Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ため池の土手にスミレ

2007-05-03 07:58:03 | 自然から学ぶ




 わが家のあたりでもようやく梨の花の盛りが過ぎ、散り始めたとともに葉の姿が目立つようになった。季節がしだいに標高を駆け登っていくのは、わが家より低いところを歩く、わが家より高いところを歩く、そんなバリエーションで十分体感できる。だから、このごろはしばらく梨の花を追って犬の散歩をしていた。先ごろ、休日というこもあって、少し普段より遠くまで足を延ばした。もちろんわが家より高いところを目指してである。中央自動車道より山付けまで登ると、まだまだ梨の花の盛りである。そんななか、以前センブリを見つけたため池まで足を進めた。ワレモコウやリンドウなんかの姿も見えたため池だけに、家や耕作地がある空間では、このあたりでは珍しいほど自然が残っているため池である。ため池のすぐ近くまではセイヨウタンポポばかりが道端に咲いていたが、ため池の空間に入った途端に、在来のタンポポの姿が目立つのだ。やはりちょっと違った空間である。ここから山奥に入った山の中のため池が自然いっぱいというのは解るが、すぐ前を、ゴールデンウィークそのものを象徴するように、賑わった中央自動車道が騒音を響かせていると言うのに、この空間は穏やかな流れである。このアンバランスがとてもわたしには好みである。

 そのため池の土手に、よく見ないと気がつかないほどの小さなスミレが何株も姿を見せていた。よーく見ないと踏んづけてしまいそうなスミレである。スミレは、長野県内に40種類ほどあるというが、スミレということは解るがなんというスミレかまではわからない。花の形が大工さんが使う墨入れに似ていることから「スミレ」という名がついたとも言うが、大工さんの墨入れを最近あまり見ることはない。昔は生家にもその墨入れがあった。大工さんであったわけではないのだが、祖父が使ったものなのだろう、生家を造る際には祖父も手伝ったという。昔はこうして農家なんかにもあった道具なのかもしれない。確かにその墨入れは独特な形をしていて、スミレそのものだっようにも思う。

 ため池から少し道を歩いたところにも色の薄いスミレが咲いていた。ちょっと品種は違うようだ。さて、このため池、ワレモコウを見に来たころと、今の姿は知っているが実際の灌漑期間に訪れたことがない。あまり、水位が高かったという印象がないため、一年中あまり水は多く溜まっていないような気がする。どう利用されているのか解らないが、このあたりではちょっと特異な空間だけに犬を連れながらしばらくは通おうと思う。実は今から20年近く前のこと、このため池のすぐ南側は山(山というと山を想像してしまうが、平地と山の境にある平地林のようなもの)だった。そこを切り開いて今は果樹園になっているのだが、切り開く前はすごい藪状態で、その藪の中にこの季節、たくさんのタラノメが出ていたことを思い出す。仕事でやってきて、山ほどタラノメを採った覚えがある。今では果樹園になってしまい、すぐ脇の道に名残りのようにタラノメの株がいくつか見えているが、「この場所は山菜を栽培しています」と看板が立っている。かつての姿を知っている私には、不思議に映るのだ。
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