今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・経ヶ岳

2012年10月18日 | 山登りの記録 2012

平成24年10月14日(日)
経ヶ岳2,296.3m

 中央アルプスの前衛というか、あるいは木曽山脈の突端という位置にあるか、権兵衛峠で中央アルプスの山並とは分断して、経ヶ岳は黒沢山や坊主岳等を含む大きな一つの山塊になっている。山中にお経を埋めた事から付いた名前ということで、名前も地味だが、重厚な山容もまた地味な印象を受ける。200名山にもなっているらしいが、それ程人が沢山やってくる山ではないだろう。以前から気になっていたこの山に登ろうと、土曜の夕方に家を出た。今回は高速を使わずに、この方面へのいつものコースで向かった。

 茅野から諏訪に出て、辰野から登山口である伊那市西箕輪の仲仙寺に向かい、夜の10時半に仲仙寺に着いた。この仲仙寺こそ、経ヶ岳の由来と関係が深い古刹で、経ヶ岳の山頂部はこの寺の奥の院という位置づけだ。往時は宗教登山も盛んであったのだろう。地元では小学生も学校行事で登る山だという。この山といい、『聖職の碑』で知られた木曽駒ケ岳の学校登山といい、伊那地方の子供達は今でも故郷の誇りである山々に登山する伝統が続いている様だ。子供の頃に誰もが登っているから、故郷の山に対しては一層の愛着が湧くのだろう。

 仲仙寺山門の上に郷土資料館があって、その前に10台程、山門の前にある羽広公民館の駐車場には30台くらい車が停められる。公民館の駐車場に2台、登山者のものらしい車が停めてある。ここにはトイレもあって夜間でも照明が付いていた。車が1台も無かった、上の郷土資料館の駐車場に停め、今日からは冬用のシュラフに潜る。外気温は6℃しかなくて寒い、冷え込んでいる。オリオンがまたたき今のところ晴天だった。

 夜中に何度も目が覚めた。その度にオリオンが見えていた。明るくなってアラームが鳴る前に起きた。6時少し前だった。目の前の仲仙寺への参道を中年のハイカーが1人歩いていった。パンを食べて支度をしていると、下の公民館の駐車場にまた一台車がやってきた。日曜だから登る人は居るのだろうが、そんなに多くは無いようだ。6時15分に資料館の駐車場を後に、仲仙寺の参道を上って行く。石段の上に古色蒼然とした奥の山門があり、『羽広観音』と書いてある。経ヶ岳へは右に橋の下を潜っていく、そのまま本堂脇の登山口になって、雑木林の道になる。

 しばらくは右手に集落が見える雑木林を水平に歩いていくと一旦林道に出て、その先でだんだん登山道らしくなって尾根に上り上げた。人の話し声が聞こえるので、違う方から登る人が居るのかと思ったら、キノコ採りの人達がここから4合目下の辺りまで、がさがさと山の斜面のあちこちを歩いていた。登山道を登っていると、目の前に出てきた腰にキノコ採りのカゴを付けたおじさんが居たので、「何が採れるのですか?」と聞いたら、「雑キノコだよ」と言った。ふーん。この時期に松が混じるこんな林だったら、ウラベニホテイシメジとかサクラシメジとか、かなあ。雑キノコと言ってしまうのが何とも…つまり、いろいろ採れるけどメインが無いということでしょうか。

 笹が被り気味の尾根道は、特にきつくなることも無く坦々と登っていく。7時24分に『4合目』の標識がある分岐に着く。ここは下の大泉所ダムからの登山道と合流する地点だ。その道は仲仙寺からの道より、ほんの少し高度差を稼げる良い登山道とのことだが、見たところ雑草に埋まり気味だった。4合目からもいつの間にか落葉松になった尾根道を坦々と登って、7時56分に『5合目』の標識を見る。この木製の標識には南箕輪村と書かれ、村のシンボルなのか?『まっクン』と胸に書かれた松ぼっくりのキャラクターの絵が描いてある。妙高山にあった『妙高さん』のキャラのプレートもそうだけど、どうも近頃流行の『ゆるキャラ』はどれも似たり寄ったりで、デザインに余りセンスを感じなくて、見ていて恥ずかしいと思うのはぼくだけでしょうか?

 5合目からも笹が被る尾根を同じ様に登っていく。木々の切れ間から南アルプスの山並が見える。その中でも一段と尖って見えているのは甲斐駒だ。『まっクン』の合目プレートには、その先の合目までの時間が書いてある。大体その時間通りで6合目を過ぎ、ややきつくなってきた尾根を登り上げると、8時37分に7合目の平坦地に着いた。ここには四等三角点があり、ちょっとしたピークになっている。行く手にらくだのコブのように二つのピークが見えている。右の高いピークが頂上のように見えるが、下りに確認したところ、それは9合目の奥の院があるピークで、左が8合目の展望峰だった。頂上は9合目まで登らないと見えない。

 7合目で一息入れる。ここまで順調に登ってきたが、取り立てて急な所も無い代わりに、この山は延々と登り続けるアプローチの長い山だ。8時48分に7合目を後にまた落葉松の尾根を登りだす。南に中央アルプスの山塊が見えてくる。木曽駒から馬の背と将棊頭山の稜線が見え、丁度その間に宝剣岳がちょこんと頭を出していた。8月の末に登ったばかりで懐かしい。宝剣の下には小さく宝剣山荘と思える建物も確認できるし、将棊頭山の下には西駒山荘が見えていた。

 一段と急になってきた尾根の先は明るくなり、右手に黒沢山が見えてくると、間もなく8合目の展望峰に9時29分に着いた。ここがこの山で一番眺めが良い所だという。中央に『望郷』と刻まれた標石が建っている。行く手に見えてきた9合目のピークは笹の緑のあちこちに紅葉した木々を配して、秋の山の彩りが美しい。台形でどっしりとした黒沢山の斜面はパッチワークの様になっていた。ここからは特に東の展望が良く、南アルプスの山並の北には八ヶ岳や霧ヶ峰が連なり、美ヶ原の王ヶ頭や遠く浅間山等が見えるが、全体に雲が多い天気で少し霞んでいる。伊那谷の町並みもやや霞んで下に見えるが、鳥瞰図を見るようで随分高く登ってきたなという感じだった。

 8合目でも小休止。小腹が空いたので、赤飯おむすびを食べお菓子を少し摘んだ。周囲の景色をカメラに納めていたら、下の方から人が登ってくる気配がするので、腰を上げ、9時51分に8合目を後にする。ここから9合目に登り上げる途中までは眺めが良かった。

 9合目へはかなりきつい登りだ。この登りで下ってきたご年配とすれ違う。この人は随分早くに登りだした様だ。少しだけ西の展望があるところから、赤く色付いたモミジの向こうに御嶽山が見えた。御嶽はここから見えただけだった。眺めが無くなるとシラビソの樹林になり、黒沢山への分岐と思われる踏跡を右に分ける。笹は相変わらずの被り気味で、経ヶ岳の登山道は全体にあまり刈り払いをしていない。幸い、今日は笹が濡れていないから良いようなものだが、濡れていたらびっしょりになりそう。9合目の小ピークには10時12分に着いた。ここが旧奥の院(仲仙寺の奥の院)で、古い石仏や石碑が見られた。木々越しに漸く頂上のピークが見えてきた。

 9合目のピークから、一旦北に進んで下り、最後の登りはかなりの急登になる。小さな鞍部辺りで、朝支度をしていた時に先行していった中年のハイカーさんが下ってきてすれ違った。中央アルプスの山塊がこの登りからまた見える。頂上間近は、また落葉松が出てくる。背後から後続の人のベルの音が近づいている。10時29分に漸く樹林に囲まれて展望の無い平坦地の経ヶ岳山頂に着いた。途中で30分近い休みを入れて4時間10分の登りだった。延々と長い登りなので、休まずに登れば4時間掛からないだろうが、眺めが良い所でそれを口実にしばらく休んだりしたが、そのせいもあって大して疲れも無い。

 山頂には二等三角点と標識類の他に、古い石碑や真新しいモダンな雰囲気の石仏があった。後続の人は直ぐに到着したが、かなりご年配の人だった。その後、しばらく休んでいたら、今度は若いカップルがやってきた。ぼくがパンやオレンジを食べていると、後から来た人達はみな写真を撮って直ぐに下っていった。確かにここは北側がシラビソの原生林で薄暗く、南は木々が切られた落葉松の間から中央アルプス方面がほんの少し見えるものの、長く休む様な所では無いだろうが、折角長い登りを登ってきたのだから、もう少し頂上の雰囲気を楽しめば良いのに?この山頂の雰囲気や佇まいは南アルプス前衛の雨乞岳に何となく似ている。北側がシラビソの原生林で薄暗いことや、眺めが余り良くないこと、単調な登山道で落葉松が多く、アプローチに余り変化が無いこと等、総じて地味な感じがして人気が余り無い山というのもうなずけるが、重厚で静かな雰囲気は、ぼく的には却って好ましい印象だった。

 10時57分に山頂を後にする。9合目を下る辺りで4人連れのパーティーとすれ違う。その直ぐ下でも若い単独ハイカーとすれ違い、この日、経ヶ岳に登ったのはこれで全て、ぼくを入れて全部で11人だった。日曜日の200名山としては少ないだろう。元々静かな山の様だ。8合目まで降りてくると、ここで先に下っていった若いカップルが休んでいた。朝よりも更に雲が広がって、全天の8割くらいは雲で青空も余りなくなった。湯を沸かしてカップラーメンを食べ、遠目が利かなくなった眺めをしばらく楽しんだ。12時25分に誰も居なくなった8合目を後に坦々と下る。

 登山道のあちこちにスギヒラタケが見られる。このキノコは、昔は山を下る時についでに良く採ったものだが、中毒騒ぎの後は採ることもなくなった。午後になってもう誰も登ってくる人も居ない。長い尾根を下り続け、2時15分に仲仙寺に降りた。年配の観光客?が2組、古刹の見物をしていた。2時19分に車に戻った。

 帰りは南箕輪村営の交流施設、大芝高原温泉『大芝の湯』に寄り汗を流した。この施設はかなり大きな日帰り温泉で混雑している。周辺を含め施設は充実しているが、人が多いのは大変残念。掛け流しではないものの、塩素臭もしないので泉質はまあまあか…。幾重にも山並が重なった経ヶ岳と黒沢山がリンゴ畑の向こうにゆったりと見えていた。入浴後はまた一般道を繋いで帰路に着いた。茅野で早めの夕食を食べて、それでも夜の9時ごろには家に着いた。


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2 コメント

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今回は秋らしい写真が多いですね (ノラ)
2012-10-19 21:26:53
あさぎまださん こんばんは。今回の写真は秋らしい写真が多いですね。最初と最後の写真がいいな!経ゲ岳というだけあって石仏も山中に多いようですね。なんか秋に登るのにぴったりの山という印象を持ちましたが,あさぎまださんの文章がそういう印象を与えるせいですかね?
苔むした石仏もいいな。今回はシックな写真が多いです。
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秋の山が一番好きです (あさぎまだら)
2012-10-19 23:43:01
ノラさん今晩は。
昔は秋になると山行回数が多くなったものです。その訳は、もちろん錦秋の景色が良いこと。遠くまで良く見えて展望が良いこと。それと、ついでにキノコが採れる事。なので、秋山はせっせと通いました。今は、仕事の都合や何かで秋に山行回数が増えることは無いですが、もっと秋山を堪能したい事に変わりは無いです。
秋らしい写真ですか。カメラのせいもあるかもしれません。最初と最後の写真はオリンパスのpenEPL-1というカメラで撮ったものです。しぶーい色合いです。秋景色に合うのでしょう。
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