うえぽんの「たぬき鍋」

日々のつれづれ、野球ネタ、バカ話など、何でもありの闇鍋的世界?

本日はお日柄も良く胃も痛くPart2

2005-05-05 15:10:47 | 雑記
(「本日はお日柄も良く胃も痛くPart1」の続き)

床についたが当然、眠れるわけがない。心臓がドキドキする。締め切り前の漫画家とか作家ってこういう心境なのかなぁ…と、思う。大体、連歌の細かいルールがわからないのが辛い。季語は要るのかとか言葉や内容がかぶっちゃいけないのかとか、そういうのも全然知らないでやらされるんだもの。しかも、明日はAくんの恩師の教授も来るという。当然、同じ大学だから知っている先生だ。参ったなぁ、ますますヘタな歌作れないよ…。
少しは体が疲れてうとうとするが、熟睡には至らないまま。枕元の時計を見ると夜中の3時である。先ほどからしきりにAくん夫婦の名前や出身地を頭の中でシャッフルさせて、何とか手がかりを掴もうとしている。出だしさえ、出だしさえ決まれば…!

いよいよ4時。こうなったらもう眠るのは諦めた。隣でピートは爆睡中だ。ガバッと跳ね起き、思いつく言葉を次々にメモ帳へ書き付ける。そして、とうとう出だしの句が決まった。ヒントは、ヨメさんの旧姓であった。こうなれば話は早い。サクサクと続きをメモに書き付け、ホッと一息ついた。完全に夜が明け「コラ、ピート!とっとと起きやがれっ!ここだけ覚えろっ!噛んだらコロス(笑)」ピートをたたき起こしてメモを突きつけたのだった。後で隣の部屋からユウキがやってきたので同様にメモを見せた。「さすがうえぽん!」「ユウキがもうちょっとしっかりやってくれりゃオレだってちょっとは寝られたんだよっ(笑)!」あまり寝ていないから逆にテンションが上がりまくりである。本番まで体力が持つのか、うえぽん。歌も歌わにゃならんのだぞ。
タカシくんもようやくやってきた。彼は歌のことは知っていたが、連歌の話はほとんど聞かされておらず「あ、何?これの一部を覚えりゃいいっての?」てな具合。それを見て「一生懸命作ったはいいけど、本番でグダグダになっちゃったらイヤだなぁ。それに、ウケなくてスベったらどうしよう」と不安がよぎった。今度は、芸人さんは本番直前ってこういう心境なのかなぁ…と、思い始める。不安神経症気味の私にしてみたら、この2日間ははっきり言って生きた心地がしない。背筋は寒いし胃がキリキリしてしょうがない。早く終わっておうち帰りたいよ~。

いよいよ、式の開始である。連歌の披露は割と早い時間だ。今だったらビールの1杯もグイッとやって景気づけの一つもするところだが(登板直前に首脳陣指令でビール飲んだ今井雄太郎じゃないけど)、当時はまだ大して飲めなかったし「飲むのは終わってから」と、そんなこともせずに、タカシくんらと本番のマイクの前に立った。ええい、ままよ!頭の中がカーッと真っ白になった。

会場は、ウケた!

連歌には新郎新婦の名前を織り込んだ。さらに、Aくんの郷里・桐生もヨメさんの郷里・京都も織物の名産地であることも考えた連歌であった。我ながら、あの短時間でよくもここまでできたもんだと、自分で自分を褒めたい気分である。

そこから先はすっかり安心しきり、いつも以上に飲んだ私である。もう一つの余興であった歌はどうなったのかはっきりした記憶がない。まぁ、後から何にも言われなかったので恐らく無事に終わったのだろう。何とか文学部卒の面目は立ったという、その安心感だけでいっぱいであった。
「いや~、良かったよ~!ありがとう!」式の終了後、Aくんが声をかけてくれた。「ああどうもね。ウケてくれたようで何よりだぁ~」半ば脱力状態の私。ここで彼が言った。

「どう、もう一泊していかない?」

その瞬間、前日駅で会った時の、あの背筋の寒気が蘇った。何やら言いしれぬ恐怖感が私を襲い、丁重に辞退して、東京に逃げるように帰ったのだった。
コメント (8)
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