藤井もの ▼ 旧Twitter & Instagram

  ウクライナ,中東に平和を
  市民への攻撃を止めよ
  軍事力に頼らない平和を

フィクション:東洋からのエージェント(4)

2009-08-21 | フィクション:大物の交渉人
 局長とトウが乗った車は外務局の建物に到着した。リュウ局長は終始無言だった。トウは重い空気と緊張で息苦しく、早く到着しないかと祈り続けた。街の様子も、天気さえも気がつかずにいた。着いた時には雨模様に代っていた。車は来客用の表玄関で止められ、二人はそこで降りた。職員用の通用口は別にあったが、警備員は表玄関に誘導したのだった。公用車が表玄関に案内されたということは、しっかりした指示があったことを意味す . . . 本文を読む
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映画「扉をたたく人」の感想

2009-08-20 | 映画の感想
◆№43 08月14日 「扉をたたく人」(★★★★☆) (感想)アメリカの傷を癒すにはどうしたらいいのだろう。アフガニスタンを攻撃しても、イラクと戦争をしても傷は癒えなかった。リベンジ(復讐)は果たせても、アメリカが失ったものは戻らない。本当の平和も安らぎも消えたままだ、とトム・マッカーシー監督は問いかけている。アメリカの現状をピアノの修練に挫折した大学教授になぞらえて映画にした。知性もあり . . . 本文を読む
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映画「セントアンナの奇跡」の感想

2009-08-19 | 映画の感想
◆№41 08月02日 「セントアンナの奇跡」(★★★★☆) (感想)戦争を捉える視点が見どころのひとつ。監督は、アメリカ兵、ドイツ兵、上官、下士官、白人、黒人、レジスタンス、村人、老若男女、それぞれに戦争を語らせる。それによって戦争がそれぞれ違うことが分かる。戦争の中にある日常は、変わることのないこれまでの日々、友人との会話、差別や恋愛もある。不運もあれば幸運もある。▼もうひとつのテーマは、 . . . 本文を読む
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映画「嗚呼 満蒙開拓団」の感想

2009-08-15 | 映画の感想
◆№42 08月12日 「嗚呼 満蒙開拓団」(★★★★☆) (感想)日本は戦争で失ったものを取り戻してはいない。経済発展や便利な生活は新たに手に入れた。しかし、…平和という封印をして、しまいこんでしまったものも多い。日本は戦争に負けたせいか、公害、薬害、冤罪問題でも国が関わることの始末ができない国になっている。▼映画はそのひとつ、満蒙開拓団という戦時中の政策を通して現在を描いたドキュメンタリーだ . . . 本文を読む
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フィクション:東洋からのエージェント(3)

2009-08-14 | フィクション:大物の交渉人
 局長とトウの前に男は突然現れた。二人は凍りついた。トウは局長が驚くのを見て不安になった。局長もこの男を知らなかったのだろうか。  男はトウに声をかけてきた。「トウ課長、昇進おめでとう。なかなか頼もしいな」。局長はやっと自分を取り戻していた。「チョウ党書記、驚かさないでください。出てこない約束でしょう」。この男が党書記、党書記には若いとトウは思った。男は「リュウ局長、申し訳ない。私も実は彼に話した . . . 本文を読む
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フィクション:東洋からのエージェント(2)

2009-08-13 | フィクション:大物の交渉人
 トウは経済省に出勤すると直ぐに課長から声をかけられた。「トウも大物になったもんだ。局長が呼んでいる。30分後に部屋に行ってくれ」と課長は皮肉っぽく言った。課長の嫌味よりも、局長の呼び出しにトウは驚いた。初めてのことだった。一職員を局長が呼びだすことは異例だ。トウは何も心当たりがなかった。不況時に落ち込まずに仕事をしていたのは確かだが、景気を回復させるアイデアを発揮したわけではなかった。彼はその . . . 本文を読む
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フィクション:東洋からのエージェント(1)

2009-08-12 | フィクション:大物の交渉人
 中国大使館に戻ったチョウは,大使室へ向かった。どんなに遅くなっても状況を大使に報告する約束になっていた。しかし,結果を気にしていたのは大使ではなかった。大使にチョウを伴って会いに来た来た男がいた。彼はずっと不機嫌にいらだっていた。大使に対してでさえ,時折愚痴や怒りが口をついて出た。大使は内心面倒に巻き込まれるのはいやだと思っていたが,実際の対応はクールに全面協力を約束してくれた。大使は本国 . . . 本文を読む
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フィクション:大物の交渉人(2)

2009-08-11 | フィクション:大物の交渉人
 デレクはクリトン元大統領との話の行方が見えると,目で国務長官を促したが,興奮からか国務長官はそれに気づかなかった。仕方なくデレクは置かれたままのワイングラスを手に取り,国務長官に手渡した。国務長官はデレクの催促で仕事がまだ残っていることを思い出した。おもむろにワインを飲み干すと,「ビリーありがとう」と妻らしい愛情で謝意を示し「まだ仕事の続きがあるの」と言った。クリトン元大統領はこんな深夜に仕 . . . 本文を読む
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雑感、、月刊「文藝春秋」の低落

2009-08-09 | 雑感
ノンフィクションの続きを書こうかとも思ったが、気になっていることがある。 9月号が出たので、もう古い話題になってしまった。 それは、月刊文藝春秋8月号の記事である。 総力特集 さらば「アメリカの時代」と銘打ったもので ●「日米安保」は破棄できる (石原慎太郎 ) ●「GM破綻」ぬけがらデトロイトをゆく (町山智浩) ●日本政治「百年に一度」の大転機 (福田和也) ●「世界同時不況」は何年続く . . . 本文を読む
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フィクション:大物の交渉人(1)

2009-08-09 | フィクション:大物の交渉人
 クリトンは、二人の記者を引き取ってきたことの反響が想像以上に大きいことに内心驚いていた。元大統領という肩書がこれほどのものかと改めて思っていた。  そう思うのには訳があった。正直北朝鮮なんか行きたくなかった。妻を通して最初の連絡をうけたときからそうだった。まったく気乗りがしなかったし、陽の当たる役回りでもないし、身柄引き受けなど自分のカラーに合わないと思った。人道行為ならほかにカンターなどは . . . 本文を読む
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