今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・新行山、木戸山(敗退)

2012年10月29日 | 山登りの記録 2012
平成24年10月25日(木)
新行山1,171.1m

 この日曜は、またお天気が悪くなりそうだ。20日の土曜の振替休日を取って、天気が良さそうなので山に行くことにした。
 県内で残雪期の山として取ってあった木戸山に、雪が無い時に登れないだろうか?ネットや地図で色々調べてみたが、残雪期以外の記録では2年前の6月にねくらハイカーさんが相ノ倉山から木戸山まで稜線沿いを往復したものがあるくらいで、雪がない時に木戸山に登った記録は他に見当たらなかった。

 この辺りはネマガリダケやシャクナゲ薮ではなさそうで、横田氏の『わたしが登った群馬300山』に、四万温泉側の小倉の滝入口附近から木戸山に延びる尾根の途中にある新行山が紹介されているが、そこまでは笹もほとんど無いらしい。この尾根を日向見川で挟んだ木戸山とは稜線続きの栂ノ頭やコシキノ頭には雪の無い時期に、すかいさんが登っている。笹は深いが掻き分けて登れたようだ。木戸山はコシキノ頭よりも標高も高いし、距離もある。正直言ってかなり難しそうだが、行って見なければ分からないものもある。現地の正確な状況が地図やネットでは分からなかった。半分は偵察のつもりで、とにかく行ってみることにした。

 水曜の夜、仕事から帰宅し、夕飯を食べ入浴してから家を出た。夜道を2時間かからないで四万温泉の温泉街の上を走るバイパス道から、小倉の滝入口の看板を見て左折。小倉の滝へは、橋が落ちて通行不能と書いた看板が立っていた。『…300山』によれば、スポーツ広場の駐車場が利用できると書いてあるが、バイパスから小倉の滝への道に少し入った高野山側の新しい広い駐車場?に車を停めた。小倉の滝方面への手前には3,4軒の集落があった。周囲は月が照らしていて明るく、夜の11時にアラームを5時半にセットして、直ぐにシュラフに潜った。

 5時半にアラームが鳴る直前に起きた。まだ薄明るいが良く晴れていた。朝日を背にしてシルエットになった不納山が東に大きく見える。ノロノロと起きだすが、あまりノリが良くない。少しぼんやりして、それでも一応地図や資料を確かめ、GPSをセットする。今日はおむすびを食べて、6時17分に広々として車も何も無い駐車場?を後にする。駐車場の西の直ぐ先で道が分岐し、左の小倉の滝入口には昨夜確認した『橋崩落による遊歩道通行止め』の看板が立っていた。50mほど先に家が数軒固まっているが、2軒以外は廃屋の様だった。

 駐車場から10分程歩くと、『四万スポーツ林』の看板があり、ここが300山に書いてあったスポーツ広場の様だ。左にその駐車場を指す看板があり、一段上には管理事務所?の様な建物も見えた。スポーツ林の前で道が2分する。右に降りていく道が小倉の滝を指しているが、通行止めの表示がある。真っ直ぐ進む舗装路は万沢林道(新湯林道)で、旧六合村へ抜けている。相ノ倉山に登った時に六合側から延々と走ったあの林道だ。ここがその起点であるらしく、道端に竣工記念碑が建っている。

 右の道を降りると、すぐ新湯川を渡る小倉橋に出るのだが、その橋が崩落して通行止めのバリケードが橋の付け根を塞いでいた。川を見下ろすと、崩落したコンクリート橋の残骸が見えた。この川の向こう側に行かなくてはならない。右手に下り、茨の多い藪をはらって川に降りた。川は水量が多く簡単に渡渉できそうも無い。橋が落ちている附近がそれでも一番浅そうだったので、少しばかり足が濡れそうだったが強引に飛び石で向こうに渡った。靴に水が入りかけたが中までは入らなかった。帰りは落ちた橋の西側に進むと、上の道に上がる歩道があるのを見つけた。最初から薮をはらわなくても良かったのだ。

 新湯川の対岸に渡ると、そこには『小倉の滝40分』の看板がある。そこから小倉の滝への林道をジグザグに少し登り、右に踏み跡が見られるカーブミラーの所から右手の植林尾根に入る。新行山へは、300山の記述やネットでの情報から、とにかくこの尾根を上に登れば良いらしい。初めは薮があったが、直ぐに薄暗い杉の植林になり、登るに従って尾根筋がはっきりすると雑木の明るい尾根になった。明るい背後は、木々越に高野山らしい山が見えている。

 この尾根はクリの木が多く、落ち葉が積もって薮の無い足元にはクリのイガが沢山落ちていた。そのクリのイガに混じって、クマの新鮮な「落し物」があちこちに見られる。クマの密度が高い山らしい。事前にその辺の情報も得ていたので、今日は何時もの倍のクマ鈴をザックに付けているが、なるべく背をゆすって鈴が大きく鳴る様にしながら登っていく。クマの「もの」やシカの「もの」が尾根筋には沢山ある。
この後、木戸山近くまで登ったが、上に行く程、獣の気配は感じられ無くなった。最近は山奥に獣が居なくて、人里近くに降りているというのは、どこの山に登っても感じている。

 10cm程の赤テープを、丁寧に端だけ貼り合わせた特徴のあるマーキングが、この辺りから1,342m峰までぽつぽつ見られた。同じ人が付けたのだろう。1,342m峰から先では全くマーキングは見なかった。足元に笹が少し見られるようになって、クリの木が無くなり、細いブナやカエデが混じる林になった。GPSがセットしてある地点に近づいた事を知らせるアラームが鳴る。新行山頂附近らしいが、同じ様な尾根で、山頂がどこなのかは良く分からない。しばらくそのまま登っていくと、何時のまにか笹は膝丈くらいになる。残念ながら、踏み跡らしいものも無いから、雪の無い時期に登る人は居ない様だった。急な登りになって、ブナが茂る明るい高まりになった。新行山を通り越して、その先の1,342m峰に8時32分に着いた。ここまでで2時間ちょっとだから、この時点ではお昼には木戸山に登りつけるだろうと高をくくっていた。

 細いブナが黄色く色付いている。いつの間にか、クマザサは腰丈ほどになっていた。でも、この辺りはまだ簡単に掻き分けていける。1,342m峰山頂にある小さな岩に腰掛けて少し休む。周囲は1m丈の笹が囲んでいる。少し先に歩くと、木々が切れて笹原になった。この笹原から南の眺めが広がる。登ってきた尾根が下に伸び、新湯川対岸の高野山はもう低い。その山並の向こうには高田山や薬師岳・吾嬬山、遠く榛名の峰々が薄っすらと見えていた。小腹が空いたのでクリームパンとかりんとうを摘んで水を飲んだ。朝は寒かったが、登ってくるうちに、いつの間にか背中には汗をかいて喉も渇いていた。

 一休み後、また歩きだす。笹原は緩く下りになり、笹は胸程の高さだが、密度が濃くなって掻き分けて行くのが段々厳しくなってきた。歩く速度は大分遅くなる。時々は身を没する程になり、前が良く見えない。次第に笹の中を泳ぐようになってきた。ずっとあった赤テープは1,342m峰の岩の附近に付いていたのを最後に見なくなった。ここから先では一切マーキングは見なかった。ブナの葉は黄色からやや茶色くなっている。そこに混じるミズナラは茶色く枯れた様な色合いだ。しかし、カエデやモミジは鮮やかに紅葉していた。空気は澄み、秋の気配が色濃く漂っていた。尾根はまた少し広がり、向こうには緑の笹の斜面に赤や黄色に色づいた木々が疎らに見られる1552m峰が近づいてくる。1,552m峰は地図で見ると2段になっている様だから、下から見上げると、右に見えているコブがそれらしい。

 南側は時々笹原になって落葉松がその周りを縁取っている。南の眺めは良く、西には松岩山が見え、その向こうには青く霞んで浅間隠山辺りが確認できた。しばらく木々が混じる平坦な尾根が終わると、笹の急な1,552m峰前衛の登りになる。笹は身を没する上に、登りになると下向きに倒れているのでとても普通には登れなくなった。笹を掴んで腕力でこの急な斜面を登っていくが、汗でびっしょりになった。足元は地に着かず、笹の上を歩いている感じだ。もう、とても今までのペースで登ることは厳しくなった。ようやく、10時22分に1,552m峰の前衛に登りついた。この先、もう一段木々が多い笹の急斜面を登った上が1,552m峰の様だ。

 木々を透かして日向見川対岸の栂ノ頭が見える。頂上まで樹林にびっしり覆われている。南の反対側は赤沢山の鉄塔が並ぶ稜線が見えていた。笹はほぼ胸程だが、時々埋まってしまうほど深い。もう一段の笹の急登をしなければ1,552m峰に登れない。しばらくは平坦な尾根が続き、その先で南側が少し高く細くなった尾根が続いているが、右に一段下がった日向見川側は平坦な笹原が大きく広がり、凹地の様になっている。笹原の笹は深そうだ。

 その笹原の向こうには紅葉に彩られ突き立った岩峰が見える。それがコシキノ頭だ。コシキとは甑(こしき)のこと。その昔に使われた調理器具で、炉の上に瓶型の土器を載せ、米などを蒸した蒸し器のこと、つまり、ぽこんと突き立った岩山を遠くから眺めると甑の様に見えるのでこの名が付いたようだ。秋田県にある丁(ひのと)山塊の甑山も突き出した岩山で、同じ様な名称由来の山だ。この甑山は、随分昔に鳥海山に登った後、次の栗駒山に向かう車窓から見て登りたいと思ったのだが、残念ながら未だに果たしてはいない。こうして間近に眺めると、コシキノ頭は何とも登高意欲の湧く山だった。名前が甑岳とかなら、もう少しメジャーな山になったかも知れないが、地味な名前のせいか、今でも奥まって人知れず隠れた山になっている。

 赤く鮮やかに紅葉したモミジの木が疎らにある笹の急斜面を、また手づかみで登っていくが、さすがに大分こたえてきた。少しずり上がっては呼吸を整え、またずり上がるという調子。笹に埋まっているので、上も下も良く見えない。足元は笹の上で地に着かない。喘ぎながら、どうにかブナが並んでいる高みまで登りきると、そこが1,552m峰の上だった。1,342m峰からは、深い笹漕ぎと2段の急登で、遅々とした登りになった。1,552m峰に辿り着いたら、もう11時10分になっていた。1,342m峰からの2段の笹の登りは、直線距離で1.2kmしかないが、2時間半を費やしたことになる。GPSで確認したところ、木戸山山頂まであと1kmある。この調子で登っているのでは、あと最低2時間は掛かるということになる。この時期、午後4時半には暗くなることを考えれば、もう今日は木戸山まで登れそうも無いというのが正解だ。笹薮の急斜面の登りが続き、股関節も痛むようになった。手づかみで登ってきたので、腕の筋肉も限界に近い…。胸丈の笹を漕いで、幾らか下り気味になったところで、目の前にこの日初めて木戸山が姿を現した。

 真っ赤に色付いたカエデの木々の上に、木戸山の稜線はまだ遥かに高い。丈高い笹の尾根を緩く下り、今度は少しずつ登りになり、南側がまた笹原で眺めが良くなった。高度計で標高1,600mの地点だった。北側に少し降りて笹を掻き分けると、目の前に錦織のコシキノ頭の稜線が素晴らしい。その稜線の向こうには、県境稜線の平標山、仙ノ倉山、エビス大黒の頭等が見えていた。既に11時30分を回っていた。残念ながら、今日はここでリタイアだ。

 尾根に戻り、薮の中でしばらくパンを食べたりして休んだ。12時まで笹薮の中で休んでから往路を引き返す。帰りも残念ながら笹薮を漕ぎながらで、少しも早く歩けない。急な笹の斜面だけは滑り落ちる様に早く降りたが、平坦な笹薮になると股関節が痛んで、少し歩いては休み、また少し歩いては休むといった状態だった。1,552m峰一段目の笹の急斜面からは南東に素晴らしい眺めだった。また、そこで薮の中に座って一休みして景色を楽しむ。こんな状態で、2時03分にやっと1,342m峰に戻ってきた。

 1,342m峰で笹薮からも開放されたが、股関節が痛むので早く下れない。ゆっくりゆっくり尾根を降りていく。2時58分に新行山山頂に着いた。行きには山頂がどこか確認できなかったが、低木薮に覆われ行きには避けて巻いた所、ほんの少し周囲より高い薮の中に三等三角点を見つけた。新行山の三角点を見つけ、木戸山にも行き着けなかったから、これはささやかな満足だった。

 薄暗くなってくる中、クマの落し物が多いクリ林の尾根を安易に下り、赤ペンのマークがあちこちにあるのに惑わされて、登り口と違う方向に降りてしまった。杉の幹のあちこちに付いた赤ペンマークは、林業関係者が付けた何かの印らしく、ルートを示すものではなかった様だ。杉の植林帯で行き詰まり、林道への降り口を捜して右往左往する。急な斜面を下ったら直ぐ下が崖になって降りられなくなった。少し登り返し、どうにか薮をごそごそ掻き分けて、行きに入った地点の少し先の林道に降りた。やれやれ…。

 疲れた足を引きずって、また橋が崩落した所を渡渉し、『四万スポーツ林』に登り上げた。とぼとぼと廃屋の多い集落を過ぎ、小倉の滝入口に戻ると、行きに気づかなかった貼紙が杉の木に付けられていた。それによれば、橋が落ちた所為ではなく、「クマの目撃情報が多いので」小倉の滝へは通行止めとある。手前の道路には「橋崩落のため」と書いてあるのに?どっちにしても、現在小倉の滝には車では行けないが、歩きでも、ここにあるようにクマが出るのでご遠慮くださいということの様です。考えるに、山奥にはクマの気配すらなかった。やはり人里近くにクマが居ついている様だ。4時24分に駐車場に戻ってくる。疲れ果てて、こんな時間になってしまった。夕陽が不納山を照らしていた。

 帰りは四万温泉の日帰り温泉施設である『清流の湯』に寄っていく。川に面して、温泉街の向かいの道路から見えてしまう所に開放的な露天風呂もある。ここの温泉は泉質、雰囲気とも最高だった。休日は非常に混雑するらしいが、幸い平日でお客も疎ら、ゆっくりと疲れた身体を癒せた。

 今回は残念ながら木戸山まで届かなかったが、まあ、当然といえば当然で、もし薮が無くても、日の短いこの時期にコースタイム的にはぎりぎりだったろう。クマザサの単一薮だが、急斜面の深い笹薮登りだけは堪えた。腕の筋肉痛は翌日だけで治まり、股関節の痛みは一晩寝たら治った。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
赤が多いようですね。 (しぼれ)
2012-10-29 17:35:09
あさぎまだらさん こんばんは
笹藪分けお疲れ様でした。展望もあり、深山の紅葉もいいですね。
ところで四万といえばヤマビル、近くの高田山など11月以降にと思っているのですがこの辺りは大丈夫だったのでしょうか。
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見事な薮山行ですね (ノラ)
2012-10-29 22:17:31
あさぎまだらさん こんばんは。記録拝見しました。本格的な長丁場の籔こぎですね。笹の海の中を泳いでいる感覚でしょうか。なかなか,最近は見かけない記録ですね。読んでいて笹にむせるとはこういう場所を言うのでしょう。ほんとに御苦労さまでした。昔なら直ぐ飛びついたのですが,なかなかその気にはならないですね。紅葉は確かに美しい。新行山までは行ってもいいです。三角点を見られて笹やかな収穫と書かれてますが,貴重な収穫と思います。
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薮の寂峰 (あさぎまだら)
2012-10-30 01:02:54
しぼれさん、ノラさんこんばんは。
クマザサ単一ですが、急な斜面登りで精を使い果たしました。1342mまでは藪も薄く、楽勝と思ったのはやはり甘かったです。もう少し距離が短ければとも思いましたが…。
笹の緑にモミジやカエデの赤や黄色で正に錦秋といった感じです。木戸山もコシキノ頭や栂ノ頭も忘れられた寂峰という感じでぼく的にはこういう山は好きですね。秘峰という程のものではないと思います。
蛭もダニも見かけなかったですが、クマの密度が濃い山で、四万周辺はクマの被害が多いようです。クマは用心ですね。
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