こんな本を読んでいる

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『パパは塾長さん』を読んでいる

2006年08月12日 | 読書ノート
パパは塾長さん―父と子の中学受験

河出書房新社

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 芥川賞作家の三田誠広さんによる,息子(次男)さんの中学受験体験記である。塾には通わず,三田さん自身が独学(?)・独力で息子の受験指導に当たったところにオリジナリティがある。

 日曜ごとのテスト以外は塾を利用せず,5年生の夏くらいから取り組んで御三家の一角といわれる駒場東邦に合格したのだから,運もさることながら,息子さんもお父さんにもその資質があったというべきなのだろう。

 とても,サラリーマンには真似はできないと思えるが,1枚5,000~6,000円程度の原稿を多いときで100枚片付ける作家稼業も楽でない。三田さんに息子さんが最後までついていったのも,やはり,三田さんの類稀な息子さんへの愛情の賜物ではないのだろうか。 

 「すっかり忘れていた地理や歴史を勉強しなおしたり,私自身小学校の時には習った憶えのない難しい算数の問題に取り組むことは,負担であったが,同時に喜びでもあった。受験者の「深く考える」能力を引き出すように工夫された巧みな設問に出会う度に,私は芸術作品に出会うような感動を覚えた。そのような問題を,息子と二人で考えているうちに,父と子の間に,深い絆が結ばれるようにも感じた。(P178~179)」

 運や資質もさることながら,親子の協働作業を通じた触れ合い・絆は美しい。志の高さ故に成功をもたらし満足感を得られたのだと思える。

 息子さんが第一志望を突破できなかったなら,多分,この本は世に出ることがなかったろう。パパが塾長を務め,ミゼラブルなスタートを克服した末の成功譚だから売れたわけで,失敗譚なら売れる筈がない。

 だから,失敗譚なら物書きとしては銭にならない仕事になるはずだが,仮に,成功譚にならなくても,三田さんは,次男との悪戦苦闘本を書いたに違いないと思った。親子の絆が深まるなら,中学受験も悪くない。音楽でもスポーツでも良い。親と子の絆が深まりさえすれば良い。

 その感動が得られるか否かは,ひとえに親の姿勢・子供への愛情の深さの度合いによるのだろう。


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