今回の福祉生活病院常任委員会の県外調査のテーマは「隣接県の原発対応」。京都府庁から調査を開始しました。京都府民生活部防災・原子力安全課の木村兼喜参事から話をお聞きしました。以下は木村参事の話です。
京都府は法律的な隣接県で、鳥取県は違う。3.11の事故以来、防災計画ではEPZの拡大を検討してきたが、今年3月にUPZ(30キロ)に拡大した区域を対象とした。大飯発電の再稼働が問題であったが、同じ隣接県である滋賀県と共同歩調を取った。別の立場の県もあり、両県で4月17日に提言を発表。6月6日には再度提言を発表した。
7月13日には立ち入り検査権も使って大飯原発の安全性を現地で確認した。防災指針も出ていないこともあり、住民の不安がある。防災計画は30キロ圏内の住民をどう逃がすかを中心に検討している。福島原発事故級だと、高浜原発は5市2町の約13万人で舞鶴市は全域が入る。大飯原発は4市1町で約7万人(ただし京都市は山間部で住民ゼロ)を避難対象として考えている。この時、風向きが重要になってくる。兵庫県、もしかしたら、鳥取県にもお願いすることになってくるかもしれない。避難の中心は高速道路になりそうだ。規制は府警、ネクスコと相談することになってくるだろう。
説明を受けた後、質疑応答になりました。以下は質疑の一部です。
Q 風向きは偏西風。そうなると立地県なみの協定が欲しい。協定はどうなっているか。
A 京都府は法的な権限を持つ隣接県。昨年の9月に関電と交渉した結果、協定の締結をする方向になった。しかし、事前了解の部分で議論があり、そこの部分で進んでいない。急いでワンランク下のものを作ってもしかたないと思って、粘り強く交渉している。
Q 原子力関係の交付金は。
A 10キロ圏内の市町村を含む都道府県に降りてくる。額は約1億5000万円。
Q 協定の件だが、交渉の回数、レベルなどを教えて欲しい。
A 公開は9月20日の1回きり。週に1回は事務レベルでは会っていて、副社長と副知事、危機管理官レベルで会っている。
Q 府民のみなさんの意見は
A 立地県並を臨む声がメールや手紙では多い。立地県並を目指して頑張れというものが、ほとんどだ。
A 風は時期的なものがある。いつの季節ならこうという形で府民に示しているのか。
Q 高浜原発のスピーディーの様相を公表を出した。平均的な風向き、風速を基に予測したが、1月は琵琶湖西側、2月は京丹波市、兵庫県篠山市へと西へ広がり、季節ごとに違いが出た。
A 教育の部分は
Q 教育委員会が担当。先生に何回か研修会を開催した。
A 関西広域連合での取組はわかるが、電力はたくさんもらっている県としては言いにくい部分もある。打開策はないか。
Q 規制庁ができないといけない部分もある。福井が連携できるのは避難の部分。事務方は分かっているので、ここで連携をスタートしたい。
A 立ち入れ検査の法的位置づけは
Q 原子力災害特措法32条です
A 鳥取県の避難計画は公共交通機関、貸し切りバスを使うが、京都府県は自家用車がメイン。渋滞等の問題はないのか。
Q 旧来型の避難計画では自家用車は使わないようになっていた。しかし、現実問題として使わないことには避難できない。福島原発事故の事例を見ても、高速道路が生きていて、インターチェンジを押さえて、一方通行や緊急車両に限定などの指定をしたことが効を奏した。
A 関電との関係だが、事故時、情報はちゃんと来るのだろうか?
Q 国の専門官もいるので、情報はきちんと共有できる。命に関わる問題なので、遺漏はない。
最後に浜田委員長が8月4日から始まる国際まんが博覧会をPRして、京都府庁を後にしました。
次に訪れたのは滋賀県庁です。浜田委員長の挨拶の後、奥村隆明議会事務局次長が、滋賀県と滋賀県議会について概説。防災・危機管理局の田中弘明主席参事に、原発対応の現状について説明していただきました。以下は田中主席参事の説明の概略です。
滋賀県の北で接する福井県にはたくさんの原発があるが、問題になるのは高浜、大飯、美浜、敦賀の4つ。10キロ圏内には入ってないので、スピーディーの情報の提供はなかなかしてもらえない。しかし30キロ圏内となると県域が入るので、県として研究することを嘉田知事が指示した。地域防災計画の見直し計画委員会を立ち上げた。滋賀県琵琶湖環境科学研究センターに光化学スモッグの拡散予想システムがあったので、これを使って放射線部物質の拡散状況を予測することにして2月10日に提言書を提出した。
見直し計画は2カ年計画で進めることにした。2011年度の見直しの結果は、敦賀原発は県境から13キロしかないということを意識したものにになった。米国・スリーマイル島事故発生を想定して計画を作っていたが、福島第一原発事故の規模で見直した。滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの予想の結果、高島・長浜の両市の一部が100mSv以上、ほぼ全県が50mSv以上の放射性物質の拡散があるとがわかった。
原子力災害の特徴は、臭いも、色もないので、危険の度合いが何も分からない。そこで、リスクコミュニケーションをメインにおいた。連絡体制も、これまで関係市にだけ流れていた情報を県内全市町に流すことにした。モニタリングの体制を見直したほか、半減期が約30年と長いセシウムについては、長期避難が必要になってくる。
平成24年の見直しは、避難は単県では広域的相互応援体制を検討するほか、救助・救急、警備および交通対策、緊急被爆医療計画、琵琶湖への環境評価も考えることにしている。大飯再稼働に伴い、6月17日からオフサイトセンターに職員を派遣している。
以上のような説明を受けた後、質疑応答に移りました。
Q 大飯原発のオフサイトセンターの派遣職員は何人派遣し、情報収集の流れは
A 8時半から5時までは県職員が常駐しており、情報を送ってきている。それ以外の時間はFAXなどで事業者から県の方へ連絡が来る。夜間休日は携帯電話へ連絡がくる。
Q 関西広域連合の会議では、琵琶湖の汚染が問題だとなっている。琵琶湖の周辺府県の認識は同じか
A 京都府との連携とか、広域連合の中で認識されているのではないでしょうか。
Q 滋賀県さんはナーバスとか、神経質になっていると思っていたが……。失礼と思うが、危機感が薄いように感じた。どうですかな。
A ……。
Q 想定を福島第一原発にスピード感を持って変えたというのは、ええことですよ。避難計画はどの方向に逃げるという想定で計画を考えられていますか。
A 北から南に流れた場合に、滋賀県に影響が出る。その場合は南へ逃げることになる。
Q 重ねて聞きますが、琵琶湖で汚染されたら問題というのが関西広域連合の認識。そういう認識が薄いのではないか。
A ……。
Q 嘉田知事は「県内自治体や議会の意向を踏まえて、再稼働についてまとめて提言したい」と言っていたが……。
A 京都府と7つの提言を出させてもらった。これは「国民的理解のための提言」というもので、大飯原発の稼働については、透明性の確立、安全性の確立、緊急性の証明、対応の確立などを求めた。
Q 議会のどのように関与されたのか
A 意見書が出されている。提言は議会の委員会に説明している。
Q 関電との協定の締結作業の進行状況は
A 立地県並にやっているが、関電との溝は深い。市町と一緒に進めているが、立地県並という意向が強いので、事務局サイドで進めている。
Q 滋賀県が独自の方法でやられ、EPZを42キロに広げると報道があった。EPZは県知事の権限とされたが、鳥取県は簡単ではないと消極的。国はどうか。
A 地域防災計画は、これまで国と協議するものだったのが、国への報告でいいようになったので、県が決めれば地域防災計画は決まる。しかし、経済的な問題は国が決められることなので、今後どう対応されるかは分からない。
Q 5月23日に大飯原発について市町から意見を聞いているが……。
A 首長のイニシアティブによって左右される面が多い。南になっていくほど、住民や首長の意識に関わっている。
Q 滋賀県の法的な位置づけ
A 隣接県として位置づけられています。
Q 避難は単県で可能なのか
A 避難計画は、これから検討していくので、まだわからない。隣県との連携が必要になるかもしれない
Q 琵琶湖の汚染の質問が出ましたが、事故が発生して汚染された場合、水の除洗というのは可能なんですか。
Q 滋賀県で20カ所の取水口はある。ここでは放射性物質の除去は可能だ。
A 琵琶湖の自然環境は大切。しかも、水産資源への影響もある。放射性物質で琵琶湖が汚染されたときは、どうやって失われた環境を回復するのか。そうした知見はあるのか。A 半減期を考えるとセシウム対策になると思うが、どうなるのか分からないし、分からないという以上にそうした研究がない。今年度、予算を付けたので、これから研究していくことになる。