今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

田沢奥山(家の串)

2006年05月14日 | 山登りの記録 2006
平成18年5月14日(日)
(田沢奥山1260m・1215.6m無名峰)

 5月も中旬、天候不順で既に梅雨のような日々が続いている。ところで、今年はまだヤシオを見ていない。時期的にはもう遅いが、何処か人が少なくてまだ咲いていそうな所はないかと探していた。

 黒保根の奥にアカヤシオの群落があるということを聞いているが、それが何処なのか?合併して黒保根は同じ市内になった。地元だから、ぜひ一度は行ってみなければならないだろう。市のhpによると、林道から眺めるだけで近くには行けないとある…。そんなことを調べていたら、ネットで田沢奥山という山があると言うことを知った。どうも、この山こそがアカヤシオの大群落がある「その山」らしいのだ。

 「安蘇の山懐から」というhpに詳しくこの辺りのレポートがある。参考にさせていただいて、取りあえずその「田沢奥山」なる山に行ってみることにした。田沢奥山という名前は便宜上付けられたようで、実は名前が無い山らしい。地元ではこの一帯を「家の串」と呼んでいて、一つ一つの山は無名なのが真相らしいが、既にハイカーの間では田沢奥山という名は定着しているらしかった。地元なのに何も知らないのはぼくだけなのだった。

 とはいえ、この赤城山と袈裟丸山に挟まれたかなり広大な山域は登山対象のエリア外で、地図に名前が記載されている山も少なく空白域といってもいい地域だ。家の方から赤城山や袈裟丸山を眺めるとき、その間にあるラクダの瘤のような山並みは、高圧鉄塔が越えている1,200㍍前後の名もない山々なのだった。実は以前からこれらの山のうちでも高い三角点のある1,257㍍無名峰を登ろうと地図を見ながら計画したことがあったが、これも未だに果たしていないのだった。土曜に支度して出かけようとしたが、雨が降ってきて中止。明くる日曜は、午後から晴れの予報に変わり決行とした。

 家で朝食を食べての出発。R122を旧東村(現みどり市)の小中に向かう、袈裟丸や赤城山の上に青空が広がり初め、雨後のすがすがしい新緑が鮮やかで気持ちが良かった。小中から大滝方面に向かい、最奥の集落がある追付橋(おっつけばし)から少し先の分岐を左折、小中林道の終点まで入る。小中林道は雨で崩壊した箇所も多く、奥に進む程路面に岩くずが散乱する荒れた道になった。渓流釣りと思われる車が途中に何台か停まっていた。

 終点の広場に車を停め、支度をして8時半出発。桜川の渓流に沿った踏み跡を奥に進む。晴れてきたが、秋の空のように高層雲がちぎれて飛んでいく、上空は風が強いようだ。近くに大きな滝があるのか?と思うような、鈍いうなりが聞こえている(後で、この音は高圧鉄塔を吹き抜ける風の音だと分かる)。
 桜川本流に注ぐ沢でモリアオガエルの声がしている。新緑の渓流は目にも鮮やかで気分も良いが、踏跡は薄く次第に不明瞭になってきた。Hpにあったように、左左右と沢を進んで高度が上がる。

 木の間越しに行く手に高く田沢奥山と思われる丸い山が見えている。沢はここで二分するが、右はすり鉢状になっているので、やや斜度の緩い左の沢を進む。最後は詰め状になって急な滑りやすい斜面を登り詰めると稜線に出た。ここまで特に赤テープやルートを示す様なものは何もなかったが、稜線沿いははっきりした踏み跡があり、赤テープもうるさいほどあちこちに付いていた。稜線はナラの自然林(二次林)で、黒保根側は落葉松の植林にカヤトが点々と見えた。行く手の田沢奥山までは一登り。右手の東(あずま)側は崖状になっている。桜川で最後の分岐を右に進めば、このすり鉢状の泥の崖をよじ登らなければならなくなるだろう。下生えの笹も低く、薮も無くて歩きやすいが、ここも至るところカモシカやシカの糞が散らばっていた。

 小山状の田沢奥山に9時半到着。林の中で眺めは良くない。中央に真新しい主図根点標石があり、そばのナラの木に「田沢奥山」の山名が書かれたプレートが巻かれていた。さて、ここに書かれている田沢奥山の標高についてだが、1,216㍍とある。参考にさせていただいたhpにも、この1,216㍍が標高として書かれているが、2万5千図で見ると標高の記載はないが、コンターから1,260㍍と読みとれる。この主図根点の標高を調べた訳ではないが、1,216㍍というのは誤りではないかと思う。明らかに1,260㍍を越えているだろう。

 田沢奥山から木の間越しに袈裟丸山が見えている。残念ながら、今日の目的であるアカヤシオはこの辺にある木を見る限り、もう既に終わってしまったようだった。ほんの少し咲き残ったものが枝の先に見えるが、その下には落花したピンクの花が散乱していた。尾根伝いになだらかな旧群界尾根(今は市界尾根)を進むが、どこにもアカヤシオは見あたらなかった。わずかに咲いている花と言えば、時々現れるオオバカメノキとつぼみが目立つミツバツツジくらい…。落胆した心持ちでしばらく先の上りになった地点から引き返した。遠目にピンクの花と見えた木のそばまで行ってみたら、それはヤマザクラだったからだ。

 田沢奥山を鉢巻きして元の稜線に戻り、高圧鉄塔とその先にあるこの辺りで唯一の三角点峰1215,6㍍無名峰に向かう。なだらかな雑木の稜線は歩きやすく、踏み跡も明瞭だった。122㍍もある「いわき幹線」と書かれた高圧鉄塔の側を抜けて、ぽっこり盛り上がった1215,6㍍峰付近にもアカヤシオらしい花色は見えなかった。高圧鉄塔を強い風が吹き抜けていくので、滝のような異様なうなり音がしているのだった。

 11時5分に1215,6㍍峰に到着。ここも雑木に囲まれて展望はない、中央に三等三角点があるだけの静かな山頂だった。アカヤシオの花も散り残ったものがほんの少し枝先に付いているばかりだ。しかし、周囲に落ちている花の感じからして、他でも報告されているように今年のヤシオは不作であるようだ。去年は何処に行っても見事なヤシオの花に会えたが、今年はその次の年に当たり花付きが悪かったのか?残念ながら、アカヤシオの無い田沢奥山(家の串)周辺はあまり魅力のある場所とは言えない。稜線は雰囲気がいいが、高圧鉄塔が全てを台無しにしている様に感じた。
 ぜひ、次の機会はアカヤシオの咲いている時に訪ねたいものだ。

 風が強いので寒く感じる、パーカをはおりカップ蕎麦で温まった。
 11時半まで無名峰で休んで引き返す。途中、稜線上に岩が突きだした所があり、その岩の上からこの日一番の展望があった。裏から見る赤城山の上には、まだ雲が蓋のように載っていた。黒保根の低い山並み(正に襞のような山並み)に、点々と見える白いものはヤマザクラのようだった。

 高圧鉄塔から管理用路が下に延びているらしい、帰りはそれを下ろうかとも思ったが、手前の沢を下る踏み跡があったので、そちらを選んだ。幾つか小さな沢を横切り、植林の仕事道として使われていた様なその踏み跡は、不明になったり明瞭になったりして最後は急な沢で消えた。その沢を少し下ると、ぼくの車が嘘みたいにホンのすぐ下に見えた。間もなく管理用路に出て、林道広場に降りた。管理用路は広場から直ぐ上に向かっていたのだが、朝は気が付かなかったのだ。ぼくがたまたま下降した沢はその広場から突き上げていた沢だったというわけだ。そんな訳で、12時丁度に車に戻って軽いハイキングは終わった。下りは30分しか掛からなかった。

 新緑の沢は光に満ちていた。思いがけなく晴天になった日曜日。早すぎる下山で、大して汗もかかないし、温泉に入るまでもない。1時には家に戻ったのだった。

(登られる方へ)
 田沢奥山は最近アカヤシオの群落地として知られてきた様ですが、稜線沿いはともかく、そこに至るルートは全く整備されていません。アプローチこそ短いですが、地図は必携、天気が悪いときや見通しが利かない時はお奨めできません。
 一般的には、ルートが不明瞭な桜川を詰めるコースより、林道終点広場からすぐ上に向かう高圧鉄塔巡視用の管理路を往復する方が安全でしょう。稜線沿いは晴れていれば不安はありません。
 小中林道は最後がかなりの悪路ですから、車高の低い車は舗装が終わる辺りまでにした方が良さそうです。
 老婆心ながら付け足しておきます。

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