Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「民営化ですから・・・」

2007-08-29 12:10:56 | ひとから学ぶ
 郵便局の10月1日民営化ということで、各家庭にお知らせが届いていると思うし、新聞紙上においても大きく宣伝がされていて、いよいよ現実味を帯びてきていることは雰囲気で解る。全国的に流されているこうした民営化に向けたパンフレットを配布している案内に、それぞれの郵便局が文書を配しているのだろうが、地元の郵便局の案内にはこんなことが書かれていた。

 「これ(民営化)にともない、職員の移動、減員等が行われ非常勤職員が増加しました。また、現在○○局で実施ている機械による組立作業も行われる予定です。(中略)郵便物の住所を正確にご記入頂きたいと思います。番地、アパート名及び棟室番号、同居の場合肩書きまでお願いします。間違った住所や不完全な住所ですと配達が遅れたり、差出人にお返しするすることとなりますので特にご注意ください。尚、自治会名等を記入される方がありますが、自治会名は住所ではありませんのでお間違いのないようお願いします。(中略)事情をお察しいただき今後とも宜しくお願いいたします。」

 ここで明確に解ったことは、正規な職員が減り、いわゆる日雇いとか時間給の職員が増えたということだ。ここにもまた、地方にとっての厳しい状況が見えてくる。ただでさえ働く場のない山の中の郵便局も、非常勤でなりたつようになる。山間の小さなムラにとっては、役場、銀行、農協、郵便局、学校といったいわゆる公共的な働きの場が大事なスペースだったはずだ。しかし、ことごとくそうした場が消え、それにともなって人の動きも消え、交流と言うものがなくなってきた。交流しないとなれば停滞するから、当然のように人口は減少し、高齢化する。そして情報格差や経済格差が増幅する。そんな当たり前な動きがあって、限界集落の増加を加速させてきた。致し方ない現実だといえばその通りなのだが、それを補う手は差し伸べられなかった。

 さて、この文を読んでいるとそれ以外にもいくつかの問題というか、気になる点が浮き上がってくる。このごろ郵便局に行って局員の口から出る言葉がある。「民営化になりますから」というものだ。この文面も「事情をお察しいただき」というものがあるように、その事情とは民営化であって、お察しいただきということは「迷惑をおかけします」につながるような書きぶりである。迷惑をかけるということは、けしてサービスは低下しないものの、今までとは違うということを意識として植え付けようとしている。以前、振替手数料が変更されることについて質問したところやはり「民営化」を真っ先に口にした。まさにこの文の最後にあるように「事情をお察しいただき」ということなのだろうが、この説明はお客さんに対しては失礼な物言いのように聞こえるわけだ。(とは言うものの、わが社が財政困難になって大減員を余儀なくされたときに、お客さんには同じことを口にするかもしれないが、郵便局のような大会社とはちょっと違うとは思うのだが。加えて郵便局は財政難で民営化されるわけではない)

 もうひとつ。住所の話だ。自治会名は住所ではないと明確に言い切っている。しかし住民にとっての住所とは何か、ということになる。確かに公に示されているものとは異なるかもしれないが、地域で使われている一般の集落名というものが住所でないはずがない。わざわざ公的な住所を明記しろというあたりが、これまた「事情をお察し・・・」というところにつながるのだろうが、それなら登記されている住所を正確に書けということなになるのだろうか。国民が望んだんだからそれくらい我慢しろ、みたいな成り立ちは、今後につながるような気がしてならない。
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