には いつもになく、ひどい頭痛が起こってしまいました。

 

 ○HKホールは驚くばかりに美しく、近代的。

 階段は木製、化粧室の鏡も非常に美しい。

 その割には、休憩時間にお掃除の女性がバケツをトイレの真ん中においていたりで、少々不愉快な思いをしたのは、私だけでしょうか…

 

 N○Kホールは大阪歴史博物館の真横。

 NH○ホールからはN○Kホールの立派な鉄格子の隙間から大阪城が見えた。素晴らしい眺め。

 ○HK案内嬢は美しい人ばかりだが、公演中もヒールの音をこつこつと大きく響かせて、遅れてきた観客を案内。もう少し上品に歩けないものか、と叱りつけたくなる衝動を抑える。

 トイレといい、案内嬢といい、ちぐはぐさ加減がN○Kらしいとも感じられるとでも言って、怒る感情を抑えることにしましょう…

 

 客席は非常に座りやすく、舞台も見やすい。

 美しく立派な会場も、無神経な係員や掃除員の無神経な態度に、居心地の悪い。

 

 舞台も非常に大きく、立派。左右に短い花道風の舞台が設置。響きすぎるくらいの音響で、『さかたとうじゅうろうさんによる ひとり口上』はなんだか安っぽく感じて、さかたとうじゅうろうさんが気の毒。

『かがみじし』を舞うには大きすぎるが、押し戻しは花道モドキが貧弱。また、『くるわぶんしょう』においても舞台が大きく、芝居がちっぽけに見える。だが、とうじゅうろうさんの演じ方は深く細やかで、彼そのものが大きく感じた。素晴らしい役者さんだこと。

 とうじゅうろうさんのお話はとても楽しゅうございました。まあ、演目や口上がよければよしとしましょうか…

 

 

 

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ネバーランド   ジョニー・デップ、ダスティン・ホフマン ジェームズ・バリ『ピーター・パン』の実話

2007年05月31日 | 映画

(写真は田んぼ。元はチョコ色とクッキー色。何となく アイスボックス・クッキーに似ていておいしそうな色なんだ。今年初めて、こんな景色に出会いました。)

   

    ネバーランド Finding Neverland

 

 満足度 ★★★★★

 感動度 ★★★★☆

 ジョニー・デップが出ていたよ~ ★★★★★

 ダスティン・ホフマンが出ていたよ~ ★★★★★

 色彩美 ★★★★★

 お勧め度 ★★★★☆

 

 2004年 イギリス・アメリカ 1時間40分

 監督 マーク・フォースター

 

 キャスト

 ジョニー・デップ

 ダスティン・ホフマン

 ケイト・ウィンスレット

 ジュリー・クリスティ

 フレディ・ハイモア

 ラダ・ミッチェル

 ケリー・マクドナルド 

 

『ピーター・パン』の作家ジェームズ・バリの実話に基づく映画。

『ピーター・パン』が書き上げられるまでのドラマは興味深い。

 

 作家ジェームズ・バリが少年ピーターに対して、

「この話は君だよ。」

の言葉を受けて、

「本当の主人公は、彼だよ。」

と、ジェームズ・バリを指さして にっこり笑う少年の笑顔は、胸のすく思いがする。

 

 この映画も ジョニー・デップの演技力は見ごたえがある。

 この映画で興味深いのは、ジョニー・デップの『形』或いは『ポーズ』のとり方。

 かっこよさと作品のジュ大交差を絶妙なほどに計算しつくした『ポーズ』は、どちらかというと映画というよりは舞台に近い。各箇所で歌舞伎の『形』を思い起こさせる、『ポーズ』の美しさ。

 特に好きだったのは、ベンチの場面。ジョニー・デップ向かって左、少年向かって右。ピーターを覗き込むジェームズ・バリ(ジョニー・デップ)の三角の作り方は、歌舞伎の形に似ている。ジェームズ・バリの左手の角度は、画面を広げ、素晴らしい構図だった。

 おそらく、舞台の技法(形など)を強調して日常にも取り入れたのは、『ピーター・パン』といった舞台を描く上で、ジェームズ・バリ(ジョニー・デップ)自身が永遠の夢見る少年、ピーターパンを描きたかったからではないかと思う。

 

 ジョニー・デップの台詞の言い回しと声色の力の抜き具合と強め方は、私は特に好きだ。ジョニー・デップを見ていると、うまい舞台役者をも思い浮かべる。映画の彼を観ていると、この映画に限らず、ジョニー・デップが舞台ならば、映画とはどう変え、どういった演じ方をするのだろうと考えてしまう。

 

 ダスティン・ホフマンは画面に出てくるだけでも重厚感を一層強め、作品を上質に仕上げていた。

 

 この映画の色彩はとても好きだった。

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シークレット・ウインドウ  ジョニー・デップ スティーヴン・キング原作

2007年05月31日 | 映画

 (写真は空に舞う鳥)

 

記録だけ

   シークレット・ウインドウ

 

 

 満足度 ★★★★★

 感動度 ★★★★★

 話の展開 ★★★★☆

 話の好み ★★★★★

 ジョニー・デップが出ていたよ~ ★★★★★

 ジョニー・デップのスウィング ★★★★★

 構図 ★★★★★

 お勧め度 ★★★★★

 

 原作 スティーヴン・キング

     『グリーンマイル』『ショーシャンクの空に』『ミザリー

 監督 デビッド・コープ

     『パニック・ルーム』(監督)『スパイダーマン』(脚本)

 

 キャスト

 ジョニー・デップ

 スティーヴン・キング

 

 映画が始まって十分以内で、話の内容が見えてしまった単純さはあったが、思う通りに話が流れていくのも悪くない。

 こういった精神内部を描いた作品は好みとして好きだ。

 神経質から始まり、潔癖症、イライラ、分裂症や強迫観念、二重人格などの複合された描き方がうまい。

 特に精神分裂の描き方は見事と言わざるを得ない。

 特に部屋の壁面中央がパリパリパリ…と割れていく描き方は、『パニック・ルーム』を思い浮かばせる。

 

 話は良くあるパターンをなぞった感じはするが、かえって万人受けして、集客力は増えたのではないだろうか…

 ジョニー・デップとスティーヴン・キングが深く演じ、監督は細やかに作品を描く上げ、心理学を多少でも好きな人間にとっては、宝の宝庫のような映画だといえる。

 とにかく面白い。

 画面に観客を最後までひきつける、秀作且つ娯楽映画だといえる。

 

 ここではあらすじは省かせていただきます。

 

 

 

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パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち   ジョニー・デップ

2007年05月30日 | 映画

(写真は神戸で見た船)

 

   パイレーツ・オブ・カリビアン  呪われた海賊たち

 

 満足度 ★★★★★

 感動度 ★★★★☆

 お勧め度 ★★★★☆

 ジョニー・デップが出ていたよ~ ★★★★★

 ジョニー・デップ男前度 ★★★★★

 

 2003年 アメリカ

 

 監督 ゴア・ヴァービンスキー  

 キャスト ジョニー・デップ 他

 

 

 楽しかった。おまけにカッコ良かった。

 ジョニー・デップがビックリするほど、男前。

 もう一度観てみたい。

 

 このほか、29日(火曜日)にジョニー・デップの映画を二本(DVD+TV)、観ました。

 満足、満足・・・ということで、急ぎ足で、あらすじは省かせていただきます。

 

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酔画仙   イム・グォンテク 監督 『西便 風の丘を越えて』

2007年05月30日 | 映画

(写真は中国の広州。手の平で水墨画を描く男性。)

 

       酔画仙

 

 満足度 ★★★★★

 感動度 ★★★★★

 好み ★★★★★

 話の展開 ★★★★★

 お勧め度 ★★★★☆

 

 韓国  2002年 

 

  監督 イム・グォンテク 『西便 風の丘を越えて』

 キャスト  チェ・ミンシク

       アン・ソンギ

       ソン・イェジン

       

 あらすじは省略させていただきます画、とても好きな映画でした。

 私の好きな映画の一つ、『西便 風の丘を越えて』と同監督とだけあって、作品が重厚で丁寧に作られている。

 パンソリや海岸、雪の場面なども共通する場面がある。

 人物も細やかに描かれ、話の展開も面白い。

 韓国における中国の絵に対する感覚もわかって、興味深い。

 見た後すぐに、もう一度見たくなる作品の一つ。

 同時に、大切にしまっているビデオの『西便 風の丘を越えて』も見たくなった。

 この作品は、私は好きだな。

 

 

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人はなぜ太るのか・肥満を科学する   岡田正彦  岩波新書

2007年05月27日 | 読書全般(古典など以外の一般書)

 

 

 記録だけ 2007年 54冊目                 

 

  人はなぜ太るのか ー 肥満を科学する

                                                    

 著者  岡田正彦 

 岩波書店  

 岩波新書(新赤版)1056

 2006年12月20日    

 208ページ 700円+税  

 

 肥満やダイエットだけの単純な話ではなく、科学的に分かりやすく説明されていて、大変面白かった。

 血管の話や肥満はなぜ健康に悪いか、或いは健康的なダイエット法まで書かれている。

 ダイエットに伴う運動やダイエット食品、健康機の危険性まで載っていて、とても役立つ一冊。

 

 著者である岡田正彦の著書にはこのほかに、

   『治療は大成功、でも患者さんは早死にした』

   『ドック、検診でわかる病気,わからない病気』

   『暴走する遺伝子』

   『医療から命を守る』   などがある。

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新かぶき十八番の内 かがみじし   かがみじし最年少 中村壱たろう

2007年05月23日 | 歌舞伎

NHK大阪ホール

 

  かぶき十八番の内 かがみじし

 

   小姓弥生 後に獅子の精  中村壱たろう  

 

 

 先日NHK大阪ホールで 『かがみじし』(壱たろうさん)と『くるわぶんしょう』(とうじゅうろうさん)を観た。  

 壱たろうさんはとうじゅうろうさんの孫、かんじゃくさんのご長男。

 壱たろうさんは現在16歳で『かがみじし』は初めて。『かがみじし』はとうじゅうろうさんの記録を伸ばし、最年少とのこと。

 

 壱たろうさんの『かがみじし』は素直で一生懸命なのが伝わる舞台だった。

 お顔はかんじゃくさんの面影もあり、美しいお顔立ち。素直な『かがみじし』だった。

 

 子役のお二人が可愛らしいこと、可愛らしいこと・・・

 まわりから「かわいい・・・」といった声が漏れていた。

 

 扇舞の部分で壱たろうさんが扇舞を放り投げられた時、黒衣さんが扇を落とされてしまった。

 失敗は良いのだが、黒衣さんが野球の滑り込みアウトのような動きをなさったものだから、会場は大きく沸いてしまった。

 黒衣さんはなんでもなかったような表情を演じられていたが、瞼は少し動いていたのが気の毒だった・・・

 黒衣さんが怒られておられないかが、とても気にかかる・・・

 

『かがみじし』の筋は省かせていただきますが、この舞は新かぶき十八番の内。本来は団十郎家の十八番。

 この舞はかんざぶろうさんが得意。先代の舞(特に男舞)も好きだったが、現在のかんざぶろうさんの舞も好きだ・・・

 そして今回の最年少で舞われた壱たろうさんの『かがみじし』も、かぶき界の将来を考えると、楽しみがまた一つ増えたといった親心で観ている私だった・・・

 

 

(かぶき関係の言葉の一部を仮名などで表記させていただいております。)

 

    

 

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白い犬とワルツを   仲代達也 原作ケリー・ケイ

2007年05月23日 | 映画

(写真は中国の雲南省、石林の近くの土産物店。

 このパッチワーク刺繍は、少数民族の方が家に置いておられたもののようだ。

 古びた色も刺繍技術も素晴らしい。

 そんなに高いものではなかったのに、時間が足らずに買いそびれてしまった今も心残りの一品です・・・

 次回行っても、もうないのだろうな・・・・・・ショックは大きい。)

 

 

   白い犬とワルツを

 

 満足度 ★★★★★

 感動度 ★★★★☆

 面白さ  ★★★★★

 画面の構成 ★★★★★

 色彩美 ★★★★★

 話の展開 ★★★★☆

 

 2002年 日本 

 原作 『白い犬とワルツを』 ケリー・ケイ

 監督 月野木隆 

 

 キャスト 

 仲代達也

 藤村志保

 藤村志保を思わせる白い鳴かない犬

 南果歩  他

 

 話は見事なまでに、簡単で明快。

 どこか黒澤作品をにおわす画面構成と仲代達也さんの演技力で作り上げられた映画作品。秀作で、観終わった後に満足感がある。

 

 仲代達也さんの影、後姿、目や脚や手などの全てが絵になり、彼の周辺にはドラマが流れる。彼の周りの空気は特別のオーラを放ち、作品を重厚にする。

 どの場面のコマを切り離して、じっくりと観ても、彼はこの映画の中の主人公。素晴らしい役者だと、再度痛感。

 

 藤村志保さんと南果歩さんも好きな女優さん。加えて日系韓国人役のおばさん役とその息子役の俳優さんなどが勢ぞろい。違ったタイプの俳優、女優さんたちが脇を固めたといった感じで、最後まで笑いながらおお鳴きに泣いているような、複雑な映画でした。

 

 ここではずせないのが、藤村志保を思わせる、白い 鳴かない犬。この犬が素晴らしい演技を演じる。『鳴かない』ということが、起承転結の結部分で、非常に重要。この犬と仲代達也さんで映画は成り立っているといっても、過言ではない。

 

 この映画は骨信仰に対する人々の感覚が、非常にうまくあらわされていた。世界では火葬、鳥葬など、国や考えによって、各種色々な葬儀、骨の扱い方がある。たまたまこの原作と一般的に多く行われている日本の納骨が一致したのだろうか。或いは原作を和風にアレンジしたのかは知らないが、日本の生活を障子の穴から覗いたような、内容の作品の作り方に関しては、小津作品を思い出させる。

 

 名前は知らないが、先にも書いた日系韓国人役のおばさん役の存在は大きい。日本と韓国の似ているようで大きく違う生活習慣をうまく取り入れ、映画の幅を広げる。彼女と、植木・植物医(仲代達也)の家族と彼女のやり取りは、見事な表現であった。また、彼女の、

「日本人にもこんな人がいるのかと思い、ありがたかった。」

と泣き崩れる場面は、日本人として心に一喝されたような気持ちになる。

 

 

 あらすじは先にも触れたように、簡単。今回は申し訳ございませんが、省略させていただきます。

 

 

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日本の色を染める   吉岡幸雄著 岩波新書

2007年05月20日 | 読書全般(古典など以外の一般書)

(写真は トンパ博物館(東巴文字)

 雲南省北部、ナシ族 によって描かれた絵巻物。

 長い年月を経た今も、文字や絵の色が鮮やかなのは、絵の具の中に動物などの血が加えられているためらしい。

 多分血に含まれた鉄分の影響ではないかと、勝手に考えている。   

 博物館員の方の承諾を得て、フラッシュ無しで写真撮影しています。

  ↓   下は、以前に私が記録した『トンパ博物館 』です。

 http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/22a65b8c5d94f424aa71b3f63e27a878  )

 

 

 記録だけ 2007年 53冊目                 

 

  日本の色を染める

                                                    

 著者  吉岡幸雄 

 岩波書店  

 岩波新書(新赤版)818

 2002年12月29日    

 234ページ 780円+税  

 

 大変面白かった。

 私が十代から好きな文様の一つ、『四騎獅子狩文様』を復元させた著者の、自然染めに対する心息が伝わる一冊。

『四騎獅子狩文様』の鮮やかな色彩には、紅花、蓼藍、木蘗(キハダ=柑橘類から)、槐(エンジュ=豆科から)などを使用したという。

 

 藍染の話はかなり詳しく説明されており、楽しむことができた。

 また、この本に出てくる『麹塵(キクジン)』のドラマには、深く興味を覚えた。

 

 

 P.174~175の徳川家康所用の衣装で、著者の目をひくものに対する説明は、私も同感であった。著者は家康所用の藍の美しさと柿渋染めに興味を持ったらしい。

 ①

『淡浅葱地葵文・・・・・・』と『薄水色地大蟹・・・・・・』について『藍は濃い色を染める方がどちらかというと簡単で、淡い住んだ清楚な淡藍を出すのはきわめて高度な技術を要する』といった記述。

 また、渋は私にとっては大変懐かしい。知人が円錐形の渋に糊を入れて、手書きの糊おきをしているのを観たことがあるからだ。

 渋は紙なのに非常に丈夫でたよりどころがあるといった感じがする。

 歌舞伎の『助六』や『廓文章』、『夕霧名残の正月』などの演目には紙衣(かみこ)といった衣装が使われる。

『助六』においては喧嘩っ早い助六をたしなめる意味で、母親が助六に紙衣を与え着させる。また、『廓文章』も一時的に落ちぶれたやつし役なので、黒と紫で小粋に文字まで書いた、うわべお洒落なぺらぺらの紙でもいいかも知れない。

 しかし『夕霧名残の正月』においてはやつしの演技で、若干小粋に紙衣を着こなすというのは分かるのだが、一昨年の藤十郎さんの顔見世襲名披露(南座)で紙衣を再現された際、

『紙では弱いので破れないように工夫された丈夫な紙を使用していただきました。』

と、藤十郎さん自らが説明されていた。

 私は江戸時代にも着られ、演じられていたといった紙衣に対して、釈然としない疑問部分があったのだが、この本を読んで、薄ぼんやりとわかったような気がする。

 家康所用の紙衣には、『柔らかな和紙の上に、柿渋を塗って着色し、それを何度か揉みあげて、裏には紫の羽二重をつけて真綿を入れた小袖』だったらしい。

 なるほど!柿渋を何度も塗って、揉みあげては塗るくり返しをされた紙衣ならば、着衣うに耐える。

 従って芝居(『夕霧名残の正月』など)では水色の紙衣も、江戸時代は茶色であったのではないだろうか・・・と好き勝手に、考えている。

 読み進めると、『江戸時代の流行色』の一つとして、茶色も含まれている。(P.211)当時、『暫』に団十郎茶。或いは『守貞漫稿』に『伊予染、路考茶、江戸に流行、天保に至りて京阪に芝翫茶、江戸に路考茶、梅幸茶』と描かれているくらい、茶色は 歌舞伎役者に好まれていたらしい。

 上に書いた『暫』の今の衣装も元は団十郎茶であり、色も変えられたということは、今の紙衣も、江戸時代とは違う色に変えられていると考えられないことも無いのである。

 こう考えると、日本の色も芝居を通して、奥深い歴史を感じる私である。

 

 

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明日の記憶    樋口可南子 渡辺謙 大滝秀治 香川照之 及川光博

2007年05月20日 | 映画

(写真は五月の大和川です。)

 

  明日の記憶

 

 満足度 ★★★☆☆

 感動度 ★★★☆☆

 話の展開 ★★★★★

 

 2005年 日本

 

 原作 『明日の記憶』荻原浩

 

 監督 堤幸彦

 

 キャスト 大滝秀治 

       渡辺謙

       樋口可南子

       香川照之  

       渡辺えり子 

       吹石一恵 

       及川光博  他

 

 

 今回は辛口で申し訳ないのですが・・・

 

 アルツハイマーという重いテーマを、さらりと描いた無色な映画。

 

 アルツハイマーと本人、本人と家族、周囲の人間との関係も、あまりにもきれいごとが続き、練りが浅く、作品に入り込めない。

 アルツハイマーを取り上げた映画やドラマは数多くあるが、あえてよく言えば、絵面の良い仕上がりだ。

 細やかな気遣いや小細工の効いた場面は数々感じられるが、本質から外れた上滑りが鼻につく。

 続けて辛口をいわせていただくならば、渡辺謙さんの病状が、表情、仕草ともにアルツハイマーに思えない出来栄えで口惜しい。目の動きは見るに耐えない。

 

 香川照之さんが渡辺謙さんを励ますシーンと、大滝秀治さんとの野焼き回想シーンでの、大滝秀治さんの演技は胸を打たれた。また、及川光博さんの、父親も同じ病気といった難しい設定での、淡々とした表現力には感心した。

 

 途中のバックミュージックが『ランチの女王』(ドラマ)とイメージがかぶる。

 また、酒を持って山中の懐かしの窯元に行く場面は、若かりし頃の妻(枝実子)が手招く。ここは、宮崎駿さんの『思い出ぽろぽろ』とイメージが重なり、二番煎じで面白みに欠ける。

 

 アルツハイマーを取り上げたという理由ではなく、悶々とした気分が、途中から拭いきれないじれったさ。

 アルツハイマーを描くなら、もっと真剣にとらえてほしいといった怒りさえ覚えるのは、何故だろう・・・。

 

 おそらく原作で味わった方が楽しめたのではないかと、映画の途中から後悔した映画だった・・・

 

 

 今回もあらすじは控えさせていただきます。

 

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ブラザーズ・グリム   マット・デイモン ヒース・レジャー

2007年05月19日 | 映画

(写真は大和川で見た、空飛ぶ鳥。)

 

   ブラザーズ・グリム

 

 満足度★★★★☆

 色彩 ★★★★☆

 話の展開 ★★★☆☆

 

 2005 アメリカ

 監督 テリー・ギリアム

 キャスト マット・デイモン

       ヒース・レジャー

       モニカ・ベルッチ

       ジョナサン・プライス

       ピーター・ストーメア  他

 

 

 グリム童話の好きな私にとっては、楽しい映画だった。

 うまく話をつなぎ合わせ、本来の原作を参考にして、適度に残酷に仕上げられているところが映画(作品)として、深みを増している。

 ファンタジーだが、色が重厚。CGを多用した感は拭いきれないが、現代の映画では仕方が無いか・・・

 

 後半、棺に入った女性・・・クリムトを思わせる色彩と構図、衣装に目を奪われた。

 

 

 申し訳ございませんが、今回はあらすじは控えさせていただきます。

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日本の意匠  蒔絵を愉しむ   灰野昭郎著 岩波新書 

2007年05月19日 | 読書全般(古典など以外の一般書)

(写真は麗江古城内で見つけた 木彫り職人。

鳳凰文様と牡丹、他植物を一枚の丸板に彫る。

他の店の文様技術に比べ、デッサン力が本格的。

一作品における色彩の統一感も好きだった。

吉祥文様を盛んに唱える、温和な頭の良い職人さんのように感じた。)

 

 

 

 記録だけ 2007年 52冊目                 

 

 

  日本の意匠  蒔絵を愉しむ

                                                    

 著者  灰野昭郎 

 岩波書店  

 岩波新書(新赤版)421

 1995年12月20日    

 226ページ 728円+税  

 

 大変興味深く、 あっという間に時間がたった。

 蒔絵に絵が彼ら代表的な『文様』の話。

 文様は興味のあるものも多く、私にとっては、楽しい一冊。

 

 三夕の話は・・・ある意味著者に対して少し驚きを隠せないが・・・

 

 雀の話においては、著者のユニークさと頑固さと人柄が表れており、笑いが止まらない。まるでブラックユーモアーの本のよう。楽しい人だ。

 

 海老文様にちなむ団十郎家の話は、やっぱりでたな~っていう感じ。

 1819年に贔屓の蒔絵師が、助六に印籠。揚巻では無く、白玉に墨絵雲龍のまな板帯を送ったところに 妙に感心したずれてる私・・・

 

 P.112の漁りの文様は素晴らしいと感じた。

 

 蒔絵と京都の糸偏(染色業界)とは共通の文様が多い。また蒔絵にも描かれている中国と日本との文様や吉祥文様にも共通項が多く、見ていて楽しく感じる。

 

 

 

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46億年の恋 松田龍平 安藤政信 金森穣 石橋凌

2007年05月17日 | 映画

 

 46億年の恋 

 

 

 満足度 ★★★★☆

 感動度 ★★☆☆☆

 映画の構成力 ★★★★★

 色彩 ★★★★☆

 話の展開 ★★★☆☆

 お勧め度 ★★★★☆

 

 2006年 日本映画 84分

 

 原 作  『少年Aえれじぃ』  正木亜都

 監 督  三池崇史 

 

 キャスト  松田龍平

       安藤政信

       石橋凌

       石橋蓮司  

       金森穣

       窪塚俊介

       渋川清彦

       遠藤憲一  他

 

 

 思っていた内容からはかけ離れていたが、満足のいく映画だった。

 映画の作り(構図や色彩、台詞のやり取り)が、1980年代の舞台を観ているようで、興味を覚える。私としては、安部公房スタジオを思い浮かべながら、この映画にのぞんでいた。

 

 構成力勝ちといった作品の一つかも知れない。

 ただ、思わせぶりな割には、内容が単純なのが、口惜しい。

 

 美しい若き俳優の中でひときわ目立つ俳優、石橋凌さんの表情が重みがあり不気味で輝かしい。

 ひときわ目立つ金森穣のダンスは映画を神秘な世界へと誘い込む。

 松田龍平の淡々とした演技と安藤政信の美しさも見所だ。

 

 あらすじや展開を追うといった見方ではなく、構成力を楽しむ。或いは、舞台や抽象画を味わうといった姿勢でこの映画を観ると、楽しむことができる。

 

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遠い路  イ・ビョンホン

2007年05月12日 | 映画

(写真は島根県立美術館から見える夕日。『遠い路 』に出てくる韓国の景色にも、少しだけ似た景色があったので、この写真を選んでみました。)

 

    遠い路

 

 2001年  韓国ドラマ

 

 感動度 ★★★★★

 満足度 ★★★★★

 キャスト ★★★★★

 イ・ビョンホン ★★★★★

 話の展開 ★★★★☆

 

 

 キャスト

  イ・ビョンホン(ウシク)

     心に残る役者さんの一人です・・・

  パク・チニ(ソンジュ)

  ナム・イル(父)

    味わい深い役者さん

  キム・ジヨン(近所のおばあさん)

    このおばあさんの怒ったような言い回し。しかし愛情深い語り…

     パンソリで詩を歌うような調べ。素晴らしく見事な演技…

 

 

 数年前のこと。

 テレビで途中から観て、おお泣きに泣いたドラマ。

 私事だが、買い物に行く約束をしていた家族が ドアを開け、素っ頓狂な声で、

「何、泣いてるの?」

と首を傾げるくらいに、涙したことを覚えています。

 

 前半のほとんどを観ていなかったので、 『遠い路 』はその時から、ずっと心に引っかかっていた作品なのです。

 

 ブログで親しくしていただいております、親切な ○○こさんに、題名を教えていただいていたので、この作品に再開することができました。

 本日、やっと借りることができました。

 ○○こさん、本当にありがとうございました。この場を借りて、御礼申しあげます。

 

 イ・ビョンホンさんって、泣かせる役者さんですね…

 しっかりと 製作者の意図的な壺にはまって、泣かせていただきました。

 感激の連続…

 

 

 韓国ドラマに暗い私が、ここで色々語るのはおこがましいので、今回は感想やあらすじは控えさせていただきます。

 

     

コメント (10)
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イスラム教入門 岩波新書

2007年05月10日 | 読書全般(古典など以外の一般書)

 (写真は大和川に浮かぶボール)

 

 記録だけ 2007年 51冊目                 

 

 

  イスラム教入門 

                                                    

 著者  中村廣治郎 

 岩波書店

 岩波新書(新赤版)538

 1998年1月22日    

 224ページ 640円+税  

 

 詳しく書かれていたが、結構、ややこしい。

 これ一冊にどれだけの時間を費やして読んだことか・・・

 その割には、私の場合、

 

     たわわだが 実り無きかな 虚しき 

 

 

コメント (2)
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