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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

田老「第一防潮堤」の今(1)

2013年06月20日 | どうなる田老

最近、田老を再訪して、初めて防潮堤の上を歩いてみた。第一防潮堤はほとんど損傷がなく、完成した当時の姿のままであった。やはり被災地見学の団体が説明を聞いて回っていた。上を歩けるのは第一だけで、第二防潮堤は倒壊、第三防潮堤は歩行できない状態であった。


田老第一防潮堤 
(2013.4.21撮影 ブログ<岩清水日記>「宮古市田老3」東北の旅56より)


上の第一防潮堤の写真は岡山県の岩清水さんのブログから借用したものであるが、当日(2013.6.4)は既に修復工事が始まっており、重機や運搬用クルマがこの上を往来していた。



ブロックの隊列の役割は流失防止柵?
 

第一防潮堤を特徴づけてきたてっぺんの突起物「ぼこぼこ」と呼ばれたり「ギザギザ」と言われたりしてきたがその役割についても「転落防止の安全施設」と言われたり「津波犠牲者の慰霊のための墓標」と考えられてきた。この事についてはこのブログで既に言及したが、その時の疑問と、今回現地を歩いての観察からもう一つの考えが浮上した。

津波が引いていく時の倒壊物や瓦礫をこのブロックの隊列で塞(ふさ)いで、外洋への流失を食い止めようとしたのではないのか? と。当然、人身の流失もせき止める事になって、運が良ければ命も助かるという風に考えたのではなかろうか? と思いめぐらしてみた。高山文彦著「大津波を生きる」(新潮社)を読んで当時の田老村の関口村長以下の役人、技術者、被災村民の、防災に向けた深謀や意気込み、完成までの長い年月を思って、沿岸の人ならそのくらいまでは具体的にイメージするだろうし、イメージできるだろうと思った。

もう一つは下の写真から類推して、ブロックに太い鉄筋を入れてかなりの強度のブロックだナ…、と思った事である。ブロックの隊列には確かな具体的な役割があったし、その議論が熱くあったのではないかと…

 
ブロックの撤去 (2013.5.14 NHK 「岩手県のニュース」より)


        <海側>

陸側>
鉄筋ブロック推理図 


本体と連結してブロックぜんぶにかなり太い鉄筋が入っている。その役割とは?

ブロックの役割が平時の転落防止であるか犠牲者の墓標であるか、流失防止柵であるか検証が必要とされるところであるが、私の住い環境からでは無理である。どうしても現地の被災者、世話役、役人、そして工事関係者の忌憚のない意見が必要である。災害直後に瓦礫処理にあたった自衛隊の隊員の方々の体験も聞きたい。もしかしたら、津波の戻り波は第一防潮堤を超えなかったのか?



防浪堤=第一防潮堤、は無傷で残っていた。
 

当日は、第一防潮堤では、既にこのブロック隊列は端の方から撤去されており、平らになったコンクリート天板の斫り(はつり=削り、薄くはぐ)工事が行われていた。これら無意味な工事を見るにつけ思うにつけ第一防潮堤とその建設に係ったすべての関係者の無念の思いが胸に迫ってくるのである。

                             <陸側>

<海側>

はつり工事


この海側に先のブロックが並んでいたが取除かれ更にその下のコンクリートが削られている。 

なぜ無傷の防浪堤を壊すのか?? という思い。

「防浪堤(ぼうろうてい)」は第一防潮堤の建設当時の頃の現地の呼称。 

今次3.11大津波を経過して、第一防潮堤には損傷はなかった。冒頭の写真のブロックの一部が欠けているが、太い鉄筋がなくなっている事から事後何らかの理由で人手が加わったのではないかと思われる(あるいは本当に鉄筋ごと波にもっていかれたか?)。防潮堤は泰然として本分を尽くしたものと思われる。津波はこの第一防潮堤を超えて市街地に殺到して、三たび田老に未曾有の災害をもたらした。第一防潮堤の毀誉褒貶はすべて人間が負うもので、あなたはあるがままにあって瑕疵一つなかったのである。平たく言えばどこも壊れなかったのである。詳しくは後で書くが第一防潮堤の津波の越流はそもそもそも想定内の事だったのである。越流を防ぎ、津波の市街地への浸水を阻止するという考えは第一防潮堤以後に出てきた考えで、その事がかえって今次3.11の田老地区の惨事を招いたものなのです。

越流想定は先に書いたブロック隊列の役割から想像される事でもありますが、いずれにせよ、国や県や市の官僚機構によるコンクリート行政が第一防潮堤の世界史的意義をなきものにしているのは事実です。そのことが今まさに第一防潮堤の工事で行われているのです。



(2)につづく

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
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