太平洋岸地震予測
北海道9市町で津波20m超
苫小牧で浸水1万ha
北海道は24日の防災会議地震専門委員会の会合で、道東沖の千島海溝や日高沖以南の日本海溝沿いで起きるマグニチュード(M)9クラスの巨大地震による太平洋沿岸の新たな津波浸水想定を公表した。最大津波は釧路管内釧路町の26・5メートルが最高で、計9市町で20メートル超となるなど昨年4月に国が公表した津波想定とほぼ同規模の津波が予想された。専門家は従来想定に比べ、道東では津波が陸地に到達する時間が早まる一方、道南を中心に浸水範囲が拡大するとみており、各自治体は地域防災計画の改定など対策を急ぐ。
道が太平洋沿岸の津波浸水想定を策定するのは東日本大震災後の2012年に公表した津波浸水予測図以来。昨年4月に国が公表した日本海溝沿い巨大地震の津波想定も考慮して、沿岸の地形や断層などの情報を加味した。
新たな想定は対象が渡島管内福島町から根室管内羅臼町まで39市町村。釧路町を含む9市町で20メートルを超える津波が試算され、日高管内えりも町で26メートル、十勝管内広尾町が25・4メートル、釧路市は20・3メートルとなった。
陸地10メートル四方で浸水する深さを算出しており、自治体ごとに1センチ以上浸水する面積も初めて公表した。苫小牧市で1万224ヘクタール、釧路市9239ヘクタール(音別地区も含む)など計26市町で千ヘクタールを超えた。全道の浸水面積の合計は約9万2千ヘクタールだった。
海辺の人命に影響が出る恐れがある水位変化(プラス・マイナス20センチ)が生じるまでの影響開始時間も今回初めて算出。最短1分以内とされたのは根室管内羅臼町、釧路管内浜中町、同厚岸町、日高管内えりも町、同様似町、函館市の6市町。このほか、2~10分未満も19市町で、早期避難の必要性が浮き彫りとなった。
専門委作業部会の谷岡勇一郎座長(北大大学院教授)は「従来の想定よりも、道東では津波の影響が早く生じ、道南では浸水面積が広がっている」と述べ、各地の対応を求めた。
道は7月中旬の専門委員会で示す各地の詳細なデータとともに決定する方針。その後、市町村の意見を聴き、避難体制を整備する津波災害警戒区域の指定に向けた作業に入る。国は今夏中にも、太平洋沿岸の津波に伴う被害人数や額の想定を公表する予定。
(村田亮)
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