藤井もの ▼ 旧Twitter & Instagram

  ウクライナ,中東に平和を
  市民への攻撃を止めよ
  軍事力に頼らない平和を

長官評伝(7) ※草稿

2009-10-18 | フィクション:大物の交渉人
※草稿:本日急用で出かけることになりました。後日加筆修正するかもしれません。 --------------------------------  小平は食堂を出ると教授のところへ向かった。授業がなかったのか教授はひとりで部屋にいた。小平がノックをすると「どうぞ,お入りください」と返事があった。  教授は渋いかをして「もうとっくに大学から帰ったかと思っていたよ。同志」と言った。「許して . . . 本文を読む
コメント

フィクション:マー長官評伝(6)

2009-10-07 | フィクション:大物の交渉人
 小平が見つけた喧嘩っ早い男は,北京大学の食堂に料理人としてきたのだが,1年余りで老人が知らないうちに支配人となっていた。料理の腕は確かだったが,料理を作る以上に段取りなど差配の才を持っていた。前の支配人が体が弱く休みがちだったのを良いことに,ちゃっかり取って代わってしまったのだった。  噂を耳にして小平はむっとした。噂では何も悪だくみやおとしめてかすめ取った訳でもなかったのだが、裏 . . . 本文を読む
コメント

フィクション:マー長官評伝(5)

2009-09-30 | フィクション:大物の交渉人
 すでに午後の授業が始まっていた。小平は、セイに授業に行くように言った。セイはお辞儀をして老人の前から去っていた。セイがいなくなると、老人は支配人を呼んだ。支配人にセイとマーのことを頼むためだった。  小平の話を一通り聞いた支配人は呆れ顔でぼやいた。「老翁、物好きにもほどがありますよ、こんなやつら。…それに、私にまで、面倒を見ろだなんて」  「面倒をみろとまで言ってないだろう。気に . . . 本文を読む
コメント

フィクション:マー長官評伝(4)

2009-09-23 | フィクション:大物の交渉人
 小平は「最近の学生は代筆をなんとも思わないのか」と独り言を言った、老人の抱いている若者への期待が一部はげ落ちた。代筆やカンニングは科挙の時代からあったことで、人間の歴史と共にある脇道であることを知っていても、老人は潔く思わなかった。  小平は目の前で小さな体をさらに小さくしているセイに当たった。「マーは君のおかげで食事ができているかもしれなが、君はマーを利用しているだけだよ」。とは言 . . . 本文を読む
コメント

フィクション:マー長官評伝(3)

2009-09-19 | フィクション:大物の交渉人
 小平はセイを待った。若者たちを眺めているのが好きな老人にとって、にぎやかな食堂で待つことは苦ではなかった。元気に食事をする若者たちは清々しく希望があふれている。いくら見ていても見あきることはなかった。この躍動感と活気の向こうに新たな中国が見えた。若者たちの足元には自分が築いてきた中国があり、その上に新たな中国が築かれていく。老人には過去と未来が一つに融合し見えていた。  青年と老人が . . . 本文を読む
コメント

フィクション:マー長官評伝(2)

2009-09-19 | フィクション:大物の交渉人
 小平は食堂の支配人に話を聞くと、マーの向かいに自分の食事を支度するように頼むと窓際に向かった。椅子に腰を下ろすと、マーの観察を始めた。マーは相変わらず本を読み続けていた。やはり向かいに座る老人には気づいていなかった。小平は冷静だった。支配人の話からマーが私を無視しているのではないことが分かっていた。私はまだ彼の世界に入っていない。どうすれば彼の世界に入れるのか老人は探し続けた。   . . . 本文を読む
コメント

フィクション:マー長官評伝(1)

2009-09-16 | フィクション:大物の交渉人
 経済局の二人が帰った後,マー長官は何かに憑かれたかのように机に向かっている。これは彼のスタイルというより、生き方そのものだった。マーは一度思案や調べものを始めると,辺りから隔絶された時間と空間を生きていた。電話も出ないし,来客に会うこともない。掃除や伝言や飲み物など運んで世話をするために部屋に来る者に話しかけることもない。要するにマーは変人である。この変人まーを見出してつれてきたのは小平 . . . 本文を読む
コメント

フィクション:東洋からのエージェント(4)

2009-08-21 | フィクション:大物の交渉人
 局長とトウが乗った車は外務局の建物に到着した。リュウ局長は終始無言だった。トウは重い空気と緊張で息苦しく、早く到着しないかと祈り続けた。街の様子も、天気さえも気がつかずにいた。着いた時には雨模様に代っていた。車は来客用の表玄関で止められ、二人はそこで降りた。職員用の通用口は別にあったが、警備員は表玄関に誘導したのだった。公用車が表玄関に案内されたということは、しっかりした指示があったことを意味す . . . 本文を読む
コメント

フィクション:東洋からのエージェント(3)

2009-08-14 | フィクション:大物の交渉人
 局長とトウの前に男は突然現れた。二人は凍りついた。トウは局長が驚くのを見て不安になった。局長もこの男を知らなかったのだろうか。  男はトウに声をかけてきた。「トウ課長、昇進おめでとう。なかなか頼もしいな」。局長はやっと自分を取り戻していた。「チョウ党書記、驚かさないでください。出てこない約束でしょう」。この男が党書記、党書記には若いとトウは思った。男は「リュウ局長、申し訳ない。私も実は彼に話した . . . 本文を読む
コメント

フィクション:東洋からのエージェント(2)

2009-08-13 | フィクション:大物の交渉人
 トウは経済省に出勤すると直ぐに課長から声をかけられた。「トウも大物になったもんだ。局長が呼んでいる。30分後に部屋に行ってくれ」と課長は皮肉っぽく言った。課長の嫌味よりも、局長の呼び出しにトウは驚いた。初めてのことだった。一職員を局長が呼びだすことは異例だ。トウは何も心当たりがなかった。不況時に落ち込まずに仕事をしていたのは確かだが、景気を回復させるアイデアを発揮したわけではなかった。彼はその . . . 本文を読む
コメント