今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・鉢伏山、二ッ山、高ボッチ

2011年06月09日 | 山登りの記録 2011
平成23年6月5日(日)
 鉢伏山1,928.5m、前二ッ山1,842m、ニッ山1,826.4m、前鉢伏山1,836.1m、高ボッチ山1,664.9m

 記録的に早い梅雨入りだ。5月中に梅雨に入ってしまった。鶏冠山に登って2週間、そんな訳で、週末は雨模様の空を恨めしげに眺めていた。本来なら、まだ平年の梅雨入り標準日にもなっていない。この週末も当初雨模様の予報であったが、土日は晴れに変わった。土曜は晴れて暑かったが、日曜は関東は再び曇りマーク…少し前から次にと予定していた中信方面はどうだろうか?

 『八ヶ岳中信高原国定公園』の中信高原は、どちらかというと山登りというよりは高原を巡る観光スポット、あるいはキャンプなどの野外活動のエリアとしての方が、この一大高原のイメージだろう。おそらく日本でも有数の広さを誇る高原地帯で、いわゆる高原という一般的なイメージは、このエリアに含まれる霧ヶ峰や美ヶ原、蓼科高原を含めた一大観光ゾーン、または避暑地ゾーンが作るものであり、長野県でもメジャーな観光ブランドだろう。
 しかし、ここは広々とした高原である他に、なだらかで開放的な多くの山々がある。霧ヶ峰には車山を初め、鷲ヶ峰や蝶々深山や三峰山、美ヶ原には王ヶ頭や王ヶ鼻や茶臼山、そして諏訪湖の北には鉢伏山や高ボッチ山、蓼科には蓼科山や八子ヶ峰などだ。蓼科山は別としても、それ以外の山は山や高原を巡る自動車道路から簡単に登れてしまうものが多いからか?一般的には登山者が多いところではない。どちらかというと、ドライブのついで、キャンプのついでに登られるようだ。そんな意味からも観光地としてのイメージからか、登山をする人たちからは却って敬遠されているようなところでもある。

 そうはいっても、これらの山々は景色の良さ、草原や湿原の素晴らしさ、花の多さ、と、どれを取っても一級の魅力を持っているのも確かだ。ビーナスラインや観光道路が縦横に伸び、それがために観光地となっているという点を除けばではあるが。
 ぼくも、霧ヶ峰や美ヶ原には子供の頃から何度も行っているが、キャンプや観光であって、登山、ハイキングをするためには登ったことがない。子供が小さかった頃、キャンプのついでに王ヶ頭や車山に登っているくらいだった。
 
 中信高原の山々に登りたいと思った理由の一つは、その展望の良さにもある。大分前置きが長くなってしまったが、今回はまず手始めに、北アルプスの展望台としても知られる鉢伏山と高ボッチに向かうことにした。6月も中旬以降になると、ここはレンゲツツジの名所ということなので、静かなその直前を狙った。ただ、鉢伏山と高ボッチだけでは、車から降りてあっという間に山頂だ。そこで、鉢伏山からヒトケも少ない静かな中央分水嶺である二ッ山までの往復を入れることにして、土曜の夜に長野に向かった。

 碓氷峠を越えて長野に入り、軽井沢から佐久を経てR142で和田峠を越える。ハズだったのだが、和田峠の旧道は土砂崩れで通行できず。新和田トンネルを潜るだけでまた600円取られてしまった。こんな短い大したこともない道路が何で有料なのだろう?ここから下って岡谷に入り、塩尻峠附近から高ボッチへの道があるはずなのだが、ここは塩尻峠の新しいヘアピン道路を丁度串刺しするようにその道が上に向かう様になっている。ナビがその入口を上手く案内してくれなくて、ややまごつくが、小さな『高ボッチ高原』という看板をようやく見つけて、その高ボッチに向かって上っていく。高ボッチスカイラインとかいう名称には似合わない、舗装された林道程度の狭い道路をぐねぐねと上るのだった。

 平坦な高ボッチ高原に出て、そこから更に狭隘な道路を上り、ようやく午前0時過ぎに鉢伏山荘の駐車場に着いた。広い駐車場には一台も車が停まっていなかった。今のところ星空が見られる。下の鉢伏山荘は明かりが付いていた。アラームを6時として、直ぐにシュラフに潜って眠った。

 5時過ぎに目が覚める。周囲は濃いガスで視界も無く、強い風が吹いている。残念な雰囲気で、またシュラフに潜った。その後アラームで一度起きたが、全く同じ状態なので、少しふて寝を決め込んでぐずぐずしていた。7時近くなり、少し霧が薄くなってきたが、矢張り周囲の山は見えない状態。あまり気が乗らないままパンを食べ。7時10分に車を後にする。この時、霧が一瞬晴れて、丸い鉢伏山がちょっと姿を見せたが、直ぐにまた霧に隠れてしまった。

 駐車場の奥から両側にロープが張られた遊歩道になり、使われなくなった古い木造の小屋(旧鉢伏山荘だろうか?)が、霧の中から浮び上がってくる。鉢伏山側に一つと遊歩道側に一つ、都合二つの廃墟の山小屋が見える。遊歩道側の小屋は鱗の様な木片で外壁が造られ、尖った屋根のおしゃれな雰囲気で、寺の本堂みたいな格好の現鉢伏山荘よりもセンスが良い。その小屋の先の尾根に分岐があり、鉢伏山と「二ッ山・三峰山方面」に道が二分していた。ほぼ20メートル程度しか視界は無く、強い風が吹いて、なだらかな鉢伏山の草斜面が広がっているが、山頂方面は見えない。やや傾斜が出てきて少し登ると、もう平坦な山頂の雰囲気。しばらく歩いた先に、低い笹に縁取られた鉢伏山の山頂標識と三角点があった。駐車場から20分しかかからない。

 霧が去来する幻想的な雰囲気…ともいえるが、全く何も見えない。笹と草原の平坦な山頂は山頂というイメージではない。南側には縁取りをするように落葉松が並んでいる。ここも二等三角点の角が欠けている。長野県の山の多くで、この様に三角点の角が破損しているのを随分見かけるが、特定の人物があちこちの三角点をこうして破損して回っているのだろうか?良くないことだ。「山頂」から100mくらい南に道を進むと、円筒状の古びた展望台に出る。上に上ってみるが、元より濃い霧で視界は全く無い。直ぐに降りて、道を戻る。山頂の北側にうっすらと鳥居が見えるので行ってみると、鉢伏大神と書かれた祠があった。この様に全く景色も無く周囲の状況も余り良く分からない山頂を、気落ちした気分でまた下った。辺りの草は低く、まだ枯れ色で、交互に広がる笹も丈が低い。花は全く見られなかった。

 二ッ山方面への分岐から、車の轍がある広い道を二ッ山に向けて進む。時々霧が薄れて、少し周囲が見えるようになるが、また直ぐに濃い霧に包まれ視界が無くなる。上空には、時折日輪が薄っすらと見られるので、上空は晴れていて、この山だけすっぽりと雲の中ということなのだろうか?

 しばらく起伏の無い広い道を進んで、笹薮で林道終点となり、その先は低い笹が道を隠し気味の細道になった。笹が濡れているのでカッパのズボンを履く。ここは平坦で、すね程の高さの低い笹に覆われている。笹の中には点々とはめ込まれた様に平たい砂岩が象嵌細工さながらの面白い眺めだった。笹に隠れた細道も、赤テープや『鉢伏山⇔二ッ山』の看板が時々あるので迷うことも無いが、このコースは余り人が沢山歩く所ではないのだろう。やがて笹の小山状となって次第に起伏が出てくる。

 緩い上り下りになってきた。右手(南側)は落葉松が多く、左手は下のほうまで笹の斜面が広がっていた。ちょっとした笹のピークに登りつくと、『ここは前二ッ山頂上・岡谷区』と書かれた白い看板が霧の中にぼおっと浮かび上がった。ぼんやりと夢の中を歩くような感じで、8時33分にもう前二ッ山に来てしまった。相変わらず眺めは無い。自分がどんなところを辿っているのかも、良く分からないまま。人の気配も全く無い。カッコウやホトトギスの声が、ぼんやりと霧に浮かぶ落葉松の奥から静寂を破る。景色こそ見えないが、こんな風に人の気配も無い奥山の雰囲気は、ぼく的には大歓迎だ。

 笹に覆われ、落葉松が頂上部に並んだ小山(横川山) を過ぎると、大きく下る道になる。折りしも霧が薄くなり、すっきりとは行かないまでも、行く手の二ッ山が少し離れて見えてきた。北側に笹原が広がり、南側には落葉松やダケカンバが茂る、この稜線特有の山並みだ。ちょっと眺めに期待が持てそうになってきたので、気分も良くなる。1,700m台まで大きく下って、そこからまた上り返しは少しきつい。

 二ッ山への最後の登りになると、うっすらではあるが、北に美ヶ原の溶岩台地が見えるようになった。王ヶ頭や王ヶ鼻のアンテナ群もそれと分かる。振り返る来し方は、笹の丸みを帯びた山並みが見えるようになる。しかしまだ、鉢伏山の頂上部は雲を被っていた。少し汗ばんで、ダケカンバの疎林を抜け、平坦な笹原が広がり広々とした二ッ山山頂に9時6分に着いた。足元には二ッ山と手書きされた小さな山名板があり、少し離れて「ここは二ツ山1826m・三峰山⇔鉢伏山」と書かれた白い立派な方面標識がある。角を欠いた標石がここにもあるが、これは三角点ではない。山頂から南に延びた踏み跡の向こうに見える笹と落葉松の小山(南峰)に三角点がある。そこまで笹を分けて進むと、藪っぽいそのピークに土に埋まって一寸だけ頭を出している三角点標石があった(埋まっていたので何等かは不明)。この二ッ山山頂部一帯は、広々とした起伏の少ない笹原で、枯れた落葉松が林立ちになっている異様な景観だった。この立ち枯れた落葉松は、あるいはシカの食害によるものではないかとも思われる。枯れていない落葉松に樹皮を剥がされているものが多く見られた。

 北峰に戻り、そこで休憩とした。北側に進むと北方面の眺めが広がった。決してすっきりとはしない眺めではあるが、美ヶ原や手前の山々そして三峰山等が見えた。この鉢伏山から二ッ山・三峰山の稜線は水系を分ける中央分水嶺の山並みで、中信高原にあっては、唯一観光地化を免れた静寂な山域ということだ。この山の北と南にダムの建設計画があったが、どちらも前知事の方針で撤回されたのだという。

 山頂とも思えない雰囲気の二ッ山は、南や西を見ると笹原に枯れた落葉松が林立ちした景観だが、北はこんもりした笹の丘が急角度で落ち込んで樹木も無く、美ヶ原方面の眺めが利く。東の三峰山方面は落葉松が目隠しして見えないが、ここから三峰山までの稜線は、この附近の山とも思えない藪とRFの領域で、もし車で来たのでなければ是非辿ってみたい、ぼく好みのルートらしい。どっちにしても、二ッ山から300m以上アップダウンがあって笹も深いという、鉢伏から二ッ山までとは比べ物にならないきついコースということだ。

 山頂中央の落葉松の木の下で、おむすびを食べながら誰も居ない静かな山の雰囲気を楽しんだ。9時46分に二ッ山山頂を後にする。二ッ山から前二ッ山への間にある横川山とプレートがあった小ピークで、鉢伏方面からやってきたご夫婦らしい2人とすれ違う。前二ッ山の笹の急な登りは結構きつい。ここで、初めて雲が切れ陽が当たる。陽が当たると、何となく暑い感じ、青空が全天の3分の2くらい広がるが、それも一時で、鉢伏山に戻る頃にはすっかりまた曇り空になってしまった。しかし、まあ霧が晴れただけでも良しとしよう。前二ッ山を10時21分に通過する。

 前二ッ山から鉢伏山までの稜線は、樹木も少なく笹の広がった緩斜面が続く、二重稜線(線状凹地)の周囲を落葉松が縁取る、景観的にも優れたところで、静けさが満ちているのも良い。稜線南側の落葉松は、風衝のためなのか、全て北に大きく曲がっている。何故、北側に傾いているのだろう。普通、冬の季節風が激しいせいだとすると、南に傾きそうな気がするが…風が来る方向に傾いているのが不思議な感じだ。あるいは、ここは風向きが複雑なところなのだろうか?木がみんな傾いているので、山の傾斜の角度と、傾いている木々が作る錯覚で、しばらく見ていると平衡感覚がおかしくなるような眺めだった。

 緩い稜線沿いの細道は、そのまま鉢伏山山腹の林道に繫がって、稜線の北側を巻くように鉢伏山頂への遊歩道と合流した。丁度、親子連れのハイカーが一組、山頂に向かって登っていくのが見える。車でやってきて、こんなに簡単に高山の雰囲気が味わえる山でありながら、その上日曜日であるにもかかわらず、他に人の姿も見えないくらい、ここは静かな山だ。おそらく、もう少しすればレンゲツツジの名所ということだから、もっと賑やかにはなるのだろうけれど。

 行きには霧に隠されて見えなかった、鉢伏山の円やかな草原状の全貌が今は良く見える。広々として、全体が牧場のような景観だった。残念ながら未だ早いのか、その草原は枯れ色が優勢で、花の姿はほとんど見られない。二ッ山までの稜線でも、キジムシロの黄色い小さな花と、何故かこの標高でスミレがぽつぽつ咲いていた程度だった。花の山として名高い片鱗は、今日は見られなかった。

 鉢伏山頂と鉢伏山荘を繋ぐ道から、そのまま前鉢伏山に向かう。霞んですっきりとした眺めではないが、北には相変わらず美ヶ原の王ヶ鼻の断崖ピークが良く見える。両側をロープで限っている遊歩道には、道の外の草原に入らないよう書かれた看板が幾つも付けられている。前鉢伏山まではわずかだった。11時26分に前鉢伏山山頂に着いた。ここから下に道が下っている。うっすらと松本の市街が見下ろせた。晴れて透明度の高い天気ならば、北アルプスや松本盆地がさぞかし良く見えることだろう。

 前鉢伏山山頂には山名標識と三角点があるが、ここの三角点標石も四隅が欠けていた。何等であるのかも、文字部分が損傷していて読めない。何故、こんなことをするのか、悲しい思いだった。写真を撮って、残りのおむすびを食べ、山頂を引き上げようとしたら、入れ替わりに年配のご夫婦がやってきた。

 11時52分に鉢伏山荘の駐車場に戻る。山荘には人が居るようだ。駐車場には5台ほど車が停まっていたが、やはり、静かで人の姿は見なかった。予定より遅い出発だったが、二ッ山まで往復してもまだお昼前。車に乗って山を下る。

 高曇りのぼんやりした視界ながら、下の高ボッチ高原の大アンテナが良く見える。ヘアピンの狭い山稜をからむ舗装路を下って、高ボッチ第二駐車場に降りてきた。この広い駐車場にも車は10台も無い。やはり、ここも静かなのだった。高ボッチ山頂まで400mと書いてある。車から降り、12時12分に高ボッチ山頂への遊歩道を歩く(まさに歩く感じ)。戻ってくる人(観光客です)数人とすれ違うが、高ボッチ山頂と書かれた高い標柱とケルンが積まれ、展望方位板がある山頂に12時18分に着くと、そこは全く無人だった。駐車場から6分だった…。晴れていれば、ここは鉢伏山以上に眺めが良さそうだった。山頂の南端に行くと、眼下にうっすらと諏訪湖と諏訪盆地が広がっていた。すっきりとした晴天ならば何と素晴らしいながめであったろう。振り返れば、登ってきた鉢伏山から二ッ山への山並みがずらっと見える。東には霧が峰の連嶺も見えるのだった。北アルプスまでは無理だったが。この高ボッチ高原は、ここから見ても山上の一大平坦地で、西側は牧場になっているようだ。ここも、もうすぐレンゲツツジの花期には観光地になるらしかったが、今は嘘のように静かで花も全く見られないのだった。しばらく、限定された眺めを楽しみ、駐車場に12時44分に戻り本日のハイキングは終了した。ほぼ車で上り、軽い山歩きで疲れもしない。眺めこそイマイチながら、静かで、殊に二ッ山はとても印象に残る山だった。

 車で下諏訪に下り、諏訪大社春宮の直ぐ近くにある下諏訪温泉の共同浴場『遊泉ハウス児湯』に寄って熱い湯に浸かり満足。220円という入浴料も安いですね。人も少なくゆったり温泉が楽しめた。それにしても、ここの湯は熱い!とても長く湯船に入っていられない。共同浴場の周囲には旧本陣の跡や歴史的建造物みたいな温泉旅館が連ねていて、その家並みは諏訪大社春宮まで続いている。良いロケーションだった。
 帰りは、トンネルを潜るだけでお金を払う新和田峠は止めて、霧ヶ峰のビーナスライン(既に無料化)経由で白樺湖に降り、大門峠から佐久に下って帰路に着いた。途中の霧ヶ峰も観光客は疎らだった。

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2 コメント

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全体に笹が印象を決めている高原に (ノラ)
2011-06-09 21:47:22
あさぎまだらさん こんばんは。中信高原は全体に笹原が印象に残る景色のようですね。なんか郷愁を誘う眺めです。写真をいくつか眺めての感想です。それとも,あさぎまだらさんが印象に残った景色を私が追認しただけなのかな?笹はミヤコザサなんでしょうか。曇りが多くて残念でしたね。
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笹原 (あさぎまだら)
2011-06-09 23:48:02
ノラさん今晩は。
中信高原は古来から放牧地として使われてきたようです。
本来であれば、森林に覆われているのでしょうが、人為が繰り返されてきた歴史がこういった景観を作っているのでしょう。
笹は二次的な植生です。多分このまま今後は放牧地として使われなくなっていけば、やがてまた森林に覆われてしまうのでしょうね。笹ですが、笹の種類は非常に多いので…ミヤコザサですかねえ、シカが食べて低くなっているのも事実です。
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