今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・奥秩父 奥千丈岳、遠見山、剣ヶ峰

2012年06月01日 | 山登りの記録 2012

平成24年5月26日(日)
奥千丈岳2,409.4m、遠見山2,234.0m、剣ヶ峰2,053m

 奥秩父の未登の山も、相当地味な山ばかりになった。今回は昨秋登ろうと思っていて登れなかった山へ行くことにした。北奥千丈岳が奥秩父最高峰ということらしいが、国師ヶ岳・北奥千丈岳から延々と南下する尾根には地味な幾つかのピークがある。それらのピークのうち、奥千丈岳や遠見山に登るにはどこからアプローチしようかとずっと考えていた。
 数年前に乾徳山・黒金山に登った時に降りた大ダオを経由して行くことを当初考えたが、金峰山・国師ヶ岳への最短コース、林道川上牧丘線(大弛峠越え)から派生する鶏冠山林道西線を利用して登れば、林道途中にある剣ヶ峰もついでに登れそうだ。そう考えて、計画を立てたが、その川上牧丘線が不通になっていて相当余計に歩かなくてはならないということが分かり、そのまま保留になっていたのだった。今回、良く下調べをしなかったので、当然もう解除されているものとばかり思ってそこへ向かったのだったが…そこは依然として通行止めのままだった。

 土曜日の午前中は仕事をして、夕方家を出て秩父に向かった。雁坂トンネルを抜け、カーナビ頼りで登山口としていた鶏冠山林道分岐に向かうが、牧丘から川上牧丘線への道をカーナビが案内できず、気がついたら甲府市内になっていた。ナビは大回りでそこに誘導しようとしている…。ナビでの誘導を諦め、牧丘まで戻ってその林道への道を標識頼りで焼山峠を越えた。そして柳平の集落まで来たら、なんとそこでゲートが閉まり川上牧丘線は通れないではないか…。ゲートには「路肩決壊のため当分の間通行止め」と札が下がっている。今回のコースはそうでなくとも林道歩きが相当長いことを覚悟していたが、更に余分に歩くことになってしまった。

 時刻は午後11時を少し回っている。ゲート前の空きスペースに車を停めて、とにかくシュラフに潜り、4時に起きて出発とすることにした。しかし、目が覚めてみると、既に4時40分を過ぎていた。アラームが鳴ったのに目が覚めなかった様だ。林道を余分に歩かなくてはならないのに、あっさり朝寝坊をして出発が遅くなってしまった。気がつくと、いつのまにか隣に2台の車が停まっていて、既に主は車には居ないようだった。車の主が山登りの人かどうかは分からないが、とにかく遅れを取ってしまった。

 パンを食べて支度をして、5時11分に閉鎖されているゲートから舗装林道(川上牧丘線)を歩き出す。先ほど、軽トラックがゲートを開けて1台入っていったが、道路工事関係者だろうか?空はすっきりと晴れて、シャツ1枚では少し寒いくらいだが、爽やかな朝の空気は心地よい。高原らしくクロツグミの爽快なさえずりが山々にこだましている。遠くではカッコウも啼いている。アスファルト道路を少し早足で歩いていくが、傾斜のきつい道で、歩いているうちには息も切れ、股関節が痛む様になった。

 自然記念物「牧丘の千貫岩」の説明看板がある大きな搭状岩体(高さ45m、幅27m)が道の脇に聳えている。この岩は、これから登ろうと思っている剣ヶ峰が200万年前に噴火した時に貫入した岩体だと書いてある。そこから道は大きく弧を描くようにカーブして、一気に100m程上るきつい道になった。カーブの奥に聳えて見えるのが、その剣ヶ峰の様だ。

 カーブを登り上げると、千貫岩はもう随分下に見えている。そこからまた少し歩くと、派生する林道分岐があって、その林道も工事中なのか、工事車両が停めてあった。萌え始めた落葉松の新緑が美しい。平坦な高原状になると、間もなく鶏冠山林道西線分岐に5時44分に漸く着いた。右に上っていく鶏冠山林道入口と、左に進む林道川上牧丘線の両方を黄色い大きなゲートが塞いでいる。『路肩決壊の為一般車両通行止』の看板がある牧丘線と、一方の鶏冠山西線には『通年通行止』とあるから、かつては一般車も入れた林道も整備が行き届かず、現在一般車は通行禁止になっている様だった。ここまで歩き出してから30分以上、本来ならここから歩き出すハズだった訳で、ここまでの分はオマケになってしまった。

 鶏冠山西線は入り口が未舗装だったが、笛吹川源流側との峠ともいえるシラベ平近くは舗装路だった。落葉松林沿いの道はジグザグを切って、緩い上りが延々と続く。出発の時に電源を入れたGPSがエラーをしていた様だ。初めに表示されていたシラベ平までの距離3.8kmが、いつになっても一向に変わらない。そのまま気づかずに歩き続け、ロングコースなので帰りに時間切れになったら登れなくなるから、初めに登ってしまおうと考えていた剣ヶ峰登り口をいつのまにか通り過ぎていた。どうもこの山が、形からすると剣ヶ峰に違いないよなあと、横目に見ながら通過した山は、既にずっと後ろに遠ざかっていた。地図で周囲の景観と見比べながら、GPSの表示がおかしいと気づいた時は、もうシラベ平までは1kmの地点で、せり出した岩壁の下を通過する所になっていた。GPSの電源を入れ直し、正常に作動して、既に剣ヶ峰は通り過ぎていたことが判明した。そこから先は、林道はほぼ水平になり傾斜は緩んだ。

 はるか下に千貫岩先の大カーブが見下ろせる。行く手の東には高く、遠見山らしいラクダのコブの様な山並が現れた。高度計で1,960m、路肩崩壊の改修工事箇所を過ぎると、間もなくひび割れだらけの舗装された道になり、シラビソの高原状になると、7時37分にシラベ平に着いた。シラベ平まで2時間20分かかった。丁度そこへ、折りしも奥千丈方面からやってきたハイカーと同時の到着だった。まさかここで人に会うとは思わなかったな…。

 その単独ハイカーさんは、道の反対側で休んでいたが、間もなくゴトメキ方面に向かって行った。7時47分に北奥千丈方面の標識に従って、踏み跡程度の道に入る。細いシラビソがびっしり茂った緩い登りが、蛇行しながら続いている。急になったり、また緩くなったりしながらシラビソの樹林の中を道は進む。時々伐採されて裸地になったままの所がある。錆びた太いワイヤーロープが散乱し、切り株が枯れて白く残っている。和名倉山への道に似た雰囲気だ。そういった裸地からは、背後に幾つもの緩いコブを見せる遠見山の稜線が見えるが、空は薄墨色の雲が広がり、遠目の視界も良くない。丁度この時間は、朝のすっきりした晴天がいつの間にか全体に曇りがちになっていた。

 何段か段を登るようにしてコブを越え、行く手に見えてきた樹林の丸い山が奥千丈の様だ。この辺りから残雪が出てきた。所々は分厚く雪が残って、踏み抜くと意外に深く股まで潜る。一旦下って、上り返した樹林の小山を進むと、倒木の多い平坦なシラビソの森になり、三角点がぽつんと立っていた。どう見ても山頂という雰囲気では無いが、そこが奥千丈岳の山頂だった。奥千丈岳山頂に8時51分に着いた。出発してから3時間40分かかった。

 奥千丈岳山頂には、基部が露出した三等三角点標石と、木製の大きめな『奥千丈岳2,409m』と書かれた山名板がシラビソの木に付けられ、周囲を見回すと少し離れたシラビソの木には文字が消えかけてきた達筆名板があった。三角点標石の所で荷を置いて少し休んだ。すっかり陽は雲に遮られている。眺めも全く無く、人の気配もしない静寂な森の中だった。朝の食べ残しのパンと、おかきを摘んで憩う。

 9時13分に奥千丈岳からシラベ平に引き返す。緩い下りのシラビソ林に蛇行する踏み跡を坦々と歩いて、9時47分にシラベ平に戻ってきた。シラベ平に着くとまた少し晴れ間が広がってくる。9時58分に、道の反対側にある『ゴトメキ』と指す標識に導かれ、細いシラビソの森に分け入る。この辺りは、シラビソの木が間伐されたように沢山切られている。奥千丈への道と同じ様な、蛇行する緩い上りを続ける。背後を眺めると奥千丈岳らしい尾根の高まり程度のコブの向こうに、北奥千丈岳や国師ヶ岳が遠く見えていた。小広場といった雰囲気のゴトメキに10時23分に着く。沢山の標識が木に打ち付けられ、遭難石碑がある。ここから黒金山・大ダオ方面にはハッキリとした道が付いているが、直角に曲がって標識が『遠見山』と示す先は、薄っすらと踏み跡がある程度。赤テープも少なく、下りは特にRFが必要。

 ゴトメキから下って登り上げた小ピークには、意外なことに牧丘町(当時)が立てた鉄製の立派な方面標識がある。しかし、標識はあるものの、道と呼べる様なものは無く踏み跡も不明瞭、GPSと勘頼りで緩いシラビソの幅の広い稜線を上下する。この稜線にも伐採跡の裸地が時々現れ、錆びたワイヤーロープの残骸や、伐採時の置き土産みたいな錆びた一斗缶等が見られた。びっしりと茂る細いシラビソの登りが緩んで辿り着いたシャクナゲ藪の中に、苔むして頭だけ出た三等三角点があった。ここにも遠見山と書かれた達筆名板が木に付いていた。遠見山山頂に10時53分に着いた。三角点の脇でしばし休む。この山頂は藪の穴の中といった感じの所だ。またパンを食べて、おかきやピーナッツを摘む。こんなトコロには誰も来やしないだろう。眺めも全く無く、物好きしかやって来ない山…。
 
 11時10分に遠見山を下る。またシラビソの蛇行する踏み跡を辿って行く。遠見山を下りかけると、一箇所だけシャクナゲ藪の向こうに眺めの良い岩があり、そこから晴れて来た北方面の展望が開けて、北奥千丈岳・国師ヶ岳や金峰山・朝日岳の奥秩父主稜線の山並が見えた。12時20分に再びシラビ平に戻ってくる。思っていた程時間も掛からず、お昼までで予定の2山は登れてしまった。しかし、寝不足からか?時折襲う睡魔と疲れで、シラビ平の笹の上にあお向けになって寝転んだ。この頃になると空は晴れてきて、浴びる陽射しも気持ちが良かった。ふと気づくと、意識不明で10分くらい眠ったみたいだ。ちょっと疲れも取れ?12時半に、陽射しが強くなったシラベ平を後に、鶏冠山林道西線を引き返す。

 強い陽射しを浴びながら、すっかり晴れた遠見山の稜線を向かいに見て、林道をまた延々と戻るのだ。本日最後のピークになった剣ヶ峰への取り付きは、剣ヶ峰と手前の山の鞍部に林道がぶつかる地点とした。踏み跡も何も無いから、低い笹の下生えを適当に登っていくと、直に細いシラビソがびっしり茂るジャングルみたいな急な登りになってくる。木々をかき分け、歩き易い糞が点々とあるシカ道を拾いながら登り続けると、やや荒れた雰囲気のシラビソ林になり、傾斜が緩んで藪の向こうに笹原が見えた。疎らに落葉松が生えた笹原状の小山が剣ヶ峰の山頂だった。ここも矢張り展望は全く無い。剣ヶ峰山頂に1時37分に到着した。ここにも大分年数が経った達筆名板があった。

 早速湯を沸かしてカップラーメンを食べる。眺めも何も無いけれど、人なんか絶対にやってくるはずも無い山頂に居て、こうしてラーメンなんか食べていると幸せを感じる自分は一体何なのだろう?気持ちが開放されていく。剣ヶ峰の山頂には山桜の木が何本かあって、薄紅色の花を一杯に咲かせている。下向きの花は、清楚な雰囲気が美しい。

 2時6分に剣ヶ峰を下る。下りは南側の落葉松の植林を降りるが、こっちの方は藪も全く無く、あっという間15分で林道に降り立った。林道沿いの新緑が萌え出た落葉松林は殊の外美しい。林道の補修工事らしい重機の音が遠くから聞こえてくるが、その音は聞かないことにしよう。代わりに、かすかに聞こえるのどかなカッコウの啼き声だけに耳を澄ました。最近あまりロングコースの山に登っていないので、大分足が疲れてきていたが、休まず坦々と林道を引き返す。2時56分に川上牧丘線に合流し、急な下りの舗装林道をまたしばらく頑張って、3時24分にゲートまで戻ってきた。最初に考えていたよりもずっと早く往復できたが、その分疲れた。

 帰りは旧三富村(現山梨市)のR140沿いにある白竜閣という温泉旅館で入浴する。露天風呂も内風呂も源泉かけ流しで温泉旅館らしい独特の風情もあり、その上人も少なくて大変満足した。露天風呂では渓流や滝を眺めながら、のんびり湯に浸かって疲れた脚を伸ばす。最高の気分だ。美人の若女将さんに見送られ、入浴後は山梨を後に帰路に着いた。


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2 コメント

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静かな山に似合う達筆3枚ですね (ノラ)
2012-06-01 18:20:25
あさぎまだらさん こんばんは。静かな山にこそ似合う達筆3枚ですね。奥千丈と遠見山は同じ日に付けられたようですが,剣ゲ峰は時期が違うようで色が違いますね。奥秩父はあさぎまだらさんから逃れられた山はもう大分少ないのではないでしょうか?
シラビソの苔むした景色はいかにも奥秩父というように見えます。奥日光も良く似た林相ですね。今日はこちらは夕方雷と地震がきました。くわばらくわばらです。
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達筆 (あさぎまだら)
2012-06-01 23:09:59
どうでしょうか?3枚とも時期が違うような気がします。奥千丈のものは、初めから標高が記入されていなかったみたいです。
奥秩父の山は達筆多いですね。
残念ながらまだ随分ありますよ、奥秩父の前山級ですが…。
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