Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

食草との深い関わり

2007-08-07 08:28:32 | 自然から学ぶ


 昨年、クロツバメシジミに触れたのは9月だった。ツメレンゲの大きくなった姿をみながら、そこに飛ぶクロツバメシジミを見つけたのだが、ツメレンゲそのものは花の咲いた後も枯れた姿を冬の間も見せている。くろぐろとした塔形の櫓のような姿が、遠目にもわかるものだ。夏を前に再び花期に向けて伸び始める葉には、虫食いのような痕がいくつも見える。きっとクロツバメシジミの幼虫が食べた痕ではないかと、葉の裏などを調べてみるが、すでに幼虫の姿はない。

 昨年より1ヶ月ほど早いが、そのツメレンゲの周辺をクロツバメシジミが盛んに飛んでいる。昨年も紹介したクロツバメシジミの生息場所と同じである。食草と昆虫の関係が、これほどぴったり整合しているケースは、わたしの認識の中ではない。それは、どちらも絶滅危惧種にあたるということが要因となっているのかもしれない。どらも絶滅危惧種ともなれば、もともとどちらも数が少ないということになる。だから片方が絶滅危惧種というケースに比較すると、その関係はよりいっそう目立ってくる。この生息場所の近くにはコマツナギも盛んに咲いている。この護岸から河川敷にかけて広大な範囲にたくさん咲いている。そこにコマツナギを食草としていミヤマシジミも飛んではいるが、知らない人は、とくにコマツナギとミヤマシジミが関係しているということには気がつかないだろう。それほどミヤマシジミの成虫は、コマツナギの周辺だけを飛んでいるとは限らない。そこにいけば、クロツバメシジミは、明からにツメレンゲの咲く空間の上を飛び回っている。だかせといって成虫がそのツメレンゲに留まることはそれほどなく、もっと背丈のある草花に留まる。おそらく何年も前は、護岸の上にこれほど土が覆いかぶさっていなかっただろうから、今ほど背丈のある草花は多くなかっただろう。ところが護岸上が道路になっていて、そこはダンプ街道と言われるほどダンプが頻繁に通る。加えてそこがちょうどカーブになっているということもあって、路面に落ちている砂などがカーブの外側にあるこの護岸に飛ばされるようだ。さらに昔なら、ダンプにシートが今ほどしっかり被せられていなかったから、多くの土砂がこの護岸に降り注いだことだろう。そんなこともあって石積みの護岸は、凹みがなくなるほど土が被さり、凹凸をなくしている。そんな護岸だから歩きにくいわけだが、ますますツメレンゲの姿も増えている。いずれ背丈の高い草がさらにはびこっていくと、ツメレンゲの生育空間としてどうなんだろう、という危惧もあるが、いずれにしてもクロツバメシジミにとっては、今はずいぶん良い感じの空間になっていることに違いはない。近くの河川内をミヤマシジミが飛んでいるが、前述したようにこの場所にもミヤマシジミが飛ぶ。ミヤマシジミもけして大きなチョウではないが、クロツバメシジミはさらに小さい。翅を広げると黒く、小さな体が急に大きくなったように感じるチョウである。

 ツメレンゲの葉の中に幼虫態で越冬するというから、成虫の季節ばかりでなく、幼虫の季節にも今度は見にくることにする。

 撮影 2007.8.5
 下は近くを飛んでいたミヤマシジミである。

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