宮古on Web「宮古伝言板」後のコーケやんブログ

2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

第3回勉強会(1)

2014年11月13日 | 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会

第3回勉強会(11/9 なあど)


主催者の「鍬ヶ崎防潮堤を考える会」は立場上あからさまには言えない事であるが、先きの11/4に市役所で行われた「説明会」と同じで、勉強会での県宮古土木センターの説明はかなり杜撰(ずさん)なものであった。 ──以下は、出席したブログ管理人としての報告である。



第3回勉強会

鍬ヶ崎の直立式(逆T字型)防潮堤とは?

講演
岩手県沿岸広域振興局土木部宮古土木センター


 

1) メーカーの営業マニアルそのままの説明であった。 

プレキャスト部材メーカーや土木建設業者が県庁に売り込む時の営業的工法や部材営業の説明をそのまま力説しているだけであったと言える。勉強会の講師である宮古土木センターの講演と資料レシピはスペースや経費の経済性が直立式ではいかに優れているか、また現行の人手不足や急用性にプレキャスト工法がいかに簡便であるかなどであった。 ──津波に対しての効果や住民にとっての安心性の説明は二の次三の次のようであった。 ──なによりも宣伝的主張だけが先行して検証とか根拠という事を忘れていて「勉強会」の趣旨に合わなかった。

 

土木センターで準備した説明用資料

資料請求は「11/4説明会、11/9勉強会で使用したもの」として
県沿岸振興局宮古土木センター(馬場課長または金澤主査)へ
📞(代表)0193.65.0031 

 

 

 

2) 津波の破壊「力」無視の防潮堤設計であった。 

おどろくべき事に、先きの3.11大津波で実証された津波の破壊力をどのように受け止めるかの計画ではなく(再び、おどろくべき事に)河川堤防や貯水ダムにかかる普通の「寄りかかり」水圧を根拠にして、その水圧のちからを受け止める防潮堤を計画し、そのことで直立式の有用性を説明している。おどろくべき事とは津波の「力」とか経験というものがまるで念頭にないという事である。襲撃するスピードの二乗に比例する津波の圧倒的「力」を検証するのではなくコンクリート依存症という病人のする当てづっぽな組み立て工事で振り逃げしようとする無責任計画であった。その説明であった。

1 図 杭式(杭基礎構造)

「水平力→」「津波時津波水圧、地震時慣性力等」と書いてある。それが津波の圧力という事で三角形のベクトル群で示している。どこにでもある水圧の表現にすぎない。下は「杭(くい)の横抵抗バネ」と書いてある。有事には回転ベクトルも生じて杭の「横抵抗」は逆方向にも働くだろうに…どこのとは言わないが幼稚で信用のないメーカーのいうがままに書いている…




   
2 図 津波時

図の左側「→津波時衝突加重(=「漂流物の衝突を考慮」と説明があった)」「津波時津波水圧(静水圧)」「主働土圧(津波時)→」とあり、図の真ん中「津波時水塊質量 ↓」「自重 ↓」とある。

1図でも2図でも直立式防潮堤にかかる津波の力は横に何段にも描かれた三角形の右に働く力 →(やじるし=ベクトル)群で表されている。これによっていかにも直立式防潮堤が津波に耐え得て津波を防ぐ事が出来るかをアピールしているのだ。ほか、漂流物の衝突、水量の重量、防潮堤自体の重さ、地震の震動などに耐えうると…。しかしこの1図2図は防潮堤の堅牢さを強く表現したいがために相対的に津波の強さを過小に表現しているにすぎない。ここで表現されている津波の力は、実は津波の力ではなく、河川堤防や貯水ダムにかかる水深の「寄りかかり」の力にすぎない。この三角形のように底辺には強く水面には弱く働くありきたりの水平の力である。つまり、この図では津波の力はどこにも表現されていないのだ。防潮堤のあるべき強度が、堤防やダムの強度と同じに考えられていて、バカていねいに力の掛かり具合もそっくりである。机上の「津波時」の知識の程度とはその程度なのだと思う。無知。いずれにしても沿岸で起こった、また起こるであろう津波ではない事ははっきりした…


めちゃくちゃな津波の「力」認識 2図の津波時津波水圧(静水圧)とは?? 静かな津波というものはないのだよ。1 図の津波時水平力と同じものなのに基本の経験不足で頭が混乱しているようだ。防潮堤にかかる水塊重量、自重などは津波の圧倒的衝撃力から見たら微量(力)と言ってもよい。そもそもスピードを伴って押し寄せる津波の威力から見たら、水深による水圧の「寄りかかる」力はほとんど無視してよいほどのものなのである。恐れる力は押し寄せる津波の力でありパフォーマンスである。その拠ってくるところ、その大きさ、強さ、そのスピード、その形状、その動きである。…釜石の湾口スーパー堤防や田老の長城防潮堤の崩壊を、岩手県庁は力学的にどのように検証しているのか聞いてみたいものだ。要するに1図2図では横に水平に働く津波の力(の大きさ)を一貫して回避、無視ないし誤解している。鍬ヶ崎防潮堤の設計がこのような不十分な思想で出来ているという事は、地元住民としては岩手県沿岸広域振興局が計画する直立式防潮堤に命や財産をゆだねる事は出来ないという事なのである。あまりにも滅茶苦茶だ…

もしかして津波とは深さ(高さ)と考えている…

注)ダムの「寄りかかり」水圧


私はこのブログで何度も津波の「力」について河川洪水やダムにかかる水圧との違いについて書いてきた。そのことが適宜に証明されながら述べられている訳ではないが単純な経験則や中学・高校の物理程度の常識範囲でもそれぞれの「力」の差異は分かるはずである。両者の「力」の決定的な差異を明確にする事が勉強会の一つ課題であったが、県の工事計画はそのことを混ぜっかえしているだけで勉強の手がかりにもならなかった。


[関連記事] ★これでいいのか復興工事(6)岩手県県土整備部  2012.7.27


以上、県土整備部や県沿岸広域復興局の担当者たちは津波の本当の力を知らないのか、あるいは知っていても沿岸住民には短絡簡便(ごまかし)に説明しようとしてそうなるのか、分からない。どっちにしても、そのような説明の、このような直立式防潮堤建設は無用なもの、危険なものであるといえる。





  海が見えないとか圧迫感とかは、そういう事ではない。

説明用資料レシピの後半では、防潮堤表面に凹凸をつけて圧迫感をぼかすとか、防潮堤に窓をつけるとか、ごまかしの設計を多用して掲載している。イメージで目先を変えたり、民意に迎合するあの手この手の軽薄な説明を信用する事は出来ない。鍬ヶ崎から海や岸壁の気配がなくなり、高い塀が街中重く圧迫する事はいくら言い方を変えても、まぎれもない事実となるからである。行政はごまかす事だけは止めてほしい。鍬ヶ崎はだまされない。


日立浜の景観の変化(資料より)

故意に高所からの視線で作られたイメージである。
普通の目線で見たら対岸の出崎ふ頭も海も見えなくなり、
コンクリートの高い塀
が空を切るだけの景色になる。
絵はごまかしである。

ちなみにあちこちにある宮古市建設課の野立て看板は
鳥瞰図で防潮堤の高さをごまかしている。



 

次ページ 3)4)につづく






参考概念図






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