Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

猫神

2007-05-19 08:33:10 | 民俗学


 「霊諍山のドラえもん」と題してドラえもんのような猫の神様を紹介したことあったが、それは風変わりな石神石仏があることで知られる千曲市郡の霊諍山にある。ドラえもんがげんこつを落とそうとして小さくなっている猫の像が並んであるが、同じような雰囲気を持つ猫神が、伊那市小出二区の山本にある。山本公民館の裏手に、三体の猫神が間にほかの石仏を挟んで並んでいるのだが、こちらの猫神の彫り方は稚拙である。しかし、その稚拙さが猫らしさをよく現している。その猫神の一体が写真のものである。

 口元に何かくわえているように見えるが、単純にひげを現しているだけなのだろう。でもちょっと見は魚でもくわえているのだろうか、と思わせる。そのひげと前足の間がふっくらと膨らんでいるが、他の猫神も同じように彫られている。猫のあご下ってこんなにふっくらしていたのだろうか、とあらためて本物の猫を眺めたりする。碑の高さは30センチちょとと小さなもので、裏手にあるこんな石像に気がつく人はなかなかいないだろう。不思議なのは、霊諍山の猫もそうなのだが、わたしの見た猫神はすべて左へ向いた猫ばかりだ。猫の姿と言うのは、人に対していつも左に頭を持ってきて丸くなっているのだろうか、なんてまた本物の猫を観察してしまうほどだ。

 何の目的で彫られたものかというと、猫を祀ることによって、鼠を防ぐ意味があるようで、蚕を荒らす鼠除けを願ってのもののようだ。世のなか猫を飼っている人も多いだろうが、こんな珍しい神様を頼って猫好きの人がお参りしてもよいように思うのだが、以前見たときも、今回も、人目に触れているという雰囲気はまるでない。検索してみると、実はけっこう猫神様が登場する。それでわかったのだが、近くの高森町瑠璃寺に最近薬師猫神様が祀られるようになったという。瑠璃寺の本尊が薬師様だということで、そこへ猫様を迎えたからこう呼ばれるのだろうか。そこにも「かつて養蚕が盛んであったこの地方では、お蚕様をねずみから守ってくれる猫を「猫神様」として、大切にしていました」と書かれている。


 参考「飯島町清水坂お不動様の猫神
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