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『なぜフィンランドの子どもたちは「学力」が高いか』を読んでいる

2006年01月31日 | 読書ノート
なぜフィンランドの子どもたちは「学力」が高いか

国土社

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 OECDによる「生徒の学習到達度調査」(PISA)。2003年に実施された第2回目の調査で,調査項目4分野のすべてで世界第一位グループとなったフィンランド。日本の国土と同じ面積に,わずか,500万人と兵庫県程度の人口しかいない北欧の国フィンランド。そんな小国がいかにしてこのような偉業をなし終えたのか。その成功の一端が示されているのがこの小著である。

 その強さの秘訣は3つ。質と平等の統一的追求,読書文化,教師の質の高さの3つである。

 第1は,「質と平等の統一的追及」

 「フィンランドの「学力世界一」の優秀性は(さらに)次の3点に代表される。第一は「学力水準(平均点)の高さである。」第二は,「学力格差」の少なさである。フィンランドは,PISA2000の「読解リテラシー」において「学力水準」が一位であっただけでなく「学力格差」が少ない点においても世界一であった。PISA2003の「数学リテラシー」でも同様であり,「学力格差」は41か国中アイルランドに次いで宰相であった。フィンランドは,生徒間の「学力格差」が少ないだけでなく,学校間格差も地域間の格差も少ないという特徴を示している。(P35)」 「フィンランドの調査結果は,教育における「質」と「平等」は対立するものではなく,むしろ相互に補完しあうことを実証することになった。(P36)」

 第2は「読書文化」 

 「家庭における学習時間は,日本よりも短く世界で最低レベルである。しかし読書への感心と読書量は世界一である。PISA調査において,読書を趣味とする生徒の割合は世界で最も多く,女子生徒の64%が「読書を趣味」と答えていた。大人の読書習慣も世界でトップレベルである。(P37~38)
 もちろん,テレビ番組の多くは字幕スーパーによる外国語放送となっているように,リテラシーにおける外国語の能力の優秀さも見逃せない。

 第3に「教師の質の高さ」

 「フィンランドにおいては教師は最も魅力的な職業と看做される。大学の教育学部大学院の倍率は10倍以上であり,もっとも優秀な学生が教職についている。しかも,フィンランドの教師教育は,9つの国立大学で行われ,幼児教育は学部レベルだが,初等教育と中等教育は最短で5年間を要する大学院レベルであり,教師は全て修士号取得者である。フランスやドイツを弾め教師教育を大学院相当のレベルで行っている国は多いが,全ての教師を大学院で養成し修士号取得を要請している国は,ヨーロッパの中でもフィンランドだけである。(P39)」

 高校生を対象とした「なりたい職業」(2004年)でも,医者(10%)を大きく引き離し,堂々の1位(26%)である。心理学者(18%),芸術家・音楽家(18%),建築家(15%)が高いのもこの国のもう一つの特徴かもしれない。 

「余裕のある人がほこりを持って税金を払うようにならないとだめなんです。格差のない社会が目指されるべきですね。」「フィンランドのヘルシンキ大学の院生でしたか,リナックスという基本ソフトを開発して無料でネット上でダウンロードできるようにしましたね。自分の知的財産を独占して金儲けをしようとしないのは,無償で教育を受けてきたからこそ,それを社会に還元しよう,共有しようとするんですね。アメリカのマイクロソフトと全く対照的です。」 ホリエモンに代表される新・資本主義の負の部分,影の部分を補正・改善するヒントがフィンランドモデルにはつまっている。

  「地域間格差と学校間格差の少ないフィンランドの教育は,国家教育委員会土地法教育委員界との連係プレイの所産であること。また,フィンランドでは1992年以降,教育行政の地方分権化を進めてきたが,国家の責任を曖昧にしてきたわけではなく,地方分権化が徹底された今日でも公教育の3分の2は国家が負担していること。(P42)」を知っておく必要がある。
 また,「フィンランドの教育の優秀性が,1992年以降の未曾有の経済不況の克服の過程で達成された(P42)」ことに注目する必要がある。「ソビエトの崩壊とベルリンの壁の崩壊によって深刻な経済的ダメージを受けたフィンランドは失業率20%という深刻な状況を迎えていた。この深刻な事態において,フィンランド政府が推進した改革は,国家公務員の増加による失業者の救済であり,知識社会の到来を見通した教育改革の推進であった。経済的な国家危機において公務員を増やし,教育に多大な投資をおこなっったのである。その結果,10年後の2002年には,PISAにおいて世界一の学力を達成したけでなく,経済の競争力においても世界一の地位を獲得している。この社会哲学と政策からも学ぶべき点は多い。(P43)」


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2 コメント

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へぇ~ (ニシゴン)
2006-01-31 12:27:14
全く日本と逆ですねぇ。

目先のことだけ考えて、将来のことは何も考えてないような気がします。

本は読まない(読めない?)ニシゴンですが、せめてtoru_moonのブログを見て勉強させてもらってます。
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うむむ (あたまでっかち)
2006-01-31 23:32:07
若かりしころ,絶対なりたくない(というか向いていない)職業は「教師」だと思ってました。



フィンランドは外交でも周辺の大国相手に独自路線を歩み,実績も残してますね。ここも日本と大違い。



わしもフィンランドに生まれてたら,違う人生だったかな?
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