<ジョンベネちゃん事件>電子メールで容疑者が捜査線上に
米国コロラド州ボルダーで96年12月起きた美少女コンテストの女王、ジョンベネ・ラムジーちゃん(当時6歳)殺害事件は16日、元小学校教諭、ジョ
ン・マーク・カー容疑者(42)がタイのバンコクで逮捕され、解決に向けて急展開した。発生当初、両親に疑惑の目が向けられ、「児童虐待」「子どもへの性
犯罪」とマスコミ報道も過熱した。カー容疑者が今になって浮かんだきっかけは、ジョンベネちゃん一家との関係は。再び、全米のマスコミの注目を集めてい
る。
「彼女(ジョンベネちゃん)を愛していた。彼女に会うために家へ行き、一緒に地下室に入ったが、誤って死なせてしまった。殺すつもりはなかった」
カー容疑者はタイ警察にこう供述。犯人しか知り得ない情報を告白したとされる。タイ警察・入管は同容疑者を「(国家にとって)好ましからざる人物」と判
断して在留資格をはく奪し、1週間以内に米国に強制送還する。米捜査当局は、誘拐殺人と児童に対する性的虐待の容疑で本格的に追及する方針だ。
タイ警察の発表と米メディアの報道によると、同容疑者が捜査線上に浮上したのは、数カ月前。かつて、ジョンベネちゃんの父親を容疑者と示唆するレポートを発表したコロラド大学教授に届いた電子メールだった。
同容疑者が出したとされるこのメールは、自らの関与を認めたうえで、「米国に帰るつもりはない。事実に基づいた映画を作りたいので、映画会社に著作権を売りたい」と書いていたという。
また、AP通信は裏付けがとれていない情報として、同容疑者がカリフォルニア州で教職についていたが、児童ポルノ所持容疑で逮捕され、02年に教職免許を失効した、と報じた。捜査当局がこの時点でマークしていたかどうかははっきりしていない。
ボルダー警察が、同容疑者を内偵中の今年6月6日、同容疑者はマレーシアからタイに入国。連絡を受けたタイ当局が所在を突き止め、16日夕、バンコクのアパートで逮捕した。
同容疑者はAP通信に対し、ジョンベネちゃんの母親に生前連絡したことを明かし、「彼女は私の手紙を読んだと思う」と話した。一方、同容疑者の元妻は、
地元メディアに「元夫は事件についての記事を読みあさっていたが、当時は自分とアラバマ州にいたので犯人とは思わない」と話した。【バンコク藤田悟、ロサ
ンゼルス國枝すみれ】
◇捜査ミス、両親が報道被害
この事件がメディアの注目を集めた理由の一つは、警察当局が「両親は捜査の焦点」と公言し、疑いの目を向けていたことだ。警察が初動捜査ミスで捜査方針を間違え、それを検証することなく伝え続けたメディアが報道被害を生み出した。
両親は事件直後に当局のこうした動きを察知し、弁護士を立てて警察の聴取を拒否。私立探偵を雇って事件を調査させたり、犯人逮捕につながる情報に懸賞金をかけた。また、PR会社と契約して報道機関に対応するなど、事件は次第に「劇場型化」した。
当初はタブロイド紙が中心だったが、次第に主流メディアも巻き込まれる形で両親の犯人説を報道。97年に妻パトリシアさんとともにテレビ出演した父親のジョンさんが「私は自分の娘を殺していない」と答えるなど、異常な展開を見せた。
激しい報道にジョンさんは職を失い、ジョージア州アトランタに転居を余儀なくされた。このほかにも、タブロイド紙がジョンベネちゃんの検視写真や遺体発見現場の写真を入手し、その一部の掲載に踏み切るなど、死者の尊厳を侵害する報道も相次いだ。
容疑者逮捕を受け、父親の弁護士は16日、メディアに対し「最も低俗な冤罪(えんざい)」を作り出したと非難した。同日のメディアは、こうした批判にまだ応えていない。【ワシントン吉田弘之】
◇性犯罪者情報をネットで公開 米国
米国では年間約9万人の未成年が性犯罪の被害に遭っており、犯罪者情報がネット公開されている。日本では、昨年から、犯罪者の出所情報が捜査に活用されるようになった。
米国では、性犯罪者は出所前にデータベースに登録。引っ越すたびに住所登録を義務づけられ、違反すると最長10年の禁固刑になる。司法省は昨年7月、性
犯罪者の名前を入力すれば他州での犯歴も横断的に検索できる全国性犯罪者公開登録制度を発足させ、ネットで公開した。市民が自分の住所を打ち込み、近隣に
性犯罪者が住んでいないかチェックすることも可能になった。
日本では、昨年6月から性犯罪者の出所情報が法務省から警察庁に提供され、犯罪捜査に活用されている。同庁は各警察本部に通知し、継続的に所在確認などを行う。
今年7月末までに計192人分の出所情報が法務省から提供された。うち12人が住居侵入や窃盗なども含めて再び事件を起こして検挙された(性犯罪の再検挙は3人)。出所情報が活用された例もあったという。【國枝すみれ、遠山和彦】
◆ジョンベネちゃん殺害事件の経緯◆
年月日 概 要
96・12・26 コロラド州ボルダーの自宅で、母親が朝、ジョンベネちゃんの身代金を要求する手紙を発見。警察が誘拐事件として捜査開始。午後、父親が地下室で遺体を発見
97・4・30 警察が両親から事情聴取
5・1 両親が会見し殺害や虐待疑惑を全面否定
6 地元警察のコンピューターにハッカーが侵入。捜査情報を盗んだり破壊した疑いが発覚
8・13 州最高裁の開示命令を受け、当局が検視報告書の全容を公表。ロープで窒息死させていたほか、虐待の痕跡も
10・10 警察署長が捜査責任者の更迭を発表し、現場保存などの初動捜査のミスを事実上認める
99・10・13 ボルダー郡大陪審が「起訴に足る十分な証拠はない」と発表。事実上、捜査打ち切り
06・6・24 ジョージア州アトランタで母親が病死
8・16 バンコクで元小学校教諭のカー容疑者を逮捕
(毎日新聞) - 8月18日10時20分更新
両親ではなかった…ジョンベネ殺害で元教師を逮捕
捜査当局「秘密の暴露」あった
【ニューヨーク=夕刊フジ特電】米国の美少女コンテストの常連だったジョンベネ・ラムジーちゃん=当時(6)、写真(AP)
=がコロラド州ボールダーで1996年12月、自宅地下で殺害されて見つかった事件で、米捜査当局は16日、容疑者の男をタイ・バンコクで逮捕した。「第
1発見者」の両親に疑惑の目が向けられ、全米のみならず、日本でも関心を集めた美少女殺人事件の犯人は、ロリコン教師だった。迷宮入りと思われていた怪事
件は、捜査当局の内偵捜査の末、10年の時を経て急展開を見せている。
米CNNテレビなどによると、逮捕されたのはジョージア州在住の米国人の元小学校教諭、ジョン・マーク・カー容疑者(42)。
米捜査当局が16日朝に逮捕したところ、ジョンベネちゃん殺害について当事者しか知り得ない「秘密の暴露」
があったという。カー容疑者にはジョンベネちゃん事件とは別の性的暴行の容疑もかけられている。コロラド州の連邦地検は捜査官をタイに派遣し、カー容疑者
を米国に移送する。
大陪審が99年に捜査を打ち切り、母親のパッツィーさんは今年6月、卵巣がんで49歳で病死。父親のジョンさんは容疑者逮捕を受けてコメントを発表し、「妻が生きていたら間違いなく私と同じくらい喜ぶだろう」と述べた。カー容疑者については「知らない人物だ」と話した。
また、パッツィーさんは亡くなる前、捜査当局から被疑者浮上の情報を聞かされていた。ジョンさんは「事前に知らされていたことは、せめてもの救いだった」と語った。
捜査当局は、カー容疑者とネットでやりとりしていた人物の通報から内偵に着手していた。
コンピューター会社で巨額の財を築いた父親と、元「ミス・ウェストバージニア」の美貌(びぼう)の母親のもと、裕福な家庭に育ったジョンベネちゃん。
パッツィーさんの勧めで応募した「ミス・コロラド」「全国ちびっこミス・ビューティー」「リトル・ミス・メリークリスマス」など数々のコンテストで優勝
し、美少女として知られた。
しかし、96年12月26日早朝に行方不明となり、パッツィーさんが身代金11万8000ドルを要求する3ページの脅迫状が自宅にあるのを発見し、警察に通報した。
同日午後、ジョンさんが地下のワインセラーで白い毛布をかけられたジョンベネちゃんの遺体を見つけた。
検視の結果、頭蓋骨(ずがいこつ)が激しい殴打で骨折しており、ナイロンコードと絵筆で作った絞首具で声が出ないように窒息死させられていた。
身代金の額がラムジー家の裕福さからすれば低額なうえ、ジョンさんのその年のボーナスとほぼ同額なこと、脅迫状がラムジー家にもあった紙とペンで書かれ、筆跡もパッツィーさんのものとよく似ていたことなどから、警察は両親の関与を疑った。
警察が現場に到着する前、ジョンさんが遺体を発見したことや、発生直後に弁護士やPR会社を雇い入れたことも疑惑に拍車をかけた。
警察はジョンベネちゃんがおねしょをしたことに腹を立てたパッツィーさんの犯行と推論し、ジョンベネちゃんに性的虐待を加えていたジョンさんの犯行説も上がった。
夫妻は私立探偵を雇うなどして侵入者による犯行だと主張し、結局99年、大陪審が起訴者なしで調査を打ち切った。
多くのメディアが夫妻の犯行を示唆するように事件を扱ったため、中傷訴訟に発展し、2003年には連邦地裁が「外部からの侵入者の犯行」と結論づけた。
夫妻はミシガン州に移住したものの、ジョンさんの事業が失敗し、04年にアトランタに移住していた。
カー容疑者が潜伏していたバンコクの少女買春は、日本人の逮捕者を出すなど国際問題化している。
ZAKZAK 2006/08/17