こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

『算数脳』(小3までに育てたい算数脳)

2005年09月30日 | 読書ノート
小3までに育てたい算数脳

健康ジャーナル社

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 塾を経営する著者は,算数オリンピック解説委員でもある,「算数のカリスマ」なのだそうだ。この本では,「百ます計算」のブームの背景にある昨今の計算力偏重に警鐘を鳴らし,本当の学力とは,物事を俯瞰に見ることができる力,発見する力,とことん詰める力,理解する力,すなわち,「算数脳」を身につけることが必要だと主張する。その上で,この算数脳を身につけるには,空間的な理解を育みイメージ力を養成する,外遊びを中心にした体感にあり,だいたい,10歳頃までに算数脳は固まってしまうと,経験則(1000人以上を超える塾の生徒)に基づいて分析している。

 「算数脳」を形成する,見える力,詰める力,理解する力の典型として,麻布などの進学校への入試問題が並べられ,その解法のプロセスに気づく力があるかないかを問い,外遊び体感がすべてと結語した上で,
子どもを伸ばす親・潰す親のタイプをわけた解説と親たちのNGワード・NG行動を実例でしまし,さらに,子どもを伸ばす生活術,力の伸びる遊び術を具体的に示している。
 アマゾンで検索すると,読後感を寄せたほとんどの人は,教育熱心は親御さん(女性)で,著者を礼賛,内容にも心酔,NGワード・NG行動に共感・反省のオンパレードだった。

 この本にでてくる,著者が算数脳を形成する,見える力,詰める力,理解する力の典型とされる問題の数々,正直なところ私にはほとんど解けなかった。私立文系で数学はなげていたしお受験に備え勉強した経験はないので当たり前なのかもしれないけれど・・・。
 それでもって算数脳の養成は外遊びにある10歳までで能力は固まるとされると,劣等感もあり,それは論理の飛躍だと批判したい気持が湧いてきた。教育熱心なお母さんたちの手放しの礼賛も気になった。

 むしろ,問題の解説を読んで感じたのは,解法のパターン,着眼点のくせのようなものがあって,その力を養成するには,積み木だとか,パズルだとかを通じて,パターン・着眼点の種類を豊富にもってそれらを組み合せる訓練をすれば,自ずと身につくのではないかと思った。本当に必要なのは,この本にある入試問題と力の伸びる遊び術(アルゴやパズル)との間にあるパターン認識と解法の連結方法とその鍛錬法なのではないだろうか。その意味では,数学を暗記と割切る和田秀樹の主張の方が現実的であるように思った。

 問題が解けなかったので,どうやら私には算数脳はないらしいが,日々の仕事の処理で特段困ったことは無い。仕事のスキル(人間関係論も含め)は,歳を経るごとに発達していると感じてもいる。10歳までで能力が規定されるかのような,人間の能力の,制限的・限定論には与したくない。どうせなら,70歳でも伸びる算数脳みたいなのを書いてもらいたいとひねくれてしまった。


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