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新しい出会いをありがとう。

イタリアと日本の モノづくりの差

2006年03月16日 | 読書ノート

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 引き続き,森本卓郎『萌え経済学』を読んでいる。第3章「アートに萌える豊かな日本」では,感性を消費するイタリア経済の強みが紹介されている。

 古代遺産・観光資源で生き延びる国。シエスタの国。陽気ななまけもの。近代資本主義のキーワード゛である”勤勉”の対極に位置する国。これが私のイタリヤに対するイメージだ。イタリヤに対する私の評価は,あまり高いものとはいえない。

 ところが,「イタリア経済は1995年から2001年の6年間での平均で,年率2.0%という安定経済成長を実現している。また失業率は2桁で高いものの,雇用は年率1.3%で伸びている。空洞化はまったく進んでいないのだ。(同書P133~134)」だそうだ。失われた10年でさらに空洞化の進んだ,日本とはえらい違いである。

 しかも,「イタリア経済の原因は,市場原理を貫徹しているからでも,構造改革がすうんだからでもない。それどころか,イタリアは少子高齢化が進み,財政と年金収支が悪化し,贈収賄が横行し,首相がコロコロ変わるなど,我が国と環境条件は極めて似ているのだ。実際,政府債務残高の対GDP比率は,日本とイタリアはほぼ同じレベルにある。(同書P134)」

 そんなイタリアの強みは,高付加価値商品の生み出す力があること。製品に芸術性をもたせる力があることなのだ。「イタリア製品は,ファッションにしろ,家具にしろ,自動車にしろ,食品にしろ,ほぼすべての産業分野で製品に高い芸術性を付加している。だから,途上国製品との競合がなく,価格競争にまき込まれることがないのだ。(同書P136)」

 例えば,中国製の笛吹きケトルの相場が500円なのに対し,イタリアのアレッシィが販売する笛吹きケトルは,2万円を超える。アレッシィの方は,楽器職人がつくる,お湯が沸くと和音の鳴るケトルだからだ。(まあ,わしはケチじゃけえ,2万円もだしで和音の鳴るケトルを買わんけどね)

 そして,この高付加価値を生み出す源泉は,小規模の企業がアートを追求すること。プロダクトのリーダー「プロジェティスタ」に課されたミッションは「アメリカ経営学流の”リーダーシップ”ではなく,”アート”」であるというのだから驚きだ。実際,イタリアのモノ作りの本には「アート」だと,書かれているらしい。

 そのイタリアと日本のモノ作りの最大の差は,どこにあるか。それは,最終工程にある。「アパレルの最終製品を検査するとき,日本のメーカーは糸がほつれていないとか,まっすぐ縫えているかとか,縫い目の数が幾つあるとか,そうした検査を行う。いわば機能検査だ。ところが,イタリアの場合は,出来上がった製品を実際に試着して,着心地が良いとか,鏡に映った姿が姿が美しいとかという検査をする。消費者は,感性を買うのだから,検査方法としては,イタリアのほうがずっと正しい。(同書P142)」

「アートに関係ない肯定は徹底的に合理化あるいは海外に任せ,アートに関わる部分は頑固に国内での仕事を守っていく。その使い分けが,高い感性の商品をそれないrのコストで供給することに結びつき,結果的にイタリアの雇用が守られているのである。(同書P142)」

 この差や姿勢こと今の日本が学ぶべきことかもしれない。私の中にあったイタリアのイメージを少し補正しなければならなくなった。


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