Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

よく解らない位置情報

2007-08-30 12:13:59 | ひとから学ぶ
 ボッケニャンドリさんが、少し前に「甲府31km甲州21km」という日記を綴っていた。短文なのでそのまま引用させていただくと、「甲州街道は(ささご)付近でこんな写真を撮った。甲府31km甲州21km、山梨に縁のある俺は甲州って何処だっけと一瞬わけわかめだったけどあまり縁の無い人はこれを見て何を感じるだろう。「 別に 」 か。」というものだ。国道なんかに表示されている大きな看板、いわゆる主要の土地までの距離を表示する看板にこう書かれていたわけだ。実は「甲州」という部分は、少し前までは「塩山」だったに違いない。平成の大合併でかつての地名でイメージを持っていた人たちには、違和感のあることがたくさん湧いてきているはずだ。

 この場合なぜ「甲州」に変わったかといえば、甲州市という市が誕生したからだ。塩山市と勝沼町、そして大和村が合併してこの市が誕生した。ちなみに現在の甲州市のホームページを訪れると、この三つの市町村が合併してできた、と市長のあいさつの中に記述されているとともに、旧市町村のホームページを紹介しているからすぐにどことどこが合併したのか解る。ところがこうした旧市町村のことを触れている新自治体のホームページは少なく、いったいどことどこが合併してこの自治体ができているのか、ということをまったく表示していない自治体も多い。いかにかつての自治体を早く捨てて新しい自治体になじもうか、という意図はくめるのだが、「そんなに慌てるなよ」と思う。現実はそんなに急いで変えたからといったって、人々の気持ちと言うものはそんなにうまくはいかない。いや、そう思っているのは古い人間で、スピード時代だけに、「早く新しい看板に変えろよ」と文句を言う人もいるのだろう。そんな意見を気にしすぎているせいか、平成の合併ではまるで電車賃が改定されたときに一夜のうちにすべてを書き換えるがごとく、看板が変えられているように感じる。

 そうはいってもこの看板のケースでは、塩山ではいけないのか、というのが素直な感想だ。実際JRの駅は「塩山」だし、市役所の住所も「甲州市塩山上於曽1040番地」と塩山の地名が残っている。まったく「塩山」という地名が消えてしまったというのならともかく、残っている以上国道の看板を変える必要があるとは思わない。ましてや、急いで変える必要はさらにない。近ごろ東京まで高速バスで行ったが、甲府手前の双葉SAの近くに方向を示して「南アルプス」という看板がある。実は南アルプス市にできたインターを「南アルプス」インターというからそういう名になるのだろうが、市の名称と山脈の名称が同じだからこういう迷いの世界に陥る。広域名が先にすでにあったとしたら、狭い範囲を指して同じ名称をつけないで欲しいというのが本音だ。そういう意味で、以前にも触れたが、甲州とか山梨とか中央とかなんとなく漠然とした同様の市名というのはわかり難いのだ。

 道路の看板も広範な地域を指しているのに21kmと表示したからには、特定の場所に対して距離を示しているはずだ。もちろんこの場合は塩山のことなんだから、やはり「塩山」と表示するべきだ。もともと例えば長野市まで○○キロとしても、長野市のどこを指しているのだ、という疑問はあった。新たに名称をつけたような地名まで○○キロなんて表示したら「わけが解らん」と思う人は多いはずだ。

 昔は合併してからもしばらくの間、かつての名称がそこらの看板に残っていた。そんなおおらかさがあったのに、このごろのぎちぎち感はとても馴染めないし、そんな苦情が気になるのか、とさすがにお役人たちの対応に恥ずかしささえ覚える。笑って「すいません、そのうちに訂正します」くらい言えないのか、なんて思うのだ。
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