怖い頭痛と怖くない頭痛

2013年09月08日 | 治療の話

このところ、頭痛に関して不安を抱える患者さんが多いようです。

なんでも先々月辺りにテレビで「脳腫瘍に伴う頭痛」のお話があったとか。

そこではウソかホントか

「吐き気を伴う頭痛は脳腫瘍による頭痛だ」と伝えていたとか。

(多分「可能性が高い」という言い方だったんじゃないかと思いますが…)

 

「嘔吐・吐気+頭痛=脳圧亢進→脳腫瘍」

うん、確かに学生時代に「臨床総論」の授業でそう習った(ような気もする)。

でも、私自身が頭痛の臨床で大事にしているポイントとは少しずれるんですよね。

「嘔吐・吐気+頭痛=脳圧亢進→脳腫瘍」だと結構多くの片頭痛の患者さんが頭の中に病変を抱えていることになってしまう。

でも、そうしたケースはレアケースだと感じています。

むしろ、別の症状が確認された時にこそ「頭の中の問題」を考えます。

「嘔吐・吐気+頭痛=脳圧亢進→脳腫瘍」の他にもういくつか知っておくべきことがあるんです。

そんなこんなで、今回は「頭痛」について書いてみようと思います。

 

一先ずは「脳圧亢進」による頭痛について述べてみます。

 

教科書的には嘔吐を伴う頭痛は、

脳腫瘍などによって頭蓋骨の中の圧力が増す

「脳圧亢進:のうあつこうしん」が疑われるとされています。

 

しかし、脳外科の先生の書かれた本などを読むと、

脳圧亢進に嘔吐は必ず伴われるわけではないそうです。

逆に、ひどい肩こりでも頭痛と吐き気が伴われることがあることを経験されている方も多いはずです。

 「肩こり」はデスクワーカーの宿命ともいえる故障でしょう!?

頭痛の原因が「肩こり」かもしれないし、脳腫瘍かもしれないとなると、

ものすごく多くの方に「心当たり」が出来てしまいますね。

 肩こりから来る頭痛では死にませんが、脳腫瘍だったら大変です。

「さて困った、どっちなんだろう。」

ってなりますよね。

 

ではどうする?

精密検査を受ける?

片っ端からMRIを取る?

それしかないのでしょうか?

何か見分ける指標はないのでしょうか?

 

と、言うことで、脳圧亢進による「怖い頭痛」と「怖くない頭痛」との違いを

専門書からピックアップしてみました。

その本には、

●「脳圧亢進」は「寝起き型の頭痛」が特徴である

とされています。

また、

●「頭痛ーい!吐きそうだ―!!」と言っていた人が吐いたらケロッと朝食を食べだす…なんてのも危ない。

ともあります。

 

なんて言うと、みんな「そう言えば、朝から頭が痛かった!!!」

「起きたら気持ち悪かった(←晩酌が過ぎただけなんじゃぁ…)」

って不安になるでしょう。

 でも、本当の「寝起き型の頭痛」は「頭の痛み」に起こされるものを指すのだそうです。
 
つまり痛みのピークが「目覚めた時」となるのが特徴です。
 

よくある勘違いのパターンは、

目が覚めて、『あ~、首がガチガチだぁ。。頭が重い。。』から始まって、

歯磨きする頃に「締め付けられる様な痛み」や、その後に続く「ズキズキした痛み」が出る…

これは「筋緊張型頭痛」もしくはそこから続発する「血管性頭痛(偏頭痛)」です。

こうした経過をたどる場合は「脳圧亢進」による頭痛は考えないそうです。

つまり、「怖くない頭痛」ということになります。

 

「脳圧亢進」を伴う頭痛の場合は、

寝ているところを「痛み」で起こされるのだそうで、そんな場合は要注意!

この場合の頭痛は膨らんだ腫瘍が周囲の血管を引っ張ることで起こる「牽引型頭痛:けんいんがたずつう」です。

牽引型とはどんな痛みが出てくるのか?

私も脳腫瘍になったことがないので、確かな情報ではありませんが、二日酔いの時の頭痛を思い起こして下さい。

脳圧亢進とは真逆の理由ですが、あれも「牽引型」です。

う~ん、思い出すだけで頭が痛い。。

 

では「脳圧亢進による頭痛」が、なぜ「寝起き」に起こるのでしょうか? 

ここからは「私見半分」となりますが、

私たちのカラダは寝ているときには心臓も休んで緩やかに打つため、全体的に「むくみ(浮腫)」を起こします。

これを生理的浮腫と言います。

すでに脳腫瘍などで脳が膨れている場合は、就寝時のむくみ(生理的浮腫)のために

頭痛が起きるレベルにまで脳圧が上がり「グイッ!」と押しやられた血管が痛みを伝えてくる

という訳で「寝起き型」の頭痛が起こるのです。

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ちなみに脳味噌には痛みを感じるセンサーがありません。

なので、切っても刺しても痛くないそうです。

一方、脳味噌を取り巻く膜や血管には痛みのセンサーがあるので、

それらに刺激が加わって初めて「痛み」が生じるのです。

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こうした場合は、起きて心臓の働きがしっかりしてくれば「むくみ」が引いてきますので、

頭痛も治まってしまうことが考えられますね。

それから、吐くことでカラダから水分を排出してしまうことでも「むくみ」は軽減されるでしょう。

つまり、吐いて脳圧が下がり、ついで心臓が目覚めて生理的浮腫が解消されることで脳圧がさらに下がり

血管への刺激が減るので痛みが落ち着いてゆくということです。

なので、寝起きにヒ―ヒ―言ってたはずが

「吐いたら文字通りケロッとして朝食を食べ始める」

なんてことも起こるのでしょう。

 

『ご飯も食べれてるから、大丈夫かな。』

ではないのですね。

え?

読んだらもっと怖くなった?

 

いやいや、良く読んで。

そのDrは吐いたかどうか?ではなく、「寝起き型」かどうかがポイントだと言っているんです。

「寝起きに頭が痛かった」と聞いた場合は

「布団の中で痛かったか?痛みで目が覚めたのか?」

と確認するそうです。

「痛みで目が覚めた!」となったら「詳しく話を聞こう!」となるそうです。

 

ついでに「二日酔い」について。

真逆の理由というのはどういうことか?

アルコールは脱水を起こします。

分解にも水を使うようですが、呼気からも水蒸気と一緒に排泄するそうで、

カラダの水分はガンガン減って行くわけです。

すると脳みそは水気を失ってしぼみます。

MRIなんかでも分かるぐらいしぼむそうです。

すると、しぼんだ脳味噌を取り巻く血管が引き延ばされますね。

そう、牽引型の頭痛のでき上がりです。

頭を起こすと「ガンガン」痛むのは、しぼんだ脳味噌が頭の中でグラつくためなんだそうです。

 

だから呑んだ後には「水」がおいしいのでしょうね。

 

その本によれば、脳外科に訪れる頭痛の患者さんのほとんどは、命に別状のない「怖くない頭痛」なのだそうです。

ですが中には「脳腫瘍」や「脳内・クモ膜下出血(これは前触れなく痛みが襲う「突発ピーク型頭痛」を伴います)」

による頭痛が混ざり込んでいるので

こうした「怖い頭痛」はしっかりと選り分けることが重要だとあります。

確かに。

そのためには、何でもかんでもMRI検査!!!

ではないそうで、

しっかりと「危険な頭痛の鑑別ポイント」を抑えて患者さんの話を聞くことが何よりも大切だということです。

 

分野が違えども、私の仕事も同じです。

患者さんのお話もただ漠然と聞くのではなく、痛みと関連した情報をピックアップしてゆくんです。

そうでないと、ただ闇雲に話を聞くばかりで治療プランの土台となる情報が集まるまでに治療時間がなくなってしまいますので。

ン!?

話がそれてきたな(-_-;)

 

ま、とにかくですね、どの番組か分りませんが、TVをみて不安になってしまった患者さんの

不安を解消する手助けになればと、書きなぐってみました。

 

なにはともあれ不安は一番の毒です。

この情報が多くの頭痛患者さんの安心に繋がることを祈りまして、

結びとさせていただきます。

 

では。


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