こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

佐藤優の『獄中記』を読んだ。

2007年07月29日 | 読書ノート
獄中記
佐藤 優
岩波書店

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 国策捜査への徹底した異議申立て。外交・インテリジェンスの世界のプロとしての国家への献身と忠誠。鈴木宗男に対する揺るぎない信頼。後輩への慈愛に満ちた助言。看守たちへの配慮と尊敬。

 佐藤の,筋を曲げない直向な生き様は,何よりも,真実が何処にあるのかを雄弁に物語っており,獄中記は,そのことを皮膚感覚で知ることのできる良書だ。同じ,獄中記といっても,自らの体験をベストセラーにしてしまった,ジェフリーアーチャーとは大きく性格を異にするが,ともに,自らの悲壮な体験を,活写する筆力に恵まれていたことは,共通項と言えよう。

 チェコ神学。ハバーマスの哲学。等等随所に難解な記述があらわれ,基礎知識のないものには,ややキツイ箇所もあるが,北方領土交渉の要諦も含め,外交,哲学のガイダンス本としても秀逸ではないだろうか。
 何よりも,鈴木=佐藤チームが,杉原千畝名誉を回復し,カウナスの通りの一つを”杉原通り”とした活躍に,大いに感銘を受けた。二人の偉業を讃えたい。日本人として誇らしいとも思った。

 佐藤の主張の真偽は,外交文書が公開される二十数年後に判明するとのことであるが,既に,真なることは証明されたも同然と思う。自分に正直に筋を曲げない生き方は,長い目で見たときには,決して損な生き方ではないことを,佐藤の著は教えてくれているように思える。

 さて,我々には,獄中の佐藤を支えたような友人を,果たして何人持っているだろうか。それは,我々自身の生き様にかかわることである。誰も支えてくれる人がいないような気がして心もとないのは私だけではあるまい。

 今からでも遅くない。自分にごまかしのない率直な生き方をしたいものである。

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